大学14話
そのあと、春馬くんが運転する間、誰があのウシガエルの張りぼてを、持つかで少しだけ私たちは、もめた。
だれも、持ちたくない。が本音だ。
結局は、春馬くんがタントのバックドアをあけて、その下に見えないように、いつも、釣り用に置いてるクーラーボックスにいれた。
もちろんクーラーボックスは洗って、干してから車にあるから、においはしない。
そのあたりは、大学時代の先輩がうっかり一晩中おいていて、車にすごいにおいが残り、とれなくなったのをみて、学習したらしい。
タバコ臭より、強烈なにおいが残るタイプの餌がある。
春馬くんは、笑ってたけど。
手を洗う用の石鹸と、ペットボトルに水も入ってる。
春馬くんは、ひとりキャンプとかを、しそうだけど、やらないらしい。
ーだって、柴原って、酒癖わるいし?寝込み襲われそうだし?
いちど不思議に思ってきいたら、平然とそんなこたえが返ってきた。
あれは、まだ、コロナ前だったかなあ?
アウトドアが好きな彼氏とデートみたいな、雑誌モデルの仕事だった。
私は、雑誌の話ついでに、ひとりキャンプについて、春馬くんにきいたら、春馬くんは想像ですら、真央をだしていた。
いまはひとりキャンプしてる女子も多くて、真央は、ターゲットになりやすいらしい。
自然を楽しむ場所でも、であいやなんかを大切にするとか、なんか。
ーけど真央を連れていったら、ふたりキャンプだよ?
真央に、愚痴を言ったら、
ーまあ、村上の場合、ひとりでも、どっかのプロみたいなマニアに、捕まってるかもだよ?
って、真央はクスクス笑ってた。真央も春馬くんも、いまのところ、キャンプには、興味ないらしいけど、イケメン先輩は、すきみたいだ。
たまにアウトドア料理を家でも作ってくれるらしい。
定番はビザ?
や、燻製とか?
さっぱりしたものから、こってりしたものまで、手早くつくるらしい。
真央や春馬くんが、
ーイケメン先輩、って呼ぶのもわかる。
外見は、ほんとうに、
ー毛深いゴリラ。
ーだから、野外料理が得意なんだよ?明日菜。
って、真央が笑ってたし、野外活動ならお隣の壱さんも職業柄、するんだろうな。
というか、いまでも春馬くんは、
「夏はキャンプとかあるんだろうね?山や海で」
私は会話をふってみた。だって、春馬くんがいく海には、キャンプ場もたしかあった。
日帰りか、泊まれるかは、知らないけど。
「あっ、明日菜さん。ナイスタイミングです。今度の特集は、アウトドアファッションですよ?渓流とか、山です」
雑誌の記者さんが、言うと、春馬くんは、不思議そうに、けど前をみて運転している。
「そう言えば、明日菜、前もきいてきたよな?俺がキャンプとか、しないのか?って」
「だって釣りは、アウトドアでしょ?だから、なんとなく浮かんだんだ。いまでも、興味がないの?」
「柴原、イケメン先輩と、結婚したしなあ」
ね?
春馬くん。
私は、慣れたけど、
「どうして、また柴原さんなの!」
「痛い!髪をひっばらないで下さい!運転が!」
「痛くしてるの!」
「千夏さん、やめてください。春馬くん、何にも、考えてないですから」
「そうやって、明日菜が甘やかしてるから、いつまでも、浮気性…ではないわね」
千夏さんが、また後部座席に座って足をくむ。
ついでに腕も組みながら、春馬くんをにらんだ。
「説明しなさい、村上くん」
「えー?だって、ウシ様いたら、怖いじゃないですか?そもそも、俺は、自然豊かな地域出身ですよ?福岡わりと都会だけど、自然多いし」
まわりで行きそうなヤツを、想像したら、柴原が酔っ払って騒いでる姿しか浮かばない。
「なら、一応、心配だからついていく?かなあ。それに、とくにキャンプなんか、虫嫌いな明日菜とは、無理じゃないですか?」
真顔で言う春馬くんに、私は一応きいてみた。
「私は、春馬くん、が、ひとりキャンプしないのか、きいたんだよ?」
「えっ?俺⁈だって、田舎そだちだぞ?わざわざ、自然で遊ばないぞ⁉︎少なくても、俺はキャンプ代より、釣り代を払うぞ?そもそも、海の潮まちで、駐車場で寝て待つとかザラだし?」
そう真顔で、春馬くんは言う。
春馬くんの中では、まわりにひとりキャンプしそうな人物が真央で、私が女性用ファッション誌で、モデルしていたから、そんな発想に、なってただけ。
ーは、いまなら、わかるけど。
「ーこれだけは、明日菜が、理解できないわ。どこがよかったの?」
千夏さんか、ため息をついて、私をみる。
「まあ、真央ちゃん限定だけど、恋人は、明日菜なわけでしょう?それにしたら、比重がおかしくない?」
ため息まじりの千夏さんに、春馬くんがめずらしく反論する。
「そこは、無理だとおもいません?距離的に、俺と一緒に、10代をずっと過ごしたのは、柴原だし?逆に、明日菜と10代を過ごしたのは、加納さん達でしょう?お互いの生活ベースが、違ったわけだし。俺と柴原は、最初からー」
春馬くんは、言いかけて、口をとじる。
ー?
「まあ、俺と柴原がいまさら、明日菜抜きで、繋がるラインじゃないですよ?もともと、俺たちはバラバラで、それぞれがPEラインで、リーダーで、ノットですから」
春馬くんは、肩をすくめたけど、それは、私も千夏さんも記者さんも同じだった。
ね?
春馬くん。
ーなんの話?
だったよ?
だって、私たちは、釣りしないから。
そういえば、この前、春馬くんが100円ショップに、PEラインがでたって話題にしていた。
ーまだ、見てないし、値段や種類しらないなあ?
があるらしい。メーターにもよるし。
意外に100きんの方が高いは、いろんな分野である。
最近、1000円とかあるしな。
値段の確認は、必ずいるよなあ?
って、しみじみ言ってたあのラインだろうなあ?
春馬くんについて、釣具屋さんにいくと、すごい細分化してるから、ビックリだけど。
春馬くんにいわせたら、
ー接着剤、べんり。
らしいけど。
ね?
春馬くん。
ー真央とは、接着剤使わないでね?
って、私は思ったんだ。




