2日目 明日菜 ④
はじめて、私は村上くんと会話したけど、彼はいきなり、
ー私のパンツの色を口にした。
絶対、ない!
こんな人、絶対、ない!
って、思うけど、やっぱり、なんでだろう?
ほんとうに、どうして?かなあ。
視界に、入るんだ。ほんとうにさ?
視界に、入ってくるんだよ?
なんか気になるから、みていたら、教師から、解放された村上くんに、まず黄原くんが走って行った。
私は少し離れた場所からみていた。ふと思い出さすさっきの黄原くんと柴原さんの会話。
おじいさんが亡くなってから、あまり、笑わなくなった?
いつ、おじいさんが亡くなったんだろう。
私はまだ身近な人が死ぬを、体験したことがない。お兄ちゃんは、とおくの大学に行ってるけど、
ー生きてる。
用事があれば、ううん、なくてもスマホにかけたら出てくれる。
お母さんは、すごく嬉しそうに、わらうんだ。
ーおばあちゃんたちの頃には、なかったのよ?
お母さんが学生時代は、PHSや携帯があった。その前は、ポケットベル。
ーポケットに入らない大きさの通信手段が、いっきに小さくなっていった。
ただ、お父さんは、
ーどこでもクレームの電話がくる。
クレーム処理課にいるから、ウンザリした顔になってる。
たしかに、夢の国のパレードそっちのけで、よくわからないクレームを相手したって、げんなりしてたなあ。
携帯も便利だけど、そういえば、医療現場ではPHSが多かったけど、市販は携帯からスマホへと変化してる。
お兄ちゃんも家に電話はついてない。スマホで十分だし、お母さんは、いつでもテレビ電話もできるって喜んでいた。
けど、お兄ちゃんは、嫌がってたかなあ?
ただ、お兄ちゃんは、私とお姉ちゃんとは、テレビ電話したがるけど。
お姉ちゃんから却下されてる。とくに私は出してもらえない。
お兄ちゃんが私の写真を撮って、悪用するとは、思えないけど?
そこは、なんか違う姉心理みたいだ。
ある意味で、私をめぐるふたりは、ライバル、らしい。
ー末っ子の特権よ?明日菜。
お母さんが、いつも苦笑いするけどさ?
視界の隅にうつる村上春馬くんは、あの先輩の弟、らしい。
話をきくかぎりだと、たぶん、彼も末っ子?
ふたりしかいない兄弟でも、そう呼ぶかは、わからないけど。
ー年子って、不思議な存在なんだろうなあ。
双子はある意味で、もうそばにいた存在だろうけど、年子は、よちよち歩くか歩かないかで、いきなり目の前にあらわれるわけだし。
成長によっては、よく双子と間違えられるんだろうし、けど、一年分、はやいし?
不思議な歳の差だとは、思う。同性なら、なおさら?なんだろうなあ?
ただ、まったく違うらしい。村上春馬くんと、噂の、、、誰か?
名前、覚えてないなあ。
散々きいたけど。こんど、もしも、その先輩をみたら、わかるのかなあ?
村上くんとおなじ茶色がかった瞳をしてるのかな?
村上くんは、私たちとは、はなれた場所で、梅ヶ枝餅をパクパクたべてる。
なんかいたなあ?
ートイプードルじゃなくて、
「プレーリードックみたいだね?食べ方」
ああ、それだ。ーって?
「まさかの初対面だったね?明日菜?」
私にも、予想外だったんだよ?って、柴原さんか苦笑いする。
「村上って、和菓子が好きなんだって、知ってた?」
「知らないけど、美味しそうに、たべてるね?」
大切そうに梅ヶ枝餅を両手でもって、たべてる姿は、素直に、
ー動物園に、いそう。
柴原さんが教えてくれた動物もだけど、他にもいそうだから、素直にいそうだ。
ー動物園に。
ただ、梅ヶ枝餅を手に、ポケットからスマホをとりだして、こんどは、地面をうつしてる。
ー動物園のチンパンジー?
地面になにかいるのかなあ?
「ありゃ、あれは、もはや、こっちによって来る気ないわね?どうする?明日菜」
「えっ?」
「さっき、村上が梅ヶ枝餅を買いに走ってくれた時にさ?
みんな一応自己紹介したじゃん?そこに村上、いなかったし?赤木たちが戻ってきたら、うるさいしさあ?いまのうちに行かない?」
「食べたら、こっちに集合じゃないの?」
「いや、あれは、たぶん、来る気ないでしょ?」
柴原さんがあきれてるけど、どうして?
ーどうして、柴原さんは、そんなに彼のことがわかるの?
ただ座って梅ヶ枝餅をたべて、
あっ、こっちむいた。
私は反射的に目をそらした。
もう、これは半分くらい私には、癖になってしまってる。
でも、いまのは、自分でも素早くない?
だって、胸がどきって合図くれたんだよ?
だから、よこで、柴原さんが、またため息をついたんだ。
「やっぱり、選択肢、間違えたかなあ」
ぶつぶつ言ったあと、
「まあ、いっか。私たちも予想外たくさんあるしね?そもそもが賭けだし?とりあえず、村上と黄原のところいこう?明日菜」
チラッと腕時計をみながら、柴原さんか私の手をつかんだ。
先にまよいなく歩いていきながら、
「ーだいじょうぶだよ?明日菜。村上春馬、だからさ?」
「ーなんで、フルネームで呼び捨てなの?」
「気になる?」
あははと軽く笑って、
「ー村上春馬、だよ?明日菜」
「だから、なんで呼び捨て⁈」
私はなんとなく、おもしろくない。
でも、
ー髪の羽虫騒ぎで忘れたんだ。




