SS. ねぇ?先輩。
ねえ?
先輩
ゴリラみたいな、先輩を、初めて見た時、私の感想は、
ーあっ、この会社って、ゴリラがいる。
だったんですよ?
ストレートに、そう思ったんですよ?
だって、
ーゴリラだよ?
身長も高いけど、横幅もなんか、ずんぐりしてて、顔は四角いし、短髪なくせに、あごひげでさ?
ー毛深いし?
まさしく、ゴリラに見えたんですよ?
ねえ、
先輩?
私は自分でいうのも、なんですけど、私ってね?
ー美人で才女なんです。
大人気女優の親友のプロダクションに、コンテスト受けないか?って言われるくらいには、美人なんですよ?
ちなみにその親友は、コンテストなんか関係なしに、スカウトで、そのプロダクションに入りましたけど。
その親友の彼氏と私は、腐れ縁で、なぜか、就職先まで同じなんです。
私の第一志望のの会社だったんですが、アイツは、東京を希望していたんですよ?
ー親友が東京にいるから。
ねえ?
先輩。
なのに、とても運命は皮肉なんですよ?
やっと、腐れ縁がとけると思ったのに。
まあ、アイツと私は腐れても異臭で縁が切れないとは、思うんですけど、
あっ、
ねえ?
先輩。
いま、もう腐れてる縁だって、思ったでしょう?
ねえ?
先輩、
どうして、鼻をつまみそうに、なるんですか?
ほんとうに、不思議な人ですね?
コロナでの移動制限で、私とアイツは、そのまま大学のある福岡支社に、配属されました。
ねえ?
先輩。
先輩は、私たちが福岡出身じゃないことに、気づいてましたか?
ねえ?
先輩。
アイツは、私は、先輩の目にどううつりますか?
ねえ?
先輩。
先輩はきちんと、私たちのプロフィールや性格を覚えてくれてましたね?
私は、配属先が違いましたけど。
ねえ?
先輩。
そうしたら、アイツの指導者に、
ねえ?
先輩。
先輩が、なってましたね?
コロナ禍で、私とアイツだけが、今年は新入社員で、変人だらけの福岡支社に、配属されたんです。
ねえ?
先輩。
私の第一印象は、
ーゴリラ。
だったけど、先輩は女キライというか、女性恐怖症といか、よくわからなかったんですよ?
私とアイツは、仲がいいから?
アイツの彼女は、有名人だから?
なによりも、コロナだから?
ー逢いたくても、逢えないんですよ?
もう、天の川なんかじゃないんですよ?たくさんの、
ー逢いたい。
が、世界中に、あったんです。
そんな世界がですね?
まだ日常になって、しばらくしてから、でした。
私は、親友の神城明日菜よりも、ずっと近い距離で、アイツ、村上春馬のそばにいたんです。
私たちは、同じだから。
私たちは、唯一無二の存在だから。
ねえ?
先輩。
先輩も明日菜も私や村上には、とても特別なんですよ?
ただ、私と村上を、
ーありのままに、
ー当たり前に。受けとめて、くれてますね。
それが、ね?
ほんとうに、私や村上には、ありがたいんですよ?
私は、となりで眠るゴリラの毛深い腕に、そっと身をよせて、
ーそのにおいに、顔をしかめた。
においに、強烈な吐き気がおそう。
思わず口を抑えてトイレに駆け込むと、
「ーだから、近づかないでって、言ったのに。大丈夫かい?いや、大丈夫じゃないのは、わかるけど?」
この体臭スプレーも、ダメかあ?って、ゴリラがしょげてる。
ねえ?
先輩、
私には、判断がいつもつきません。
言っていいのか、わかんないんですよ?
ただ、黙っていますけど?
はやく、そのいろんな種類の匂いスプレーを、どうにかしてほしいって、思っちゃうのは、わがままですか?
それとも、私が動物用の天然素材の芳香剤を、買ってきたらいいのかなあ?
ーペットショップで?
ねえ?
先輩。
そうしたら、先輩は、落ち込みますか?
私の特別な、シルバーバッグ。
私のたいせつな、アイツのシルバーバッグ。
ーアイツは、空に輝くいちばん星のVenus親友の明日菜。
ねえ?
先輩。
私が大人気若手女優の神城明日菜と親友だって、打ち明けたのは、
ねえ?
先輩。
じつは、先輩がはじめてなんだよ?
明日菜も私の特別な、明日菜の彼氏の村上もさ?
ねえ?
先輩。
不思議なんだ。
ほんとうに、不思議なんだよ?
不思議なほど、隠してないのに。
こんなにネット社会なのに。
ううん、だから、かな?
ねえ?
先輩。
ふたりはまったく否定してないのに、いつだって、明日菜や村上の真実は、嘘にまぎれてしまうんだ。
ねえ?
先輩。
だから、私は、
ー黙ってみていたんだ。
ねえ?
先輩。
私には、よくわからないんだ。
私はずっと2人をみてきたんだよ?見てきたけど、
ーわからない、んだ。
10年も続いている恋が、
10年もお互いしかみえない恋が。
明日菜が映画館の巨大スクリーンでさ?
ラブシーンを演じる度に、私の踵の尖ったハイヒールでさ?
ー脛を蹴り飛ばされ、痛みで、悔しき泣きを誤魔化すアイツの気持ちも。
ーアイツを傷つけたくないくせに、私の知らない誰かの想いを受けついだ明日菜の想いも、
ねえ?
先輩。
私には、ほんとうに、
ーわからない。
ただ、ふたりを、ううん。
村上をみてきた10年、だったんだ。
そこに恋愛感情は、いっさいないけど、
ねえ?
先輩。
先輩も誤解していたね?
私と村上が恋人だって、
腐れ縁の両片思いだって、よく言われてだけどさ?
ねえ?
先輩。
ーくされ縁の両、片想いは、さ。
明日菜と村上なんだよ?
ねえ?
先輩。
そんな村上は、ゴリラみたいな先輩を、
ーイケメン先輩。
そう呼ぶからさ?
ー私もうつってしまったんだ。
だからね、
ー大好きな私の、
ねえ?
ーシルバーバック。
大好きで、
愛してるよ?
先輩。




