スカウト 加納千夏 ①
私は目の前の子供たちを、ただ、黙って観察した。2人とも顔立ちは悪くない。
女の子については、私のいるプロダクションの研修生たちにも負けなてない。
男の子についても、顔立ち自体は、整っている。髪をいまふうにアレンジしたら、やっぱり、プロダクションにいても、おかしくない。
ーけど。
不思議な雰囲気をまとう子たちに、生気は感じられない。この年代ならではの、不安定さや、生命力にみちた、
ー喜怒哀楽、が感じられない。
なにかが欠落してるように私にはみえた。私がスカウトした子は、いまさっき、この男の子を彼氏と宣言したけど、そんなふうにみえない。
現に、
「明日菜、いつから,村上とつきあってたの?」
「竜生先輩じゃなく、村上の方だったんだね?」
って、背後からきこえてくる。そして、問いかけたとき、
「ー神城が言うなら?」
この村上くん?は、彼氏だとは言わなかった。じゃあ、友達以上、恋人未満?
ー手はつけてないわよね?
もう雰囲気でわかる。私がスカウトした子、神城明日菜という名前の子は、清涼な空気そのものだろう。
夜空に光り輝く星々のように、小さなあかりが、田舎に行くとまぶしいくらいに輝いて、その中でもひときわ輝くスター。
きっと、彼女ならなれる。
正直、彼氏って存在は邪魔でしかないけど、
ーこの様子なら続かないわね?
むしろ、彼氏の方が彼女をあきらめて、すぐにとなりにいる女の子とくっつきそうだ。
さっきの修羅場に私は内心あきれていたけど。ーコントみたいな修羅場だな?
というか、あれは、大人の私たちからみたら、コントにもみえるけど、私が覚えてる恋心も、目の前にいるこの子たちくらいの年齢だ。
子供って言うには、大人で。けど、大人って言うには、不安定で。
ー思春期。
義務教育の年齢は、よくできてる。義務教育がすぎたら、もう自己責任だ。
いまはSNSなんかがあるから、なおさら、そう感じるのかもしれない。
たくさんの情報が、真偽をとわず子供達の目に,耳に、あたまに、入っていく。
プロダクションも、そちら側に展開しはじめてる会社もあるけど、うちはまだみている。
ただでさえ、週刊誌やテレビでなにかあれば、ひどく騒がれる時代に、圧倒的多数の個人、が束になって、よくわからないネット殺人を犯してる。
プロダクション側としては、タレントの私生活を守ってやりたいが、自業自得もあるので、もう個人的には、やらせない方針にうちはなっていく。
気にしない子たちならいいけど、スタッフの私たちですら、やるせない気持ちになる。
「神城を守ってくれますか?」
静かに澄んだ眼差しが私をみつめる。隣の女の子も同じ瞳で私を見つめた。
だから、私の精一杯で私は神城明日菜を守っていく、そう誓ったけど。
その子たちは、その言葉に安心するわけでもなく、反発するわけでもなく、
ー哀しげにつかれた笑みを浮かべた。
ただ、哀しげに、疲れた顔で、けど、
ー笑ってた。
不思議な子たちだ、と思った。




