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SS 分光器

春馬くんが真剣な顔で、プラスチックの、やわらかなボールと睨めっこしている。


手には、黒いビニールテープとハサミと縫い針。


あとは、


「ーなんの音楽を聴くの?」


CDを持っていたから、つい私はきいた。


春馬くんの少し茶色がかった瞳がキョトンとなる。


ね?


春馬くん。


やっぱりさ?


私は、


ーかわいい。


そう思ってしまうんだよ?


もう23歳だぞ?ってすねるから、言わないけど。


キラキラした少し茶色がかった瞳が、好奇心に輝いてる。


ただ、この目をしているときは、私はたぶん、放置されて、真央とある種の遊びに、夢中になっていくパターンだ。


今日は真央はいないけど、私は苦笑する。


「それとも、なにかをつくるの?」


CDだから、もう予想はつくけど、いつもは、紙コップや箱なのに。


そう不思議に思ってたら、


「いつものやつだよ?明日菜もつくる?」


「ううん。私はお昼つくるね?何がいい?」


「うま○っちゃん。あっ、ピリ辛高菜味でよろしく」


相変わらずのご当地ラーメンのリクエスト。


朝から食べたがる時もあるけど、お昼にだいたい食べるから、朝は禁止してる。


ー絶対に私のいない日は、食べてるけど。


だって、棚の中のラーメンが減ってる。


春馬くんは私の食べるものには、注意するくせに、自分となるとチグハグになる。


真央も、


ーひとりぶんの食事は、めんどくさい。 


そう言ってた。


イケメン先輩と結婚する前の前は一人暮らしで、元カレなんかは、


ーカツ丼かんたんに作って?


そう言われて、真央は、冷凍庫にあったお弁当用の小さなトンカツを電子レンジでチンして、卵とめんつゆで味付けしたらい。


彼氏は怒ったらしく、結局は、春馬くんにお裾分けしたらしい。


お裾分けが、真央らしい私への気遣いだ。


だって、ようは手作りのお弁当だったんだよね?


あとは、そんな細かい彼氏だから、わざわざ冷凍食品を、別れるために、買ってたんだろう。


このインスタントラーメンに同じミニトンカツをいれたら、春馬くんはー。


ーうわっ!豪華だな⁈


ね?


春馬くん、私はやっぱり、笑うんだよ。


お湯が沸いて、ついでに、ゆで卵もゆでて、スーパーの辛子高菜もべつにお皿にだして、春馬くんを振り返る。


作り慣れた春馬くんは、もう適当であわせてる。


ちょうどできたらしい。


きれいな野球ボール状の分光器。


「できたよ?明日菜?きれいだぞ?」


無邪気に笑って、黒いビニールテープだらけのボールを持ってきて、


「うわっ!めちゃくちゃ美味そう!ありがとうな?明日菜」


「手を洗ってね?」


「うん。あっ、これ、ラーメン代」


洗面所に移動しながら、私にボールをくれた。 


小さな1センチ角ののぞき穴からみるまでもなく、分光はしてるけど。


私は、そののぞき穴から、真っ黒な球体をのぞくんだ。


球体にしたら、まったく違う世界がひろがる。


天井や横がわからない。


真っ暗な世界に、いろんな光の、


ースペクトラム。


ね?


春馬くん。


たくさんの光のスペクトラム。


きれいだね?


だから、


私は、


ね? 


春馬くん。


今日も笑うんだよ?




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