3日目 朝 明日菜 ②
真央と話して、笑ってたら、私のスマホがふるえる。
ーこんな時間に?誰だろ?
真央がニヤッと笑う。
「彼氏かもだよ?」
ーついドキッとしたけど、
「…連絡先まだ知らないから」
他の子にきこえない小さな声で私は真央に、半分くらい八つ当たり気味に文句を言ってた。
真央が肩をすくめてみせる。
「明日菜って、ほんとうに短気だね?」
「だから、それを言うのは、真央と村上くんだけだよ?」
そりゃあ、穏やかで冷静な方か?ってきかれたら、違うけど。
真央より、彼より、ずーっと、表情にでちゃうけど。私の考えたことがわかったんだろうな?真央がニヤニヤ笑う。
なぜか真央は、ニヤッって笑い方をする。
「はやく確認しなよ?あのスカウトさん、仕事がはやそうだよ?」
「ーあっ、そっか」
急いでスマホを確認したら、南九州の片田舎にいるお母さんからだ。
「なんて?」
「うん、自宅に変なスカウトマンから電話が来たけど、大丈夫か?だって」
私には迫力があったあのスカウトの女性も、おなじ大人のお母さんにとっては、
ー変なスカウト話。
らしい。とりあず、大丈夫だよ?とだけ送っておく。ほんとうに、緊急で連絡とりたいって思うほど、不安になったわけじゃなさそうだし?
また、スマホが振動する。
「こんどは、なんて?」
真央が首を傾げる。私はスマホの画面をみせた。
「ー帰ってきたら話がある、かあ。明日菜は大丈夫って、返事したのにね?やっぱり、やり手なのかな?あのスカウトの人」
いまのやりとりで、お母さんは何がわかったのかな?私は安心させたくて、大丈夫、って送ったんだけど。
「お姉ちゃんがなにか言ったのかも」
可能性があるなら、演劇部に強引に誘ってきた友人をもつお姉ちゃんかも?
私の説明に真央が納得した顔になる。
「明日菜のお姉ちゃん、勘が良さそうだし、妹思いだもんね?うちのお姉ちゃんたちも優しいけど」
「真央も末っ子だよね?」
「うん、お姉ちゃんがふたりいるよ?」
「私はお兄ちゃんとお姉ちゃんがいて、どっちも優しいかなあ」
「明日菜のお姉ちゃんも、不思議な人だよね?」
「そう?」
「うん。さすが明日菜のお姉ちゃん、って感じかなあ?明日菜はいいお姉ちゃんもったね?」
「真央もでしょ?」
「うん、お姉ちゃんたちは、しっかりしてるよ?」
真央は笑う。
「というか、うちは年齢が少し離れてるから、あまり?上ふたりはよく会話してるけど、置いてけぼりになるかなあ?」
「あっ、私も、お姉ちゃんとお兄ちゃんの会話で少し感じるよ?」
「末っ子あるあるだよねー」
優しいのは確かだけど、なんかいつまでも子供扱いは、あるかも?
お兄ちゃんは、よく、
ー明日菜だけは、天使でいてくれ!
って、冗談なのか、真面目なのかわからないテンションで言ってきて、
ーだまれ、シスコン!
ってお姉ちゃんが毎回クッション投げてる。それでもお兄ちゃんは怒らないけど。
お兄ちゃんとお姉ちゃんは仲がいい。私とお姉ちゃんも仲はいいけど、お兄ちゃんとお姉ちゃんは、よく連絡してるけど、私からお兄ちゃんはあまりない。
年が離れてるせいかなあ。そういえば、噂の先輩は、1学年上だよね?
村上くんより、ひとつ違いだ。
ー見たことあるのかなあ?
村上くん以外の男の子を知らないし、村上くん自体をみたのも昨日がはじめてだけど。
ーはじめての彼氏だけど。
「ー彼女って、どうするんだろ?」
つい口にしていた。
「とりあえず、今日、一緒に帰ったら?家の近くまで村上にボディーガードしてもらいなよ?」
「ボディーガードって…」
「村上が明日菜の彼氏だって、まわりに教える必要があるよ?村上より上だって.思っちゃうのは赤木だけじゃないはずだし?」
「どんな人より、村上くんが上だよ?」
そもそも上も下もないと思うけど?
「さすが、バカップルだね?」
真央がまたニヤニヤして、バカップルってなに?私が東京に行くまでの仮彼なのに。
って、思ったけど、
「やーん。ほんとうに、明日菜、村上にぞっこんなんだね?」
「疑ってごめん!」
「私も寝たふりして、聞き耳立てちゃった」
同じ部屋の子たちが口々に行って、布団から起きてきた。
「だろうと思った。まだ村上と明日菜を疑ってるの?」
真央があきれてる。そっか、真央は気づいていたのかあ。まんまと誘導にまたひっかかったらしい。
「だって、やっぱり、なんか村上と明日菜って、びんとこないし?」
「竜生先輩なら、わかるけど」
ねー?って数人が口を揃えるから、ムッとする。
「私の彼氏は、村上春馬くん、だよ?」
「はいはい。明日菜の初恋だよね?」
真央がまたニヤニヤする。
ー初恋?
「恋なんて…」
してない、ってあやうく、言いそうになって、慌てて口をとじる。
「真央の意地悪」
すねたら、
「明日菜、かわいい!」
抱きしめられて、
「ーボロ出さないようにね?」
って耳打ちされた。どこまでも、真央はマイペースらしい。
私は苦笑して、
ー村上くんと帰るの?
そう考えて、少しだけドキドキしていたんだ。