第24話
いい匂いがして俺は目覚めた。
なんだっけ?
昔はみそ汁の匂いで目覚めるが、新婚の理想だったか?
ん?
新婚?
俺は、慌てて目を開けて、時計を確認した。
ー八時だ。
・・・きょうも釣れない。
がっくりと、うなだれる。
べつに釣れなくはないけど、やっぱり朝マヅメは、特別なんだよなあ。
明日菜といっょだとつい寝すぎてしまう。いまは考えてることがあって、その問題が終わってから、また考えようと、ただキスをして眠る時間が増えたけど、それでも寝過ごすのが俺だ。
明日菜は俺が最近スマホでいろいろ調べているのは、仕事関係の資料だって、単純に信じてくれるけど、俺の知り合いは、奥さんの前で真面目な顔して、
ーAVみてる。
ばれないらしい。
というか、どういう性癖だ?
相手は奥さん限定でバレてないなら、いいんだろうなあ。
よくAVは浮気か浮気じゃないかって、論争あるけど、俺がAVもってたら、明日菜ってどういう顔をするのかな?
・・・やめよう。
たぶん、嫌な気分になりながら、明日菜の場合は、
ー言葉をのみこんでしまう。
だって、俺だって男だから、過去に見たことないとは、いえないし。
だって、寮では、立場弱い時代あったし。
ただ妄想相手は、明日菜だったけど。
ー俺って、やばくね?
まあ、大学生の俺って、ちょっとヒネていたしな。
まあ、夢中には、なれなかったけど。とりあえず、知識的にはOKみたいな?
高校も大学もなんかお誘い多かったんだよなあ。俺をれて行ってもメリットないけど、
ーいつまでも神城明日菜をおってないで、リアルに目をむけろよ?
だったよなあ。もちろん、明日菜の存在を知っている柴原が、遠距離恋愛の恋人がいると援護していたけど。
ー毎回、それは嘘で、俺は柴原に片思いって、噂になっていたけど。
・・・俺と柴原は、中学から一緒だぞ?遠距離恋愛の彼女を、柴原はしってるぞ?
ー俺って、そんなに浮気男に、みえたわけ?
地味にへこむな。
「春馬くん?おきたの?」
落ち込む俺に女神の声がきこえてきた。ジーンズに俺のパーカーをきた明日菜がいる。
「おはよう」
やさしくキスしてくれる。
ーいま考えていたことは、絶対に口にしない。
そう心にちかう。
そこは奇妙に守れる俺だ。
「明日菜、はやいな?」
「うん。でももう八時だよ?」
「4時間の寝坊だ」
俺は落ち込む。
「釣りに行く予定だったの?」
「まあな」
「私を気にせずに、アラームかけてくれていいのに」
寝坊の理由。明日菜よりアラームなしで起きれないのが俺だ。
朝陽で目覚めても、おそいんだよなあ。やっぱり、朝陽がのぼる頃に、海にいたい。
「いや、いいよ。まだまだチャンスは、あるしなあ」
「私は、たべないよ?」
「返し速すぎない?」
俺はそう言いながらあくびを噛み殺す。
「顔洗ってくる」
「うん。朝ごはんあっためとくね。ウシガエルかける?」
「ーああ、チャンネルは、なんでもいい」
俺は洗面所にむかう。
玄関から朝のFMラジオが流れてきていた。
ウシガエルの水槽に設置したスピーカーから流れている。
ついてにウシガエルの顔が赤ペコのようにゆれる。たんにちょっと遊んでみた。
音は振動があって、水槽だし。まあ、いいか。
空ちゃんと、くみあせて遊んだけだしな。
「今度は、いつ東京にいくんだ?」
「うーん、しばらくはこっちかな?私の特集をくんでくれるの。この前、春馬くんもあった編集さんたちがね、福岡での私も、もっとみたいって、こっちでの取材もあるんだ」
「へー。ファッション誌だよな?」
「うん。新しい洋服もあるみたいで、なんか、いまさら採寸されちゃった」
そしたら、中学生の頃の身長を教えられて、びっくりしたって笑う。
「そういえば、あの頃は、明日菜とあまり変わらない目線だったよな?」
俺の身長は、明日菜が東京にいってから伸びたし、声も変わったよな。
テーブルには、いい匂いがしていた。
「きょうは野菜スープとトースト、ハムエッグだよ?」
そう言いながら、明日菜の前にはスープしかない。
スープしかない、と、とるのか、スープだけでも、食べるって、とるか微妙だよなあ。
「いただきます」
俺の視線に気がついた明日菜が手をあわせてスープをのむ。
まあ、具材は、はいってるし、いいかあ。
俺のお腹が盛大になった。
「いただきます。おっ、マジでうまい、明日菜、料理うまくなったよなあ」
「うん。いま寮母さんに、教えてもらってるんだ」
「寮母さんって、やっぱり料理がうまいの?」
これだけ会話しながら、俺は実際には、あったことないんだよなあ。
「こんどお弁当にしてもらおうか?」
「いや、できたてを食べたいからいいや」
「そうだね。いつか逢いたいって寮母さんもいってるし」
「俺の貴重なメル友だしな」
ハムエッグも俺好みのかたさになっていて、素直に俺は、明日菜をみつめる。
「・・・ほんとうにすごいな、明日菜」
「うん。食べることに、少しずつだけど、興味がわいてきたよ?」
だって、食べてもらえるって、こんなにうれしいんだね?
そう笑いながら、すこしだけ目を伏せた。
「なんでだろ」
「明日菜がわるいわけじないさ」
俺は手をのばして明日菜の頭を撫でてやる。
そして、
「だいじょうぶだよ?」
ー俺には、秘策があるぞ?
そう言ったら、
「絶対に、たべないからね?!」
相変わらず、俺の奥さんは、
「超能力テストはあけません」
・・・だった。




