スカウト 春馬 ①
地下鉄で博多駅に移動して、博多駅につくと、人混みがまた増えた。
新幹線の改札口がある筑紫口にでる。地下鉄空港線、新幹線、が近くにある場所。新幹線も考慮して柴原が博多口じゃなく、筑紫口にでたのは、わかった。
博多駅は、最近再開発されたこともあり、単純にひとが増えているけれど、都会なら目立たないかとも、考えたけど。
ーやっぱり、神城は、目立っている。
むしろ目立つ。
人が増えたぶん、注目度がましてる。柴原と手繋いだ神城がややうつむきがちにあるいてる。
まわりは旅行客もたくさんいるから、スマホがあちらこちらで、記念撮影してる。カシャカシャきこえる。
でも、流石に、その言葉を聞いたとき、俺と柴原は、動こうとした。
ー写真を撮ってネットで名前をきく。
ありえない!
だって、神城は、ただの南九州の片田舎からでてきた、ごくふつうに修学旅行中の、
ー中学生だ。
なんで、そんなことが、できるんだ⁈直接、神城に声かけてきいたら、いいだけだろ?
なぜ、名前も名乗らない、自分勝手な盗撮で、全世界に生配信で、素性を調べられないといけない⁈
ーまるで指名手配みたいだ。
わかってないのか?ネット⁈
ーその意味を、考えずにやるのか?
しかも、俺たちより、どう考えても歳が上だ?
柴原が神城をそいつらから隠そうと、さりげなく位置を変えたけど、神城を狙ってる奴らは、そいつらばかりじゃない。
神城にも、きこえてる。顔が血の気を失ってる。まるで、あの真冬の屋上みたいだ。
ー嫌だ!
なんで、こんなにたくさんの大人がいるのに、誰も助けてくれない⁈それどころか、カメラを隠し撮りみたいに向けてくる?
ー神城が何をした⁈
俺の中で、なにか、おさえこんでたはずの、圧倒的な熱いナニカが暴れ出しそうになった時、
ほんとうに、ギリギリで、
「やめなさい!」
鋭い、大人の、声がした。
そう、はっきり聞こえたんだ。
ーえっ?
俺は驚いて、声がした背後を振り返る。柴原も足を止めたから、グループ全員が振り返ってた。
いかにもキャリアウーマンです?みたいな気の強そうな女性が立っていた。
ーいまの声、この人か?
って、思う間もなく、その人は、神城の手をつかんだ。
「ーあなた!芸能界に興味ない⁈」
そう強い瞳が神城を見つめる。
ースカウトだ。
って、わかった。
ああ、この人だ。きっと、この人なら神城を、あの南九州の片田舎から、救いだしてくれる。
だって、
「やめなさい!芸能人でも、許可ないなら、犯罪よ?」
そう言った。はっきりと、言った。
ーああ、声に出せる大人だ。
神城はただ驚いてその人をみている。その隣で、柴原もその人を驚いてみていた。
けど、すぐに目線を床に落として、寂しそうに笑ってた。神城にみんな目がいってるから、というか、
「すげー!スカウトの瞬間じゃん?」
「いま撮って流したら、絶対バズるぞ?」
…よけいにスマホがふえた。
そうしたら、
「すごい?明日菜!やっぱり、すごいじゃん!」
そう下を向いてたはずの柴原が、はしゃいだ声を上げて、神城にだきつく。そうしたら、つられて班の連中がぐるりと神城とスカウトの女性を取り囲み、さわぎだした。
異世界人なんか、ビョンピョンはねて、黄原まで、
「すげー!俺たちも行こうぜ?」
って輪に入る。神城のまわりを結果的に、みんなが囲んだから、知らないヤツらから、神城は写せない。
舌打ちが聞こえるけど、柴原がふいに俺をみた。
見たから、わかった。いや、わかってる。
ーこの人だ。
まさかの早業だ。
ー神城がスカウト、された。
ーやめなさい!
きっぱり、言ったその大人に、スカウトされた。
ああ、この人だ。この人なら、きっと、神城を守ってくれる。だけど、ビックリしていた神城が、俺をすがるような瞳でみるから、つい、
「ーそろそろ行かないと、集合時間に間に合わなくなるぞ?」
って、言ったけど、つぶやくように小さな声は、はしゃいだまわりの声に打ち消される。
「私なら、いまみたいなことがあっても、守ってあげられるわ?繰り返すわよ?それなら、とことん目立ちましょう!あなたなら、スターになれるから!」
戸惑う神城に、スカウトの人がいう。俺はぎゅっと拳をにぎりしめた。
ー私なら、守ってあげられる。
「すげーな」
その強い言葉に、つい一歩、後退りした。
だって、俺にも、柴原にもできない。
ー守れない。
誰かに、信頼できる大人を、探して、保護してもらうしか、俺たちには、浮かばなくて。
ーだって、ムリだ。ほんとうに、ムリただ。
それを、この人はいま、宣言した。
ーああ、敵わない。だけど、あの焼けつくような熱いナニカが、俺の狂気を呼びますまえに。
やめなさい!
はっきり、言葉にして神城を守ってくれた。ただ言葉で守って、神城の目をしっかりみて、自分の声で話しかけてる。
悔しかった。けど、
ーこれでいいんだ。神城だけは、逃げて欲しい。あんな瞳で、真冬の屋上になんか、いないでくれ?
きっと、この人だから。
神城の隣りにいた柴原がチラッと俺に視線を送ってくる。俺は笑いそうになる。
ー柴原、人がよすぎだろ?
お前だって、もしかしたら、たったひとり、同じ異世界にいるヤツかもだぞ?神城は。
それをお前だって、失うくせに。
ー人の心配してる場合かよ?
いま、この光景をしっかり、脳に記憶しておけ?
ーきっと、いま、神さまがサイコロを、ふろうとしてる。
そう思った時、
「彼氏がいてもいいのなら?」
神城がはっきり声にだして、俺をにらみつけてきた。
「ーはっ⁈」
って間抜けな声がでていた。
 




