彼女とPENTAX。
食器を片付けて、洗顔と歯磨きをして、普段着に着替える。
迷ったけど、とくに、外にでかけるつもりもないから、ノーメイク。
私は、メイク前も、メイク後も、あまり変わらない。
もちろん、年齢より幼いメイクや、逆に年齢より上にみせるメイクは、演じる役によりするけど。
まだ、若々しくみせる必要は、あまりない。
ただ、後輩たちと比べると、やっぱり、いろんな意味で、かなわないとは、思う。
若々しさが違う。けど、まあ、あんまりメイクで違いはまだ、ない。
ーあまい考えは、いまのうちよ?明日菜。
千夏さんやメイクさんから、スキンケアはもう耳にたこができるくらい、きいている。
だから、自然ともう習慣として、やってるけど。
私は鏡にみなれた自分の顔を、じっと見つめてしまう。
千夏さんのおかげで、私のスキンケアは、完璧にちかい。
そもそも私は、健康な身体に生まれてる。
南九州の片田舎育ちだけど。空気はいい自然にあふれた場所で育った。
そして、大都会の東京に13歳で、でてきた。
なら、うーん?
私は、どっち育ちに、なるのかなあ?
出身地は、南九州の片田舎。
真央は、私の同級生だけど、私の卒業したのは、違う中学校になる。
春馬くんや真央と、おなじ修学旅行の思い出を、私たちは、たしかに一緒に過ごしたけど、違う中学校の卒業生。
私の卒業アルバムには、春馬くんや真央はいないけど、春馬くんや真央の卒業アルバムには、私がいる。
というか、ネットに、たくさん出回ってる。
ーそれをみて、みんな、どうしたいのかなあ?
ふつうに、みんな写真写りなんて、いつも違うよ?
とくに集合写真なんてそうだろし。フラッシュに目を閉じてしまうは、もう本能だろうし?
フラッシュが怖い子なら、一生懸命に目をあけるから、へんな表情になるよ?
だって、ふつうにチカチカするよ?
真央が出産してから、赤ちゃんを毎日、スマホで写真や動画を撮ると言っていた。
私は親バカだなあ、って思ったけど、真央は、
ー面白いくらい毎日顔が変わっていくんだよ?猿みたいな顔から、人間になっていくんだよ?進化の過程だよ?リアルだよ?
…やっぱり、真央と春馬くんは、おなじなんだなあ。
って、思った。というか、まあ、たぶん、口にしたら、
ーまた怒られるよ?
だって、真央からの写メをみて、春馬くんは、同じ感想を、もっていたから。
ーおおっ!猿が人間になっていくぞ?だから、あかくなくなるのか?赤ちゃん。
私はノーコメントで通したけど。
春馬くんはニコニコ笑っていた。そして、
ーゴリラどこだ?
イケメン先輩を探していたけど、私もまだどっちに似てるかは、わからなかった。
だって、真央もイケメン先輩も赤ちゃんの時を知らなかったから。
ね?
春馬くん。
春馬くんは、ただうれしいんだね?
そして、はりきって、いつか、を、願って、いろんなカメラを、調べていた。
それくらいに、子供達の成長は、はやい。たくさん成長していく。
ーもちろん、顔立ちだって、変化する。
純子さんがしみじみと言っていた。
萌えちゃんが、はじめて、女の子の日になった時に、ううん、それ以前から、女としてのやわらかな、まるみをおびた身体つきになっていくとき、
ー成長は、嬉しいけど、複雑だった。
純子さんじゃなく、壱さんがそうもらしたらしい。
壱さんの大切な姪っ子。壱さんの大切な義理の娘。
亡くなったお兄さん、零さんのたいせつな忘れ形見。
たくさんの複雑な感情が絡み合って、それでも萌えちゃんは、ちゃんと成長していく。
それは、たしかに空ちゃんや凛ちゃんとは、壱さんにとっては、違う成長で、萌えちゃんは、やっぱり、どこか他の子とふとした時の表情が違う。
私の大切な後輩たちの卒業アルバムをみたことがあるけど。
ーいまよりは、幼いなあ?
くらいかなあ。まあ、当たり前に、年齢分だけ顔が違う。
顔立ちは丸みをおびてる。
し。まあ、整形は、ふつうに疑うひともいる顔立ちだと、私も鏡の自分をみて思う。
思うけど、それが、どうしたのかなあ?
永久脱毛と、なにが違うんだろ?
歯科矯正や歯を白くする施術と、なにが違うのかなあ?
そりゃあ、その人が入ってる宗教とかなら、まだ意味がわかるけど。
本人たちが卒業アルバム公開なら、わかるけど。
というか、逆にー。
ーまあ、いっかあ。
たぶん、まあ、いろんな考えが、あるんだろうなあ。
そもそも私や春馬くん、真央が平和主義かと言われると、絶対に、違う。は、わかるしなあ。
あの野良猫みたいな後輩からは、よく心配されている。
あの子がみてきた世界は、たぶん私には、わからない。
わからないから、しあわせに、なってほしいなあ。
そう思うんだよ?
知らない世界は、きっと、知らなくていい方がたくさんある。
すべてを知るなんて不可能なんだ。人間の脳なんて、そんなもんだよ?
そもそも、ちいさな島国を世界中が知っているは、間違いなんだし。
ーアスナ、カミジョウ。
そうひとことつぶやけば、私の情報はたしかに、世界から集まるけど。
そこは単にそういう環境があるから。
なにより、私を知ってる前提でしか、調べない。
だから、みんなが知ってる気になる。
世界地図は、当たり前に島国中心だから、まあ感覚的にそうなる。
けど、地球儀、からみたら、違う。
地球儀は春馬くんが、大好きなもののひとつ。
私は、ふと春馬くんの部屋にある1970年式フルマニュアルのペンタックス、カメラを手にとる。
その時代を語りつぐ歴史。フルマニュアル、フィルムカメラ
いまでもフィルムは、ふつうに手に入るし、カメラ屋さんで現像できるし、プリントはスマホで先に確認ができる、
昔とは確実に違うって春馬くんは、言ってたけど、
ー面白いよな?うっかり、一瞬でデリケートは、同じだぞ?
だって、フィルムカメラも、うっかり、ひかりにかざすとパーになる。
バックアップはとれない。って、おもしろそうに、春馬くんは笑うけど。
ね?
春馬くん。
スマホ嫌いの春馬くんらしいね?
デリケート前に、全機種じゃないけど、デリケートしますか?
って、でるよ?
フィルムのネガより、ずっと、やさしいよ?
だって、フィルムは、容赦ない。
光がはいれば、いっぱつアウトで、
ーフィルムをいれて、なかった。ラッキー?
は、たまにある。
私はクスクスと笑って、そのカメラの重みを確認した。
いまのカメラと比べると当時の人気モデルもやっぱり重たい。
ほんとうに、フルマニュアル。
鉄くさい匂いが独特で、私は不思議な気分でファインダーをのぞいた。
古い時代のにおいと、とれないカビにファインダーが少しみにくい。
私の手には、ずっしりと、重いけど。
いまは軽量のスマホでもズームが自由にきく。
顔認識してくれる。
ーああ、不思議だね?
ーたくさん、不思議だね?
これが真央や春馬くんのみている世界のかけらなのかなあ?
すべてをフルマニュアルで計算して、やっと、鮮明に世界が映る。
でもフィルムに光がはいると、フィルムはデリートされる。
ーならフィルムを、いれなければ、いい。
フィルムなしで脳に、焼き付けていけばいい。
ー消せない記憶には、痛みがともなう。
けど、光が入れば、フィルムには、残らない。
私は春馬くんの言葉を思い出して、クスクス笑った。
春馬くんから、教えてもらって、使い方はわかる、
どうしても掃除できないレンズにのこるカビも視界に入るファインダーをのぞいて、室内をみてみる。
ファインダーの世界が、洗濯機をとらえる、
たくさんの進化していく中で、たしかに洗濯機はべんりだなあ。
あっ、洗濯しよう。
それに、お掃除も。
あれ?
そういえば、あの三種の電化に、電化製品の中に、掃除機ってないなあ。
そもそもカーペットがないなら、まあ、ほうきと雑巾でいけるのかあ。
いまはコロコロもある。
ー独自の進化をしたんだなあ。
しかも、ロボットが掃除してくれる。
たまに実家の犬がにげまわるらしい。
自分で自動掃除機の上に乗って、ボタンが押されてスイッチがはいる。
コントみたいになるって、お母さんが笑っていた。
南九州の片田舎。もう夫婦ふたりの生活。
お姉ちゃんは近くにいるけど、ひとり暮らしをしている。
ー不思議よね?新婚時代とも、子育て時代とも、違うのよね。
そうお母さんが笑っていた。うちのお母さんは、お父さんと同じお墓にはいる。
ーでも、まわりは、どうかしらね?
クスクス笑っていた。知らぬは、旦那さんばかり。
ーかなりの数で多い。
というか、私の周りに、墓に一緒に入りたいは…。
純子さんが、いるかあ。
ちなみに春馬くんは、
ー自由にしたらいい。
最初から、言われた。言われると不思議と、反発したくなる。
というか、あまりに真剣に言われて、びっくりした。
けど、そういえば、私たちの故郷の、南九州の片田舎。
ふつうにお墓は、たくさんある。だって、都会と違う。
土地がある。
むしろ過疎化になっていくから、無縁仏も増えていく。
って、きいた。春馬くんは、次男だけどおじいちゃん子。
おじいちゃんにあいによくお墓にいくらしい。
けど、
ーコロナで、行けない。
って、言っていた。春馬くんにとっては、お墓にあいにいく。
お墓はまいりとは、ちょっと、違うらしい。
私には、よくわからない。というか、うちにはお仏壇があった。
お墓参りとお仏壇まいりの違いを、とくに意識したことがない。
春馬くんは、お仏壇がよくわからない。遺影はあるけど、
ーじいちゃんいない。
春馬くんにとって、お墓に骨壷がある。その光景がすべてだって言っていた。
私には、よくわからない。
あんまり、気にしたことがない。というか、それが私たちの年代なら、一般的な感覚だろうと思う、
ーお兄ちゃんは、ちがうのかな?
ふと、お兄ちゃんを、おもいだした。けど。
たぶん、うちの家の宗派もわからない、は、共通かなあ。
エンディングノートかあ。
よくいうなあ。
なら、
ーウェディングノートも意味があるんだろうなあ。
バージンロード。
私はお父さんと歩いてないなあ。結婚式もたくさん、延期になったのかなあ?
コロナで一年ずらした早生まれの子の七五三。
有名な神社。多忙すぎたし、密集回避かなあ。
七五三と結婚式がごっちゃで、
ーすごい体験した。
たまたま目にしただけか、コロナのせいか。
まあ、どっちも、
ーメデタイ。
私は、春馬くんと萌えちゃんのじゃれあいを思い出して、クスクス笑った。
笑いながら、ファインダーをまた覗く。
スマホとは違う景色のファインダーの中の光景。
フルマニュアルの半世紀まえになるカメラ。
スマホは、カメラやいろんな機能はついて、もちろん、そういういろんな家電ロボットのコントロールは、してくれるけど。
ースマホは、掃除も洗濯も、人間ができない手でする家事や仕事は、代行できない。
ーほらみろ?明日菜?やっぱり、人間の勝ちだ。
そう春馬くんが笑ってたなあ。
そもそもスマホ相手に、勝ち負けにこだわって、どうするんだろ?
相変わらず、春馬くんの考えは、意味不明だなあ。
とりあえず、全自動洗濯機。
ーやっぱり、すごい、便利だなぁ。
で、もし、うっかりスイッチ入れ忘れても、スマホで操作できるなら。
ースマホの勝ち?
って、悩んでた。
ね?
春馬くん。
ーひきわけ、って言葉知ってる?
って、思うけど。
きっと、違うこたえをだすんだよね?
私はクスクスと笑ってた。
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