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明日菜


集合場所に行くと、もうバスがきていた。クラス単位だから、村上くんと黄原くんバスになる。


ずーっと村上くんは、後ろからついてくるだけだった。あまりに、棒読みすぎて、


「はいはい、あんたが彼氏だよ?」


真央が最終的にとめて、その頃には、班の子達も村上くんにあきれていた。


ー転校するまでの男避けには、ちょうどいいかもね?


って、納得されてる。


「彼氏だよ?」


とは、言ってるけど、具体的に彼氏となにをするかもわかってない。


そりゃあ、もう私も中学2年生だから、わかってはいるけど、それが自分ってなるとピンとこない。


ーでも、きちんと話さないとダメだよね?いままでの御礼を言って、そのあとは?


もうこれっきり?


目立っちゃったから、ストーカーに気づいたから、村上くんはストーカーをやめちゃう?


もう!村上くんがあまりに、棒読みだからだよ?私が彼女だよ?


真央が村上くんに走りよって、なにか話してる。


「真央の方が彼女にみえるよね?」


「なんで仲良いんだろ?村上も真央なら話してるし」


班の子たちが首を傾げてる。私も同感だ。


ー村上くんの彼女は、私だよ?


って、言えないけど。いまは、私の彼氏が村上くん、としか村上くんもまわりも、思ってないから。


怒りの感情のまま、口から声が、言葉がでて、それは、


ー彼氏。


村上くんの意思はない。私の優しいストーカーは、あの少し不思議な犬みたいに、


ーなにを考えてるか、わからない。


お姉ちゃんやお兄ちゃんは、明日菜はわかりやすい、って言うけど、お姉ちゃんなら村上くんや真央が考えてること、わかるのかなあ。


ーどうして真央は村上と話せるんだろ?どうやったら、私も素直に村上くんと話せるのかな?


話したいな。私も。


って思うけど、今日、一日中、村上くんをみて思うんだ。


ーまともに会話になるのかな?


少し茶色がかった瞳は、私をキョトンとみてる。不思議なものを見る目だよね?


見た目とかじゃなく、私自身を村上くんが不思議がってるは、わかるけど。


視界に会話を交わす真央と村上くんが入ると、なんだかイラッとしてしまう。


ー男避け。


でも、いいんだよね?


謝りたくない気もするんだ。このいらだちの原因は、いまはわからない。だって私はあまり苛立たない。


こんな感情がよくわからない。けど、

 

ー面白くない。


つい口を開いてた。


「真央?バスに乗ろうよ?」


村上くんは、私の彼氏だよ?って言葉は飲み込んだけど。真央が笑う。


「ヤキモチ?明日菜?かわいいね?あっ、村上、焼いたらダメだよ?熱いし火傷するから。ついでに茹でないように」


ー?


よくわからない言葉を残して、真央が私たちのバスに戻ってきた。それを目でおってた村上くんと、私の目があう。


村上くんはペコリと頭を下げてきた。私はちょっとだけ、迷って手を小さくふるけど、


ーなにコレ?


って思う。彼氏、彼女ってこんなに距離あるのかなあ?おばちゃん世代のお見合いみたい?


親が決めて、公民館の結婚式が初顔合わせ。そう昔の話じゃないんだよね。


それくらいには、社会が狭かったのかなあ?お母さんたちより少し上世代で、流行ってたらしい。


ーさんこう。


けど、田舎じゃあまり関係なかったって、お母さんは言ってたなあ。


なんだっけ?


ー高学歴。


ー高収入。


ー高身長。


たぶん、昔からあったけど、限られた人には、限られた相手だったから、付け足されたのは、


ー身長?


ってお兄ちゃんとお姉ちゃんが、めずらしく同意してたなあ。


バブル期のサラリーマンはめちゃくちゃ残業してたら、都会じゃ高卒でも年収1000万くらいは、いっていて、公務員は安かった。


そういう時代もあったらしい。競争して、出世して、けど学歴はあるから、役職には限界があって、悔しくて、だから、子供には味わせたくない。


ーし、自身をやっぱり子供に重ねるのかなあ?


お母さんはあきれた顔で、お兄ちゃんとお姉ちゃんに言ってた。


いまも、どの世代の親も本音だったりするけど。


ーとにかく働いて自立だけしなさい。人様に迷惑かけず、働いて自立さえしてくれたら、なにも言わないから。


とだけ言ってたけど。田舎から大学にやるは大変だから、本音は高校で働いてくれ?


大学がそれぞれの地域に間に合う数あったらいいけど。


大都会の方が給料は、たしかにいいんだ。出費もあるけど。物価はかなり違うし。


お父さんが東京に出張に行く時、お母さんは多めにお金を用意する。田舎の金額とは違うから、らしい。


ー明日菜、修学旅行のお小遣い、念のために少し多めにいる?


規定はあるけどお母さんの時代から、もうそういう方面は、緩かったらしい。


ーいらない。


私は首をふった。


ー福岡、美味しいものがたくさんあるぞ?


ー楽しいよ?


ってお兄ちゃんもお姉ちゃんも言ってくれたけど、自由行動で柴原さんが作ったリストは余裕あるし、みていて美味しそうとは、思うかもしれないけど、


ー食べたい、ってはならないかなあ?


わりとみんなが美味しそうなら、美味しいのかな?でお腹いっぱいになる。


なんとなく見てるだけで、お腹いっぱいになる。


ー村上くん、ハンバーガー美味しそうに食べてたなあ。


ただ聴こえてきた黄原くんとの会話が、


「さっき赤木たちが食ったラーメン屋で、麺の茹で方に生ってあるんだと」


「えっ?生で食えるのか?腹下さないのか?」


「湯通しくらいには茹でるらしい」


「美味いのか?それ」


「替え玉してたらしいから、美味いんじゃないか?」


粉落としとも言うらしいって、真央が補足してたなあ。


味覚の違いなのか、食感の違いなのかなあ。博多ラーメンはにおいが独自だから、食べたいと私は思わなかったけど。


規定のお小遣いで、私はまにあいそうだ。


ーどうして朝陽とこんなに違うのかしら?


ーお母さん!それは、私が明日菜のお姉ちゃんだから!だよ?すごくない?


ーいや、それなら、お前の兄ちゃんすごくないか?朝陽。


ー黙れ、シスコン。


ー妹が冷たい。


ー息子と娘がわからない。


って、にぎやかな我が家だ。出張から帰ってくるお父さんがいつも持って帰ってきてくれるお土産も楽しみで、真っ先にお土産ねだるのは、


ー朝陽!お前は土産だけか?お父さんお帰りは?


ーお土産、ありがとう!お父さん。


ー娘の未来が心配だ。


ー俺は朝陽が結婚できるか、心配だ。


ーそこは陽太、考えなくていい。朝陽も明日菜も嫁にはださん。


ーほんとうに結婚しないなら、しないで心配なるわよ?親は身勝手だから。


ーうっ。


ー大丈夫だよ?よく言うじゃない?娘は父親とにた人間を選ぶって!お父さんが結婚できたんだから、大丈夫!


ー朝陽、嬉しいが、なんか違う。明日菜、お前は俺なんかより、ずっと上のできた相手を連れてこい?そうしたら、納得してやる。


ってよくわからない頼みをきいたけど。


ー村上くんを連れて行ったらお父さんは、どんな反応するんだろ?


って私はにぎやかな我が家と村上くんに、少し笑ってた。


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