S.S
高二の夏休の秋のシルバーウィーク。
生徒会室には、俺と柴原しかいなかった。
空はカラッと晴れていたけど、もうすぐ台風がすごい速さでくるらしい。
とある南九州の片田舎。
「やっぱり、台風かあ」
柴原がスマホのウェザーニュースをみながら、唸っていた。
「なにもこんな時に、こなくても良くない?」
「たから、お前だけでも、行ってこいよ?」
「あんたを差し置いて、私が行っても仕方ないでしょ?」
「それこそ仕方ないだろ?台風だぞ?」
「間が悪いわよねー」
「だなあ?」
俺は晴天の南九州の片田舎の空をみあげる、
雲の流れははやいが、まだ晴天だ。
あの雲の上をいま飛行機で明日菜が移動している。
ー福岡空港まで。
「「はあー」」
俺と柴原の口からため息がもれる。
柴原が、窓により、窓をあけた。
秋だけど、少しまだ生暖かい風だ。
台風だし?
窓ガラス外をのぞいてぶらぶらしてる。
「落ちるなよ?」
「落ちないし、そういう微妙な高さだけど、さあ。明日菜に逢えると思ったのに」
「仕方ないよなあ。台風が逆直撃ってほとんどないしな」
台風は南から北上していく。逆は、絶対にないかは知らないけど、ほとんど聞いたことない。
明日菜は福岡のイベント後、本当なら、
帰省してた。少しでも俺たちと逢いたいと。
柴原がいうには、明日菜の両親と姉は車で福岡に行ってるらしく、柴原も誘われたらしい。
「お前は、いけただろ?」
「明日菜は、あんたに、逢いたいんだよ?」
また沈黙がおりて、俺たちは、ただため息がでた。
南九州は台風が大きくわりと直撃で、巨大な勢力がまだ保たれてる。
明日菜も福岡のイベントが終われば、すぐとんぼ返りだ。
電話口で、
ーごめんね?春馬くん。
しょぼくれていたけど、仕方ない。
明日菜が無理して、南九州の片田舎に来る方が心配だし。
台風は事前に気象予報がでる数少ない自然災害だ。
それたら、ラッキー。注意喚起は、年齢層により受け取り方が違うけど、
佐賀の基山町なんかは、高齢者のためまだ風がゆるいうちに、避難指示をだしていた。
市役所勤の親父もなんにちかとまりこんでる。
仕方ない。それれば、ラッキーなだけだ。
頑張ってる人たちがいて、足を引っ張らないようにしないと。
「むりしてハラハラするより、いいしな」
「だね。そろそろ帰ろうか?」
「ああ、その窓でラストだしな?」
柴原がしめた窓ガラスに、ふといテープをばつ印にはる。いや、米、か?
台風前に窓の補強に駆り出された俺たちだ。
「さ、帰ろうか?」
柴原に促されて生徒会をあとにする、
グランドにでたら、わりと風がでてきてる。
「もう少ししたら、交通手段がなくなるね?」
「まあ、とまるよな?お袋の運転で外出したくないし」
「明日菜の家族は福岡に泊まって台風やり過ごすって」
「無難な判断だよな。まあ、家族に逢えるし明日菜がぶじなら」
「「いっかあ」」
俺と柴原の声が重なった。
逢いたいけど、心配だけど、
ー台風は進路がでる貴重な自然災害だ。
それたら、ラッキーだよ?
ただ、泣く明日菜とさっきテレビ電話をした。
久しぶりにみた明日菜は少女から、大人へと変化していく。
俺は、まだ明るい空をみる。
雲がはやい速度で移動するけど、まだ雲はうすい。
なら、安全に福岡から東京に帰れるだろう。
前歯で小さく下唇をかんだ。
明日菜が無事なら我慢しろよ?俺。
ただ、無事なら、いい。
そう願ってた、