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第46話

俺は柴原が無事に柴原の家についたことを確認して、安心した。


柴原は、実は、学生時代から、かなり危なかっしい。


あいつは、明日菜より頭だけなら、天才だけど、


ー箱入り娘。


は、わかる。しかも、柴原の実家は、地元や全国的にも有名な和菓子店になる。


ーお取り寄せって、便利だよなあ、


あのレトルト技術も冷凍技術もすごくないか?


関西地区から、明日菜が手みやげで持って帰ってきた、とある中華まんにマジで関心した俺だ、


俺は、味がよくわからないヤツだから、味うんぬんは、おいといて、がっつく、空ちゃん、萌ちゃんをみて、明日菜は、ニコニコしていた。


実はそれまで、宿題が難しいと俺に喚いていたふたりだ。


ー中学年生の萌ちゃんは、ともかく、空ちゃん、まだ低学年だぞ⁈


俺が小学生の頃、こんなに宿題あったかなあ?


なぞにひいた記憶がある。


萌えちゃんは、もう当たり前に、ローマ字で、パソコンうって、国語をこたえてる。


俺は目の前の画面が、アルファベット→ひらがな→漢字になるのを、ただ、感心してみてる。


何回、変化するんだ⁈マジですごい。


うちの会社は、外資だから、キーボードはアルファベット中心。


うちこんだら、そのまま視覚と一致するから、実は助かってる。


ーI can't speak English


だけど、


ーI can write English


な、俺だから。一応、受験は頑張ってた。


けど、もう学生じゃなくなった俺には、わりと衝撃的な光景だ。


たった3年?


めちゃくちゃ加速したなあ、オンライン。


萌えちゃんの姿に憧れて、空ちゃんは、いま、必死にローマ字キーボードを練習してる。


たまに、練習ゲーム機に、ムキになっている。


その声がうるさいと、姉妹喧嘩をしていた。


ー女の子のケンカは、口勝負か?


そういえば、俺は、アニキと喧嘩したかなあ?


喧嘩すら、なかったかな?


ぼんやりみていたら、明日菜が手みやげを、ふたりに温めてだした。


その匂いに反応して、食べた美味しさに感動して、


ー喧嘩がおさまった。


泣いて、怒ってた顔が、一瞬で笑顔になった。


食事って、大事だよなあ。


腹が減っては、戰ができぬ。


ー腹が満たされたら、もう戰しなくて、よくないか?


ハングリー精神は、アングリー精神じゃないぞ?


相変わらず、姉妹喧嘩をみながら、言葉あそびするのか俺だ。


明日菜は、となりでニコニコふたりを、みていた。


軍曹は、凛ちゃんとお買い物で、食いそびれて怒ってた。


たんに萌ちゃんと空ちゃんが、おかわりをせがんで、明日菜が泣き落とされた。


あれをみて、


ー明日菜、ちょろい?


そして、それ以上に、


ー柴原はあやうい。


たんに警戒心の差と、


ー酒癖だ。




「むっらかみ、くーん♪どっこいくのーん?」


そうして、いまタントの後部座席に、ご機嫌な加納さんがいる。


めちゃくちゃご機嫌に、いるけどさあ?


ー乗り物酔い、大丈夫だよな?この人。


お袋のタントが、


ーゲロまみれ、は、勘弁してほしい。


マジで願う。犬ですらファブリー◯しても、大変になる。


「加納さん?大丈夫ですか?」


一緒に飲んでいたファッション雑誌の記者さんが、加納さんに声をかけている。


明日菜と一緒にむかえにきた俺に、びっくりした人は、まだマシらしい。


ーこの場合、加納さんと雑誌記者、どっちが接待側だ?


マジで、なぞだ。


「でも、ほんとうに、どこに行くの?春馬くん」


助手席で、明日菜が大きな優しい黒い瞳を俺にむけてくる。


ーああ、そういえば、明日菜は、にてるのかな?


あの故郷にいる、日本固有の馬に。


いや、それは、ダメだぞ⁈


絶対に、ダメだぞ?


明日菜は、俺だけの宝物だぞ?


ー明日菜がそうだかは、わからないけど。


…わからない、けど。


「春馬くん?」


明日菜が少し心配そうに、俺をみてくる。


が、大丈夫だ。


後頭部を運転中なのに、頭をベチって殴られた。


「うちの明日菜に、心配かけるな!」


「ちょっ!あぶないですよ?加納さん」


「この子には、ちゃんと、言葉で教えるが、大切なの!うちの明日菜を、泣かせるな!悲しませるな!」


もう少し大切に、しなさい?


あとは、こんこんと俺に対するお説教が始まった。


いちいちその通りだから、黙ってたら、


「きいてるの?まあ、きいてるから、黙ってるんでしょうけど」


俺の頭をペチペチしていた加納さんがため息をついて、また、どさっとタントの後部座席に座る。


「明日菜もその目をやめなさいよ?あなたの無言の眼差しは、怖いんだから」


えっ?明日菜。


チラッと助手席の明日菜をみたら、ちょっとスネていた。


「だって、気やすく春馬くんに触るんだもん。私が手をおくだけで、春馬くん注意してくるのに、千夏さんには、触らせてるんだもん」


最後は、俺に対して怒ってるらしい。


「ーなんで?当たり前だろ?明日菜じゃないだろ?まあ、危ないなら、注意するけど、別にいいだろ?明日菜じゃないし?」


「なんで、私はダメなの?」


「だって、ギア危ないし?加納さん、無害だし?」


「どきどきとか、ないんですか?映画みたいに?」


記者さんの言葉に、考えてー。


「いや、ギアは、あぶないから?やめてくれ?」


だって、それが、結果的に、明日菜を守るぞ?


「なんか、想像とちがう旦那さんですね」


ため息まじりに、言われた、俺。


俺は、どんな旦那なら、よかったんだ?


ただ、明日菜は、雑誌記者さを振り返って、にっこり笑った。


「私のいちばん大切な人です」


…ここでもいうのか?もはや、すげーな?明日菜。


「あー、このふたりに構うと、ろくなことないから。で、どこに行くの?村上くん」


加納さんが俺にきく。


「もうすぐ、つきますよ?」


「なんかすごい、田舎に来たけど?」


まあ、さっきまでの福岡都心部にくらべたら、灯りが少ない。


暗い道の途中にくっきりと、信号機の青色とおなじ色が「空」と記されたパーキングがある。


よかった。空いてた。


俺はウィンカーをだして、言った。


「目的地につきました」


と。

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