第18話 彼女と下着と彼氏のトイレ
春馬くんの家のバスタオルをかりて、脱衣所で身体をきれいに拭いててく。
春馬くんの好きな水色の下着を用意してきたけど、こういう時って、下はともかくブラジャーは、するものなんだろうか?
一応、普通サイズの胸がきれいに見えるようなものを選んだのだけど。
春馬くんの貸してくれた黒のパーカーはしっかりした厚手のものだし、ノーブラでも目立たない気もするけど。
そこまで考えて、やっぱり私はブラとキャミソールをしっかり着込む。
彼のことだから、この上着もイカやタコを釣ってないだけで、変な魚は釣ってるかもしれない。
きちんと洗濯されているけれど、なんとなく嫌な予感がする。
春馬くんに対しては、ほぼ100%の的中率を誇るモノ。
これが女の勘ってやつなんだろうなあ。
あっ、でも、下は下着だけでもいいかなあ。
ミニスカートくらいの丈だし。
それにしても、ほんとうに静かだ。
もしかして、ほんとうに私と一緒に寝るのが嫌で外にでちゃった?
入浴中はタオルでくるんでいた髪をほどいて拭きながら、私は気になって脱衣所のドアをあける。
ガランとした人気のないリビングと、かすかな音が聴こえる。
なんだろう?
奇妙な低い音が聞こえるのはトイレだ。
えっ?もしかして私のラーメンでお腹を壊しちゃった?
戸惑って髪をタオルで拭きながら、トイレの前まで静かに移動すると、中からきこえてくる音は、必死に噛み殺そうとしてる嗚咽だった。
春馬くんが泣いているの?
どうして?
玄関に目をやると紙袋がなかった。
春馬くんのことだからカギのかかるトイレで紙袋の中身を確認したんだろうけれど、それなら、なおさらわからない。
ー私の思っていたモノと違ってた?
でも…会話の流れならきっと、アレなはず。
私が考えている間にも春馬くんの泣き声が大きくなっていく。
私はいてもたってもいられなくなって、気づいたらノックしていた。