彼女とマネージャーと記者と。
私は明日菜の不満そうな顔に苦笑して、雑誌のインタビューをうける様子をみていた。
あの復刻版の時計のCMの反響は、すごかった。
キスシーンの相手は、明日菜の結婚相手の村上くん。
彼のためにも隠していない。そもそもあのキスシーンは、明日菜が演技をしていない。
あの日の映像を、ただ編集してる、
ナレーションは違うけど。明日菜はたくさんの感謝と願いをこめて、ただやさしい声で語りかけていた。
明日菜には、声優としての依頼も増えている。
ナレーションも増えている。
けれど、私や事務所は、新婚を理由に、明日菜の仕事を慎重に選んでいる。
そして、明日菜や優菜の経験を経て、社内で会議がすすんでいる。
タレントをネットの誹謗中傷から、守るための取り組みだ。
もちろん、タレント側にも発言には、自分で責任を持たせる。
片方だけを安易に保護はしない。新しい取り組みになる。
ただ巨大なネット社会に挑んでいくしかない。
いくらだって抜け道はできていく。けれど、必要になって行くだろう。
優菜は逃げ出せた。明日菜は、ギリギリだった。
いつか明日菜の大切な後輩に、いわれた言葉が。
ーどうやって、守ってくれるの?
あの哀しみと、怒りとら諦めた瞳が、いまも忘れられない。
あの時の言葉を、ちゃんと、うけとめるために。
けど、きちんと、自分の頭で考えて、そして、まわりの意見もみながら、発言できなくちゃ意味がない。
ー聴く力と言う力を育てる。
そう言われたけど、
ー二つ同時にやるの?ただでさえ、疲弊してる子たちに?
わかるけどー。
まあ、そうだろうなあ。
けど、頭できちんと考える。は、勉強だけなの?
ぶっちゃけ、ドリルに答えがあるから、うつしてるよ?
ー公園で。
なるほど、ある意味ちゃんと、考えてる。ならいいんだろなあ。
いろんな考えがある。だから、それでいいんだろう。
いろんな、考え、がある。
なら、考えている。
私の事務所も村上くんたちのプロジェクトに参加する。
まだまだ先の話には、なるだろう。私たちは、動かないといけない。
大切な子たちを、守るために。
けれど、守りすぎない、ために。
村上くんたちのプロジェクトは、まだまだたくさんの壁がある。
いろんな意見がある。そのひとつひとつを予測し、尊重しながら、すり合わせていく。
ー突然の変化は、コロナや自然災害だけで、いい。
いきなり、はムリなんだ。
少しずつ、ほんとうに、少しずつ、
一歩すすんで、二歩下がっても、いいんですよ?
明日菜の、あのよくわからない大切な子は、そう笑った。
ーだって、後ろにゴムがあるかも知れない。
いや、バネがあるかもしれない。
なら、ぎゅーと背後に力をいれていて、
ービョーン!
って、大ジャンプできる。
そう言って、けど、顔をしかめた。
ーウシ様だけは、嫌だな。
その発言は無視したけど。
あの子の頭の中は、いまひとつわからないけど、まあ、前向きなんだろう。
まったく、私の大切な子は、ほんとうに特別だとつくづく思う。
ーしあわせに、なってほしい。
たくさんの事を我慢して、傷ついたぶん、幸せに、なってほしい。
ー笑っていてほしい。
まあ、いまは、笑ってるか。
馴染みの雑誌記者と楽しげに、幸せそうに笑っている明日菜をみて、
ー意味ありげに、私をみる記者の視線に、苦笑した。
今日は、たまたま、結婚裏話だけど、彼女は元々、明日菜がモデルをしているファッション誌の記者だ。
10年前は、まだまだ新人だったけれど、いまや発言力もある立場だ。
なにより、明日菜をら見守ってきた人間のひとりだ。
それならー。
私のスマホが振動し、メッセージがとどいた。
私はその内容に、苦笑した。
ーようやく気づいてあげたらしい。
まったく、
「まだまだ世話がやけるわ」
ただ、苦笑した。
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続きはR15にしているため別話になります。
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