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ある日、玄関をあけたら、とある飲料水の匂いがしてきた。
彼だ。
私の大好きな春馬くんが、キッチンにいる。
一緒に暮らしてわかったけど、春馬くんの場合、発想はおかしいけど、味覚は合ってる場合が多くて、びっくしている。
ーわりと、美味しい。
もちろん、それでも、私は春馬くんのあのお魚だけは、食べないけど。
甘いにおいが、ただよう部屋で、
「あっ、おかえり、明日菜?」
春馬が笑う。
春馬くんはエプロンしないで調理する。家庭料理だから、いいのかな?
そもそも春馬くんの場合、着る物はどうでもいいみたいだし。
春と秋は同じ服を着ている。ようは、半袖Tシャツに、パーカーだ。
たいてい色違いで買う。
昔からそうで、
ー村上が楽なら、いいんじゃない?
真央が言ってた。だから、そんなものかな?と私はみている。
私、自身があまりブランドや着るものに固執しないけど、固執することも悪くはない派だ。
だって、それを買うことでモチベーションがあがるなら、相当な心理的な価値がある。
まあ、わたしにはないけど。
だって、
「ただいま」
料理している春馬くんの背後から、抱きつく。
ああ、春馬くんのにおいだよ?
あの大都会から、やっとまた戻ってきたよ?
大都会は大都会で好きだし、大切な人ばかりだけど、
ーやっぱり、私は、いちばん落ち着く。
けど、鍋を見て顔をしかめた。
なんか鍋に黒つぶつぶの泡が出てる。
ー春馬くんには、悪いけど、
不味そう。
「失礼だな?居酒屋マスター歴史らしいそ?コーラー沸かして、生姜と醤油で煮る煮豚」
「煮豚って、角煮でしょ?」
「つのねえし、煮豚でよくね?」
いわれたら、たしかに。でも、
「何でコーラー?」
「きいたらやってみたくて、いま新生姜が、きれいで安くてさ。いれすぎたら、ほら?」
おたまですくって、小さな新しい小皿に入れてくれる。
色は、金色?無色にちかい?
おそるお口をつけたら、
「ジンジャエール?」
「だよなあ。いれすぎたな、生姜」
春馬くんが首を捻ってるけど、だれがそもそも考えたのかな?
南九州の片田舎にいる母は、祖父母の介護になにか思うところがあったらしく、最近、
ー初任者講習をうけてる、
昔はヘルパー2級とからしいけど、人手不足とともに名前だけ変わって行った制度。
まあ、細かい部分では、零細企業の人手不足に役立つけど。
ー明日菜、煮るって、万能よ。
そう少し疲れた顔で笑ってた。大変らしい。
たくさんの家庭のもので調理する。大変らしい。
お母さんは、パートだけど、時間をオーバーするらしい。たまに、ヘルプもくるらしいが、基本的には、お母さんが慣れないといけないんだけど。
ー明日菜、食材がじゃがいもしかないとき、昼夕なにつくる?
ー卵とまぜてー。
ーじゃがいもだけだよ?
つかれた顔が、苦笑してる。
お母さん的には、じゃがいもで助かったらしい。
たいへんだなあ?
っ私は、聞いていたけど、
「明日菜!大失敗したから、インスタントでいい?」
真っくろになった物体をまえに、春馬くんが言ってた。
焦がしたらしい。
「私がなにかつくるよ?」
「じゃがいもしかないぞ?」
野菜室にじゃがいも、だけで、私はさっきのお母さんの会話を思いだしていた。
食卓テーブルには、じゃがいも煮。ポテトサラダ、コロッケ、味噌汁がある。
「すげーな?明日菜?すぐに嫁に行けるぞ!」
「もう春馬くんと結婚してるよ?」
「あれ?」
「どれ?」
「それ」
私はため息をついてソースをとって、そして笑ってた、
ね?
春馬。
私は今日も、こんな細やかな日常がね、
ーただ、嬉しいんたよ?
コーラーに新生姜入れすぎたら、
ージンジャエール。
だっだけど。