春馬と水車と脱帽と?
バスに揺られながら、なぞに車内カラオケや、いまさらな、
ー自己紹介。
なんかありながら、バスが熊本県の人吉ー八代間のトンネルを走ってる、
ぼーって、なって、つい、うとうとしていたら、
ートンネルをぬけたら、そこは、福岡の朝倉だった。
ビックリした。
となりの席の黄原があきれていた。
「よく寝るなあ?お前。楽しみで寝れないタイプじゃないよな?」
トンネルは、関係ないな。
寝ていただけだな。
俺は、自分にあきれた。
「ひまだから、寝てた」
そう素直に?言ったら、黄原がため息を軽くついた。
「お前はそういうヤツだよなあ。せっかく、神城みれたのに」
「ただの異世界人だろ?」
「だから、なんだよ?その異世界人って。そりゃあ、神城は、テレビに、でてそうな雰囲気あるけどさ?」
ーそりゃあそうだ。
異世界人は、雰囲気だ。
納得したから黙ってたら、また、黄原があきれた顔をした。
「だから言い返せよな?」
「なんで?」
納得したから、言葉にする理由あるのか?
黄原がまた、ため息をついた。
そういえば、兄貴もよく俺に、ため息つくよなあ?
親父や異世界人も?
俺にため息つかないのは、じぃちゃんと、
ーラッシー。
と、
最近、見かけたな?
俺は、バスの窓から外を見たけど、目当てのバスは見当たらない。
「神城のバスなら、もう先に、次にむかったぞ?大人数だと迷惑だし、ゆっくり見れないし」
いや、そうじゃなくて。
いや、バスはそうか?
俺が思い出したのは、
ー芝生。
犬の換毛期を説明してきたヤツ。
ー柴原、だ。
アイツは、俺にため息つかなかったよな?
むしろ、、、?
ぼんやりしていたら、黄原に肩をたたかれた。
「とりあえず、せっかくだし、俺たちも見てみようぜ?三連水車。お前、すきだろ?ぐるぐる、まわる系?」
どういう評価だ?けど、たしかに好きだ。まわるやつ。
自転車のペダルや扇風機なんか。
めちゃくちゃ大好きだ。
「いつも思うけど、何が楽しいんだ?それに、よく目がまわらないなあ?」
黄原があきれるけど、
ーそりゃあ、目は、まわらないぞ?
だって、全体を見てない。
わりとみてるのは、
ーいちぶの場所。
目をぐるぐるまわしてる、わけじゃない。
キョロキョロは、してるかも?
けど、わりと、まわってるものを、みてるときは、
ー安心して、ぼーって、なる。
ただ、ぼんやり、してる。
特に、自転車のペダルなんかは、そうだ。
自分の手の動きで、まわり、力や速度が違うようで、一定で、止めても、
ーまわるし?
不思議だけど、納得できるただの感覚で、
ーただ、不思議なんだよなあ。
ほんとうに、不思議なだけで、わりと、ぼーってみてる。
不思議な動きが、ただ、規則性をもってうごくから、
ーなんか安心?
予測つく動きだから?
たまにやりすぎると、じぃちゃんが棒を、後輪に突っ込んで止めてたな。
じぃちゃんが持ってた自転車は、前輪にブレーキがついていたから、後輪とチェーンでつながってた自転車を止める手段、だったような?
ー絶対に、マネするなよ?
だったけど、車輪は、止まってたな。ペダルも。
じぃちゃんが自転車を買ったときに、ばあちゃんが不思議がって、おれと同じことをしていたらしい。
へぇー、だった。
ばあちゃんは、自転車に乗ろうとは、しなかったらしいけど。
黄原にうながされ、バスの前方のドアから降りる時、運転手さんに頭を下げて、マニュアルのギアに目がいく。
ーこんな大きなバスを動かす運転席、マジですごい。
じぃちゃんが乗ってた古い軽トラは、マニュアルで、友人にかりたばあちゃん縁の小さな畑で、じぃちゃんが働いてる間。
じぃちゃんが、くわで畑の土を掘り返している間に、俺は、小さな子供用のスコップもって、肥料臭い不思議な土を掘りながら、たくさん虫やミミズ、たまにモグラと出会ってたなあ。
スコップは、わりと掘れる。土いじりにあきたら、たまにじぃちゃんの軽トラで、サイドブレーキだけは、絶対にいじるな!
そういわれて、サイドブレーキだけは、いじらなかったけど、ギアの弾力?というか、独特の感覚か大好きだった。
そんな俺を見て、じぃちゃんが言ってた。
ーいまは、オートマ免許と普通免許がある。
もし普通免許を自動車学校とかで、練習して、それでもマニュアルに乗りたいなら、ペーパードライバーとかでなく、日常生活でも使いたいなら、
ーいちばんはじめの車は、できれば、マニュアル車を選ぶかたまに乗れ?
そう俺に言ってたなあ?
なんで、ペーパードライバーは、よかったんだろ?
なんとなくわかるような?わからないような?
ただ、バスってすごいなあ?けど、そのうちオートマに変わるんだろうな?
俺はバスから降りた。
そして、びっくりした。
学年主任が社会の教師だったから、見たいだけじゃないか?
そう生徒たちの間では、噂された水車だけど、ただ、びっくりした。
ー現役?
いつの時代たよ?
モーター式?
たしかにブーンって音するなあ。けど、すげーって感心してたら、
「あっちに木造あるみたいだぞ?行こうぜ」
黄原が歩き出した。
そして、不思議に思った。
立ち止まって、その場で、くるりとまわってみるけど、
ー?
川の流れは?
ー?
小さく靴を蹴れば、
ー当たり前につま先がアスファルトで痛い。
ー?
「何やってんだ?はやく来いよ?」
黄原が呼んだ先にあるさっき見たやつよりちいさな。
ー三連水車。
3つを木枠の水路がフォローしてる。
いや、水路を木枠がフォローしてるのか?
水車の先にある長方形の箱も不思議で、さっきも見たけど、
ー見たけど。
よくわからない。
わからないけど、飢饉のあとにできた水車。
開拓しようと、ただ、努力した。
ー圧倒的な、知力と経験、技術に、
いや、なにより現状をなんとかしたいと願って、あみ出した、
ーその力に、脱帽した。
あれ?
ー脱帽、は、時と場合?敬礼か?
この場所、日差しがまぶしいような?
って、相変わらず俺は、異世界人から怒られることを思いながら、周りを見渡して小さな橋のマークにきづいた。
小さな用水路のマークは、ホタル。
日本昔話だと、帽子は、
ー笠?
ホタルと、かさ?
俺の鼓動が跳ねる。
無意識に前歯で下唇を噛んだ。
ー明日、俺は、やっぱり、さ?
ホタルは、自然にいるけど、
ーきれいな水流だからこそ、小さな灯りに気づくけど、
天体望遠鏡で満月をみたら、
ーそのあかりが周囲の星を儚くさせる。
だけど、
この三連水車のように、
ー高い土地に水を、流れを、ただ、流れて、ただ、
ぎゅっと、下唇を噛みしめる。
ーあんな想いは、もう嫌だ。
真冬のグランドで、かじかむ手でバットで素振りしながら、
ーほんとうに、寒かったんだ。
寒かったのに、
雪がちらついて、いや、雪は、あたたかいけど、
けど、さ?
ー濡れちまうし、
寒さは、河すら、凍らせちまう。
けど、
だけど、
俺は目の前の三連水車を見つめる、
水が凍りはじめる、
ー0,
だけど、
マイナスからも、プラスにもっていける。
不思議な数字、
ーゼロ。
なら、さ?
ただ、このきれいな、ホタルのいる水流を、
ただ、この流れは、5月から10月中旬までしか動いてないけど、
いや、動かないからこそ、
ーやっぱり、明日、俺やアイツは動くだろう。
ただ、
この水車を作り上げて、現在まで続いている、
たくさんの悲しみをへて、苦しみを乗り越えて、
ーああ、いま目の前にある。
なら、さ?
俺は少し滲んだ血の味を舌でなめた。
ー俺だって、守りたいんだ。
ほんとうに、そう、おもうんだ。




