SS パパとママ
「おはよう!明日菜!」
玄関のウシガエルから、性懲りも無くおはようと言ってるパパの声がする。
すぐに、
「おはよう、春馬くん」
ママがあわせて、すごくうれしそうな声がする。私たちには、ふだん耳にしない少し甘えたトーンの声だ。
テレビや映画やネットのママもしないから、パパにだけするママの顔。
パパとママの親友の真央おばさんは、
ー明日菜かわいい!ってよく冷やかしでるけど、娘の私からみても、パパといるママは可愛いと思うし、きれいだし、
なにより、
ー毎回、あきれてる。
「元気そうだね?春馬くん」
少しあきれた声は、優しい。ママは私たちにとっては、少しこわい。
真央おばさんは、パパがああだから、明日菜が怖くなるしかないんだ。
って言う。真央おばさんところも、真央おばさんの方が厳しいらしい。
うちのおじいちゃんおばあちゃんも、おばあちゃんの方が…。
ー?
ママのおじいちゃんおばあちゃんも、パパのおじいちゃん、おばあちゃんも、そんなにおばあちゃんはと怖くない。
パパはママのおじいちゃんがちょっと苦手みたいだけど、ママはパパのおばあちゃんと仲がいい。
南九州の片田舎には、ママのお姉ちゃんとパパのお兄ちゃんがいて、私たちには従姉妹がいる。
パパはそっちにもデレデレだ。というか、パパは基本的にー。
「まっくろだね?春馬くん。たくさん、あそんでる?」
「うん。遊んでるな、確かに」
パパが弾んだ声でこたえてる。
「実の娘たちほったらかしで、なにしてんだか」
「だいじょうぶだよ?真央おばさん。パパいない方が静かだから」
妹が答えてる。ウシガエルのパパがショックをうけてる。
だけど、テレビをみてる妹はソファでクッションを抱えて不満そうだ。
きっと一緒に遊びたくなったのかなあ?
「そんなこというと、パパ帰るぞ?」
「ふつうは、そこで帰んないぞ?だよ?パパ」
「そんなこと言っても、飛行機予約したしなあ?」
「「「ーえっ⁈」」」
私たち村上家の声がそろうなか、
「会議キャンセルしたらだめだよ?飛行機代も会社が払うんだから、キャンセル代」
「だよなあ。けど、俺だって本社だけ寄る気ないぞ?さすがに福岡よるぞ?」
「何日滞在だっけ?」
「10日くらいかなあ?うち3日は東京だ」
「イケメン先輩もいくよ?」
「柴原来ないのか?」
「私は今回はオンラインかな。福岡で待ってるよ?」
私たちがおどろいてるのに構わずふたりの会話がすすんでく。
「…春馬くんも、真央もマイペースすぎるよ」
ママがようやく口を挟んでた。
「春馬くん、日本に帰国するの?」
「報告と資金集めだな。イケメン先輩のプロジェクトとかもみたいし?なにより、俺だって、ウシガエルより明日菜や娘たちにあいたいし?」
「いつの飛行機?」
「あっ、明日」
「えっ?」
「やばっ!荷物まだだ。わるい、明日菜またな?」
「えっ?ちょっ?春馬くん⁈」
いきなりウシガエルが沈黙する。ママがため息をついた。
真央おばさんが笑う。
「まるで遠恋中の村上だね?」
「いまも遠恋だけどね?」
って、ママが苦笑いして、
「パパ帰ってくるって!いっぱい遊んであげてね!」
背後から妹を抱きしめてた。