赤木
真央とは、同じバスケ部で、
ーひとめぼれに近かった。
頭がよくて、明るくて、しっかりしてて、人当たりもいいくせに、
ーたまに、ものすごく冷めた目をして、みんなをみてた。
俺は単純で馬鹿だから、そんな真央が異質で惹かれて、目で追ってた。クラスメイトや先輩たちは、同じ学年の神城明日菜の名前を口にしてたけど、
ー演劇部だから、俺も神城を目にしたけど。
俺は自他共にみとめる軽いお調子者だら、まわりにあわせて、騒いでたけど、俺の世界には、
ー柴原真央がいた。
俺は積極的に真央に話しかけた。俺のキャラクター的に、女子にも馴染んでた。バスケ部の先輩たちにもそれで通った。
俺はクラスでも、目立つタイプだ。
一個上にやたらモテる先輩がいたけど、あんなふうには、なれないけど、それでも俺には、モテる要素は、たくさんあった。
ただ、相手は俺みたいなタイプか、真逆のタイプか。
真央はどっちでもないから、俺なりに外堀をうめていった。
けど、外堀を埋められたのは、俺だ。
真央がおれを見てないって、気づいたのは、付き合ってすぐ、遊びに来た麻央が、俺に彼女ができたって知った従兄弟が悪ふざけと、なかば真面目にくれた避妊用品を見つけたからだ。
悪ふざけとノリとヤバいもの見つかった焦りを、ごまかすために、なかばヤケクソで誘ったら、あっさり真央はOKして、俺がびびってた。
だけど、真央を見て、従兄弟からの避妊の大切さをきいてたし、だから、思った。
ーどうせ、体験するなら、真央がいい。避妊して、もしも、なら。
体裁は悪いけど、俺の親父も若い。昔は悪だって公言してるタイプで、この南九州の片田舎で、建築系の自営業してる。
独立して生計をたててるから、俺も親父を手伝って、手に職つけて働いて、そうすれば、まだ、なんとか?
ーうちの親父は大学行け、だけど、親父は高校退学なり、働いて、生計立ててる。
いまだって、高校があわなくて、辞めてる率はそこそこあるだろし?
ーなにより、俺は、真央が好きだった。
とにかく真央を自分に縛りつけたかった。真央が俺を必要としてくれるなら、よかって、初体験は、むなしかった。
ー真央は俺じゃなくてもいいんだ。
時々、みせる冷めた目に惹かれたけど、むなしかった。
みんなが神城ってあまりに騒ぐから、俺も神城をみてたら、真央は嫉妬するのか?ってみてるうちに、真央も神城を見てることに気づいた。
ー神城のなにが、そんなに真央を、惹きつけるんだ?どうして神城は、真央の視界に入れたんだ?
たしかに神城は、目をひくけど、俺には、真央の方が美少女にみえる。
けど、神城をみんなが騒ぐ理由もわかるし、俺もいつのまにか神城を視線で追うようになったけど、真央に対する気持ちとは違った。
芸能人に対するファン心理に近い。
みんな神城に告っては、玉砕していた。それくらいのアイドル化してた。
まあ、神城との接点ないしなあ?が、一転したのは、修学旅行だ。
違うクラスの真央が、俺たちの班を誘ってきた。ふつうなら、ありえない提案を、真央は教師たちを言いくるめて、OKさせた。
ー俺と自由行動を過ごしたいから。
有頂天になったって仕方ないだろ?
だから、その分、村上と真央をみて、焦りが出たんだ。
村上は真央の視界に入った。
ーなんで、俺じゃないんだよ⁈
悔しくて仕方なかった。俺も村上を視線にやることが増えたけど、さっぱりわからない。
ー兄貴の方なら負けるけど。
真央は自由行動でも、村上に構ってた。そして神城も様子が変で、もっと変なのは、
ー村上春馬。
あいつのせいだ、つい、村上を選んだ神城に怒りをぶつけてた。
ーなんでだよ!村上より、俺の方がいいだろ⁈
かっとなった。頭に血が昇ってた。
真央から殴られて頬がきりきり痛む。
ー俺にはむりだ。
神城を背中にかばった村上と、叩かれた痛みと、怯えた神城の瞳。自分でも制御でなきない完全にキレた思考にぞっとした。
ー俺、何をしようとした?最低だ。
逃げるよに先に集合場所にむかった。集合場所では、もう流れた噂で持ちきりだった。
ついキャラ的に、あわせていたら、中庭前に真央と黄原がいた。
…すべて、真央がしくんだってわかるけど、ただやっぱり真央には、幸せになってほしい。
俺をみる一見、無表情な瞳がわずかに揺らいでる。
ー村上は、地獄に堕ちろよ?
真央と黄原に。背をむけてあるきだしながら、俺は思ってた。
一生、どうやっても、アイツだけは嫌いだ。
村上春馬。
そして、なによりも、あんな感情が自分にあったなんて、ぞっとした。
村上が止めてくれてよかった。
自分にあんな部分があるんだって、はじめてしり、ゾッとした。
神城は、なにも悪くない。
けど、
やっぱり、村上は大嫌いだ。