3日目 真央 朝
ー眠れなかった。
これは、もうわかってたけど、
ー自己嫌悪。
べつに、赤木の言葉がこたえないわけじゃない。私が赤木を利用したのは、わかってる。
ー誰かを好きになる気持ちがわからない。だから、試したい。
誰かを好きになってみてみたい。恋をしりたい。そう、
ーただの好奇心だった。
赤木は村上のお兄さんとは、違うタイプで、人気あるし、赤木自身がコミュ力が高いから、私でも話しやすかった。
同じバスケ部だから、まだ小学校を卒業したての新入生から知ってる。
いまは身長とかは伸びたし、声も変わったと思う。赤木の視線や表情の変化には、気づいてた。
ーおまえも、最低な元カノだからな?
って赤木は言った。
ーおまえ、も。
ーも。
に、苦い気持ちがひろがる。
あの行為は、私も赤木もハジメテだったけど、それでも赤木は優しかったと思うし、行為に夢中で、終わって、なんか疲れて、グッタリしたあと、しあわせそうに笑ったのを覚えてる。
だけど、私は違ってた。
あの行為になんの意味も感じなかった。幸せそうな赤木をみても、なんにも思わなかった。
ー好きの温度差を感じた。だけど、続けたら、好きは同じになるんだろうか?
って、思った。漫画や小説だと、好きな相手に尽くしたら、同じ気持ちになってくれるのかと、尽くす場合があるみたいだけど、私は逆にみてたのかもしれない。
まわりをみてると、みんな村上先輩や、明日菜に憧れてる。
だけど、ほんとうに、村上先輩や明日菜とつきあいたいって思ってるのかなあ。
ーブランド品?
って、思う時もあるんだ。明日菜や竜生先輩とつきあう事が、自慢になるってのは、なんとなくわかる。
私も赤木が人気ある子ってのも、つきあってみる基準にしたのは、たしかだ。
だけど、私なんかとは違うから、竜生先輩や明日菜は、どんな相手でも告白を断っていくんだろうけど。
明日菜はまあ、女子側だからなんとなくわかるけど、村上先輩は、
ーその気になったら、遊び放題じゃないの?
私を大切にしたいって言ってた赤木も、誘ったら、わりと、あっけなくのってきたし。そのあと、誘ってくるのはいつも赤木だし。
ー村上竜生先輩や明日菜は、理想が高くて、潔癖なのかなあ?
まあ、村上もそうっぽいから、育ち方なのかなあ。眠ってる明日菜をなんとなくみる。
ー私みたいに誘うなら、明日菜から?
村上から、明日菜に対して、リアクションは、なんとなく想像つかない。赤木ですら、私からだし。
女の子の方が好奇心は強いのかなあ?って思う。欲望と好奇心は、また違うのかな?
ー最低な元カレ。
ー最低な元カノ。
だけど、私たちの間でいわゆる浮気はなかった。赤木の場合、明日菜に目はいってたけど、明日菜は、もう相手が明日菜だし?
村上が明日菜を見つめてるのとは、違うし?
明日菜をいじめてる先輩たちが、村上竜生先輩をみてる気持ちも、たぶん、村上とは違う。
赤木はわからないけど、私は、たんにめんどくさいって思った。
ー誰かを好きになる気持ちが、私にはやっぱりわからない。
赤木と同じくらいの気持ちは、むりだった。明日菜と村上みたいに、私はなれない。
ーお嬢、世界はひろいんだ!俺たちが認める男をいつかつれてこい!
って、職人さんたちは言うけど、
ーパパより大変な関門ね?真央?
ってママが苦笑してたけど、パパは、私に興味ないよね?
パパがママに対してひどかったかは、わからない。ママが怒られてた原因は私だから。
お姉ちゃんたちには、パパらしい。
いつか、父の日、母の日、がなくなってくのかな?和菓子にバレンタインがあるし?
あのイベントは、職人さんたちがわりと張り切ってる。
ーおもしろい!西洋に勝ってやる!
ー職人長、上映会場が違います。
ー上映くらいさせてやれよ?
ーなんじゃ!くらい、とは⁈
ーだって、なんかバレンタインって、若者イメージありません?
ーそんなことは、ない、もうあった世代が多いイベントだ!
ー職人長、子供の頃あったんですか?
ーきくなよ?バカ。もらったかどうかって話になるだろ?
ーバカにするな?義理くらいある!
ー義理っすね。
ー義理っすか。
ーええい!黙って待ってろ!
って職人長は、休みの翌日に、
ーほら、お嬢、どうだ?
って、福岡で美味しいチョコレートを、買ってきて、くれた。
市場リサーチにいって、バレンタインコーナーをのぞくために、孫に買うふりをしたらしい。
おかげで私は滅多に食べれないチョコレートを食べたけど。その年、職人さんたちは、バレンタインに和菓子作らなかったけど。
ーいつかお嬢もあの中にいるのか?
複雑な顔で職人長が私をみてた。発言が変わってた。それくらい、
ー特製コーナーの熱気がすごかった。
らしい。
苦い気持ちがあの行為のを思い出して、私はクスッと笑ってしまった。
私の苦い気持ちは少しおさまって、
ーどうせ眠れないし。
私は布団から抜け出し、あまり考えずに読めるやさしい本を窓辺の椅子に腰掛けて、読むことにした。