表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

181/652

⑱ 彼氏とスーパースター双子のあの土管。

俺はパソコンの画面を、じっと見つめていた。


貴重な東京とのオンライン。


明日菜がぼんやりした瞳で、また、ふとねむりについた。


ベッドの上で、壁に寄りかかりながら、ただまた、うつらうつらしている。


明日菜が寝ていた。


初めて会う明日中のお母さんが、心配そうに画面越しに言う。


「ずーっと、こんな調子なの。私たちが声をかけたら、ふって、目は私をみるんだけど、笑うんだけど」


ーだいじょうぶだよ?


人形のように、そう笑う。


かなしそうに、明日菜のお母さんは、言った。


「まるで、ふかい底なし沼に、いるみたいな気分よ。どんなに手を差し伸ばしても、明日菜は拒否してる。明日菜がみずから、どんどん沼に、入っていくみたい」


なるほど。


そういう考え方もあるのかあ。


俺は、じっと眠る明日菜を見つめる。


こちらのカメラは切っているから、明日菜が俺の顔を見ることはないし、明日菜のお母さんには、イヤホンマイクをつけてもらっている。


便利な時代だ。福岡と東京で簡単に、自宅にいて、生中継できる。


俺の親父の時代は、歌番組の生中継でさえ、いろんなトラブルが、たまにあったけど。


生中継、ってテレビだけかと思ってたら、いまは、LIVE映像とかいうらしい。


どんどん横文字になっていって、不思議なことに、小説まで横書きだ。


そうなると、たまに小説によっては、縦書きが原文だと、ちょっと、おかしくなる。


だって、横書きを基調に、表現されるから。


たまにネット小説で、ああ縦書きの記述を守るから、いい作品だけど読みにくさがくるのかあ。


は、ある。柴原が試しに、横書き小説を縦書きにしてみたら、


ー違う印象になった。


俺も見た目でわかった。


で、まあ、どっちも、あり、なんだろうなあ。


視覚優位な俺には、不思議な縦書き、横書き。


けど会社の書類で縦書きって、あんまりないよなあ。


いろんな文章のほとんど、横書きだしなあ。


じゃあ、いま寝ている明日菜の夢は、どっち書きで、文字や言葉は流れてるのかな?


そもそも言葉や声、音は、文字にすると無限にひろがるけど、


いま話している言葉は、声なんだよな?


だれが決めたかわからないけど、


ーべんり。


そして、俺の頭が絶好調に、今日もぐるぐるまわってる。


明日菜のお母さんは心配しているのに、俺は明日菜がみている夢で、見当違いなことを考えている。


だってさあ。底なし沼ならさあ。


「なら、底なし沼の底には、きっとあの土管がありますよ?」


「はっ?」


「毎日、歯ブラシしてるから、ピカピカですよ?俺」


「………」


雰囲気は明日菜によく似ているけど、やっぱり、明日菜じゃない。


白い目で見られて、俺は明日菜を見つめる。


ほら?みろ?


ー俺につきあってくれるのは、明日菜だけだぞ?


はやく目覚めてくれとは、言わないけどさ。


ただ、ゆっくり、休んでくれたらいいよ?


底なし沼なら、きっと、もっと、未来はひろがるさ。


底なし沼は、一度足を入れちゃうとさ、ズブズブって、泥が足にまとわりついて、重たくなっていくんだ。


そこで、ふみとどまるなら、いつかは陽光で、泥は乾いて、パリパリになって、はがれおちる。


また足が抜け出せて、身体が動く。そのうち、足の泥だって剥がせるけどさ。


もしもさ?


明日菜が底なし沼に、沈んじゃっても、底なし沼だぞ?


底が、ないんだぞ?


底がない原因は、あの世界的大スターの、双子のチョビ髭の、配管工屋の土管かもしれないぞ?


ワープできる貴重な土管だぞ?


もしかしたら、金貨ザックザックだぞ?


そこに吸い込まれて、けど、新しい世界に、土管の出口が、まだ怖いなら、


あと少しで、膝を丸めてうずくまっても、なあ?


俺は画面の中で、うつらうつらしている明日菜を見つめる。


「だいじょうぶだよ?かならず俺がこんどは、ちゃんと、明日菜の手をにぎる」


明日菜が怯えて、立ちすくんでしまった世界に、いちどは、ゆっくり逃げられたなら


ーゆっくり、休めたなら、


また、一緒に歩き出してあげるよ?


ゆっくりでいい。ただ、逃げつづけちゃうのは、ほんとうの意味では、休めなくなるから。


ずーっと、一見、らくな世界でさ、苦しみつづけてしまうんだ。


ひきこもりはね?ほんとうに、ひきこもりなひとも多いんだよ?


世間を知らない。社会を知らない。だから、親の年金めあてって、決めつけるのは、リアルを知らないからなんだ。


だって、世間を知らない。死んでいた親をどうしたらいいかわからない。外に出たことない。食べ物すらわからない。


そうしてー。


親はいつまでも、生きていない。親も保護している方がだんだん、楽になっていくんだ。


ほんとうに、楽なんだ。もちろん、苦悩や葛藤はあるけど。


ひっぱりあげるには、たくさんの奇跡が重なって、紙一重の神業みたいなタイミングに、なるんだろう。


それをつかめるか、みすごすか、は本当に紙一重の数%しかない。


けど、数%はあるんだ、きっと。だけど、一度楽な世界をしっちゃうとね。


弱いんじゃないんだ。弱さじゃない。ほんとうに、世間はそれだけは、誤解しないであげてほしい。


きっと、そこにあるのは、どうしょうもないバックグランドなんだ。


一億人の国民ひとりひとりに。一億個のバックグランドがある。


それなら、さ?


知らない世界の方が、圧倒的に、多くて。そして、きっと、知られない理由があるんだよ?


そして、そのリアルはね、ふつうなら体験しないんだ。


けど、同じリアルと、いまも戦ってる人たちがいて、リアルを知らない人の些細なコメントひとつに、絶望感を抱くかもしれない。


ほんとうに、未来を奪うんだよ?


とくにコロナ禍だ。みんながひきこもりになるような世の中だった。


公園で遊具が封鎖され、ひどい時には、公園すら封鎖された。


ひたすらニュースはコロナとコロナでふえる虐待。


ワクチンを手に入れるのが遅い!そう散々、非難したくせに。


ワクチンをうたせるな!


ーどっちだよ?


ただ、もう勝手にしろよ?他人のことにそんなに興味あるか?


ただ、知ろう?


医療機関は、ほんとうにベッド数が減少されてる。


コロナだけじゃない。コロナのせいでどうしても、入院患者数の制限せざるおえない。


だって、クラスターはおきる。入院前にPCRしたって起きるんだ。


それが進行癌だって、なんだって、そうだぞ?


病床数が逼迫しているんだ。病床数を減らしてるから。


福岡都市圏ですら、そうならさ、地域医療は悲鳴をあげつづけている。


医療機関だけじゃない。たくさんそうで、結局は基本的な、うがい、手洗い、マスク。


コロナの三種の人技を、ひとりひとりがまもるしかない。


そしてwithコロナに対応できるのは、大人だけだ。


傷ついた子供たちに、すぐに対応しなさいは、無理なんだ。


絶対にいったらダメなんだよ?


子供たちの心の傷は、とても深くて、誰よりもきっとコロナを憎んでる。


怯えてるんじゃない。きっと。憎んでる。


なら、


俺はうつらうつらしている明日菜の寝顔に、ただ思う。


ーよくがんばったな?


ーゆっくりやすも?


そうしたら。必ず俺が手を伸ばしてつかまえるよ?


一緒には堕ちてやんねーぞ?


また、土管の奥に行って、違う土管に紛れ込んでも、


「俺が絶対に、先回りして待ちかまえます」


必ず土管から、ひっぱりだしてやる。


ーゆっくりやすんだら。


なあ?俺はかなり執念ぶかいんだぞ?


「明日菜の彼氏歴10年目ですよ?その辺のヤツらと同じにしないでください」


ー絶対に俺が釣り上げてやる。


まあ、そのためには。


ーお嬢様を俺にください。


くださいって、明日菜はものじゃないけど。


あの有名なセリフいるよな?


いままであえて視界に入れてなかった人物たちを前に、背中に嫌な汗をかく、俺だった。


あのスーパースターのちょび髭は、ラスボスどう倒したかなぁ。


実は、ラストまでは、クリアーしたことがない俺。


いつもジャンプて落ちる、俺。


落ちた先に土管ほしいなあ。


ラスボスと目があった。


そらしたくなるのが。まあ、俺だ。



読んで頂きありがとうございます。


少しでも面白かったら、どんな少数でもありがたいです。


☆☆☆☆☆やブックマークよろしくお願いします。


ふたりのハッピーエンドを見守って下さったら、嬉しいでしす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ