表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

368/652

スカウト 春馬 ①


地下鉄で博多駅に移動して、博多駅につくと、人混みがまた増えた。


新幹線の改札口がある筑紫口にでる。地下鉄空港線、新幹線、が近くにある場所。新幹線も考慮して柴原が博多口じゃなく、筑紫口にでたのは、わかった。


博多駅は、最近再開発されたこともあり、単純にひとが増えているけれど、都会なら目立たないかとも、考えたけど。


ーやっぱり、神城は、目立っている。


むしろ目立つ。


人が増えたぶん、注目度がましてる。柴原と手繋いだ神城がややうつむきがちにあるいてる。


まわりは旅行客もたくさんいるから、スマホがあちらこちらで、記念撮影してる。カシャカシャきこえる。


でも、流石に、その言葉を聞いたとき、俺と柴原は、動こうとした。


ー写真を撮ってネットで名前をきく。


ありえない!


だって、神城は、ただの南九州の片田舎からでてきた、ごくふつうに修学旅行中の、


ー中学生だ。


なんで、そんなことが、できるんだ⁈直接、神城に声かけてきいたら、いいだけだろ?


なぜ、名前も名乗らない、自分勝手な盗撮で、全世界に生配信で、素性を調べられないといけない⁈


ーまるで指名手配みたいだ。


わかってないのか?ネット⁈


ーその意味を、考えずにやるのか?


しかも、俺たちより、どう考えても歳が上だ?


柴原が神城をそいつらから隠そうと、さりげなく位置を変えたけど、神城を狙ってる奴らは、そいつらばかりじゃない。


神城にも、きこえてる。顔が血の気を失ってる。まるで、あの真冬の屋上みたいだ。


ー嫌だ!


なんで、こんなにたくさんの大人がいるのに、誰も助けてくれない⁈それどころか、カメラを隠し撮りみたいに向けてくる?


ー神城が何をした⁈


俺の中で、なにか、おさえこんでたはずの、圧倒的な熱いナニカが暴れ出しそうになった時、


ほんとうに、ギリギリで、


「やめなさい!」


鋭い、大人の、声がした。


そう、はっきり聞こえたんだ。


ーえっ?


俺は驚いて、声がした背後を振り返る。柴原も足を止めたから、グループ全員が振り返ってた。


いかにもキャリアウーマンです?みたいな気の強そうな女性が立っていた。


ーいまの声、この人か?


って、思う間もなく、その人は、神城の手をつかんだ。


「ーあなた!芸能界に興味ない⁈」


そう強い瞳が神城を見つめる。


ースカウトだ。


って、わかった。


ああ、この人だ。きっと、この人なら神城を、あの南九州の片田舎から、救いだしてくれる。


だって、


「やめなさい!芸能人でも、許可ないなら、犯罪よ?」


そう言った。はっきりと、言った。


ーああ、声に出せる大人だ。


神城はただ驚いてその人をみている。その隣で、柴原もその人を驚いてみていた。


けど、すぐに目線を床に落として、寂しそうに笑ってた。神城にみんな目がいってるから、というか、


「すげー!スカウトの瞬間じゃん?」


「いま撮って流したら、絶対バズるぞ?」


…よけいにスマホがふえた。


そうしたら、


「すごい?明日菜!やっぱり、すごいじゃん!」


そう下を向いてたはずの柴原が、はしゃいだ声を上げて、神城にだきつく。そうしたら、つられて班の連中がぐるりと神城とスカウトの女性を取り囲み、さわぎだした。


異世界人なんか、ビョンピョンはねて、黄原まで、


「すげー!俺たちも行こうぜ?」


って輪に入る。神城のまわりを結果的に、みんなが囲んだから、知らないヤツらから、神城は写せない。


舌打ちが聞こえるけど、柴原がふいに俺をみた。


見たから、わかった。いや、わかってる。


ーこの人だ。


まさかの早業だ。


ー神城がスカウト、された。


ーやめなさい!


きっぱり、言ったその大人に、スカウトされた。


ああ、この人だ。この人なら、きっと、神城を守ってくれる。だけど、ビックリしていた神城が、俺をすがるような瞳でみるから、つい、


「ーそろそろ行かないと、集合時間に間に合わなくなるぞ?」


って、言ったけど、つぶやくように小さな声は、はしゃいだまわりの声に打ち消される。


「私なら、いまみたいなことがあっても、守ってあげられるわ?繰り返すわよ?それなら、とことん目立ちましょう!あなたなら、スターになれるから!」


戸惑う神城に、スカウトの人がいう。俺はぎゅっと拳をにぎりしめた。


ー私なら、守ってあげられる。


「すげーな」


その強い言葉に、つい一歩、後退りした。


だって、俺にも、柴原にもできない。


ー守れない。


誰かに、信頼できる大人を、探して、保護してもらうしか、俺たちには、浮かばなくて。


ーだって、ムリだ。ほんとうに、ムリただ。


それを、この人はいま、宣言した。


ーああ、敵わない。だけど、あの焼けつくような熱いナニカが、俺の狂気を呼びますまえに。


やめなさい!


はっきり、言葉にして神城を守ってくれた。ただ言葉で守って、神城の目をしっかりみて、自分の声で話しかけてる。


悔しかった。けど、


ーこれでいいんだ。神城だけは、逃げて欲しい。あんな瞳で、真冬の屋上になんか、いないでくれ?


きっと、この人だから。


神城の隣りにいた柴原がチラッと俺に視線を送ってくる。俺は笑いそうになる。


ー柴原、人がよすぎだろ?


お前だって、もしかしたら、たったひとり、同じ異世界にいるヤツかもだぞ?神城は。


それをお前だって、失うくせに。


ー人の心配してる場合かよ?


いま、この光景をしっかり、脳に記憶しておけ?


ーきっと、いま、神さまがサイコロを、ふろうとしてる。


そう思った時、


「彼氏がいてもいいのなら?」


神城がはっきり声にだして、俺をにらみつけてきた。


「ーはっ⁈」


って間抜けな声がでていた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 過去編で1番楽しみだったところがようやくきました!マネージャーさんやっぱり良い人ですよね。初めて会った時から明日菜を守ってくれてるんだから春馬達からしたらとても信頼できる守ってくれる人だっ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ