序章
「ちょっと、明日菜と川辺に、おりてきます。行こう?明日菜」
そう神城明日菜の旦那さんの村上くんがそう言って、彼女の手を引いて歩いて行った。
その背をみながら、神城明日菜のマネージャーさんが、軽くため息をつく。
「まったく、どうして、いつもギリギリなのかしら?あの子は」
「あの子?」
「明日菜の彼氏よ?あっ、いまは旦那さんか。まあ、細かいことは、いいんだけど。なんというか、もう、まったく、もー?」
「牛?」
私がつい言ってしまうと、マネージャーさんは、軽く顔をしかめた。
なんか様に、なるんだなあ。
キャリアウーマンがやると、わりと、なんかビビる。
うちの編集長みたい?
「村上くんみたいなこと、言わないでくれる?あの手のタイプは、あの子だけで、もうお腹いっぱいだから」
うんざりしてるけど、私は不思議に思った。
だって、
「でも、なんだか嬉しそうですね?」
「そりゃあ、なんだかんだで、私もあの子たちの10年を、みてきたのよ?すごくない?10年って、赤ちゃんが、小学4年生になる頃よ?10代になるのよ?」
「まだ小学4年生ですよ?あっ、でも、ちょっと前まで2分の1成人式とかありましたよね?」
「あったわね。意外と始まりは、ふるいのよね。高学年になる門出?だったかしら?なんで、まわりに感謝するイベントに、変わって行ったのかしら?まあ、コロナもあって、減ったイベントでしょうね」
高学年になる門出、かあ。
たしかに、低学年、中学年、高学年、だと小学生ながらに、自覚はあったきもする。
一年生は、わくわくドキドキ。
2年生は、新一年生がくるから、一学年の差の自覚。
3年生は、真ん中の学年。
4年生は勉強も難しくなる10代になる。
5年生は、6年生を見て学ぶ。
6年生は、新一年生の歓迎遠足から、最上級生の自覚が芽生えてくる。
そして、卒業して、また新一年生になる。
不思議な不思議な小学生だなあ。
私がそう思いながら、視線は、手を繋いであるく目立つカップルをみていた。
「こうやってみると、なかなかお似合いですね?村上くんと神城明日菜」
さっきの真剣な表情は、私でもドキドキしたし、チャンスがあれば、記事にしたいけど。
いや、時がくれば、記事にしていいかあ。
私はバックをあさり、高性能のデジカメをとりだす。
マネージャーさんがあきれた顔になる。
「さすが。雑誌の編集記者ね?」
「事務所公認でいいですよね?」
「それは腕しだいかしら?」
「まかせてください。最新式のカメラですから!」
私が胸をはると、
「…使いこなしてから、いうべきね?」
私は言うべきセリフがなかった。
だって、
デジカメの液晶画面は、ファインダーをみるより、デジタルであかるくて、
ーせつないくらい、やさしい光にみちていたから。




