二日目 春馬 ⑤
ー柴原、もつかな?
俺たちは、福岡の繁華街、天神にある西鉄駅の執着点の駅わきから、南九州の片田舎では、めったに体験できない人ごみをでて、駅前のちょっとした広場にでた。
「ああ、慣れない人混みって、つらいよね。空気が美味しいなあ」
芝生の上で、柴原がそう言って座り込む。一見、ひと息ついただけの姿だ。
俺、ちょっと、って赤木たちがトイレでなれて、神城はほかの女子と、クレープを買いに行った。
珍しさに、黄原もついて行ったから、一応、大丈夫だろ?
赤木たちとは違う方向だし、あいつらラーメンでも食ってきそうだ。
俺は視界に入った自販機で、水を選んで、柴原にわたす。
「おつかれ?」
「あはっ!村上、ありがとう。さすがだね?」
喉は、俺も乾いていたから、それくらいならわかる。俺たちの南九州の片田舎とは、違うけど、今日は福岡も、暑い。
横に座って、俺はコーラゼロを、一気にあおぐ。
奇妙な甘さの炭酸が、のどをうるおす。
「いいなあ?炭酸。私にも一口ちょうだい?」
柴原が手をだした。素直にラッシーみたいに、わたす。柴原は、ラッシー並みに、容赦なく飲みやがった。
俺の手もとに、空のペットボトルがある。
まあ、いいけど。柴原が大きく息をはきだした。
「はあ、予想外にハードだった。ナイスアシスト、ありがとう、村上」
「黄原くらいしか、相手にできなかった。悪い」
「じゅうぶんだよ?ただ、赤木って、彼氏として、どうよ?」
「おまえの自業自得で、今日で、虫除けだろ?」
「虫除けどころか、逆効果に、ならないといいけどね。いまさらながら、失敗したわ」
…たしかに、フリーになった赤木を、どうとめるんた?
防波堤いなくなるぞ?しばらくは、柴原を擁護あるかも、だけど。
ー自業自得、な、カップル劇場だしな?
まあ、柴原に見る目ないで終わる話だ。
「…おまえ、アイツで、よかったわけ?」
「あれ以上のバカいる?」
「赤木が子沢山になるだけじゃね?」
「避妊はしたわよ?」
「…必ず相談しろよ?」
相談されても、俺はたぶんわからないが。一応、柴原に言う。俺にはまったく未知の領域だ。
そういえば、親父がよく食い物食って、未知との遭遇って言うが、異世界人のはなしでは、むかし流行った映画らしい。
小さな頃は素直に、味覚なら、料理の話?だったが、違う未知だった。
ーややこしいから、やめてくれ。
って親父に思ったが、いまなら、まあ、たしかに?だよなあ。
ただ柴原に関しては、不思議でしかない。だってー。
俺たちがどっち側で、その%わりと笑えないよなあ?
まあ、10年後は、逆転かもだけど。
だとしたら、なんだ?
「ーおまえの場合も、親か?」
「父親かな?あんたは?」
「異世界人」
「まあ、あんな先輩がいたら、そうなるかもね?おじいさんがいたんだって?」
「黄原?」
「まあね」
「おまえは?」
「私は療育先のみんなや、お母さん、お姉ちゃん、職人さんとか?」
「療育楽しかったか?」
「最初はわけわかんなくて、怖かった。だんだん慣れたけど、棚から出なかった。
「幼稚園での俺だな。兄貴を呼ばるやつ」
言いながら、ほんとうに兄貴は苦労したよなあ?
ってあきれた。
土産買わないと、ダメだよなあ。あと部の後輩。
野球部の先輩たちには、部員で買うから、いいだろうし。金だけもう渡してる。
「クレープ食ったら、お土産ついでに、キャナルシティだったか?」
「ラーメンスタジアムあるんだよね?」
「また、食うの?」
…赤木たち、いまたぶん、ラーメン食ってるぞ?
柴原は肩を上げてみせた。
「好きな人の前で女子なら、豚骨ラーメン食べないんじゃない?においが苦手って、却下だよ?」
聴いてなかったの?って言う。
当たり前に、異世界の話は、きいてなかった。モスキートンなら、きこえたような気もするけど。
「博多か」
「お土産的にも、時間的にもそうかな?遅延したやつは、あきらめだし」
「まあ、いろんな意味で時間とるよな…」
視界の隅に黄原たちが入ってきた、
神城がなんか驚いた顔で俺たちをみてるが、
ー俺は梅ヶ枝餅の恨みは、わすれないぞ?
「もし、明日菜が動いたら、あんたはどうするの?」
柴原が俺と神城を見比べているが、そもそもあるわけないか、柴原だし、一応こえる。
「素直に行ってらっしゃい、さようなら?げんきでね?以外になんかあんのか」
「ノーゲームで再試合は?」
「ねえよ」
俺は梅ヶ枝餅の恨みを忘れない。
ー忘れてなんか、やらないぞ?
胸の痛みも、青空にみた神城も、何もかもを、
ー修学旅行に、脳に焼き付けてやる。
俺の手のなかで、パキッて、コーラのペットボトルが、音をたてた。
知らないうちに、両手をにぎりしめていた。
「ペットボトル、捨ててくる。おまえは?」
「村上のコーラもらったから、まだ入ってる」
「ーそうかよ?」
俺、たしか、奢ってもらえるくらいの活躍したよな?梅ヶ枝餅で。
ーまあ。柴原は、いまからがもっと大変だよな。
炭酸くらいなら、お安い支援だ。俺はみんなと違って、決められたお小遣いだったはずが、小銭いれに、何枚か紙幣が追加されていた。
ー異世界人、なんの土産だ?
って思う。とりあえず、兄貴にメールできくかあ。
そう思いながら、柴原目指して帰ってく連中から離れた位置のゴミ箱に、向かった。




