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⑫とある高校の生徒会長

私は生徒会室のドアをあけるなり、中から元気よく聴こえてきた、しょうもない後輩たちの口論に、つい立ち止まってしまう。


会話の内容は、有名なイギリスの湖のUMAについて。


で、はては魚竜について、バトルしているけど。


バトルしているのは、いつもどおりに、我が生徒会の正式な役員である柴原真央と真央の助手、村上春馬だ。


ちなみに村上は生徒会役員ではない。


ただの真央の助手で、いまでは生徒会はこのふたり無しではまわらない。


ーいろいろな意味で。


「なにやってるの?また痴話喧嘩?」


「「ちがいます」」


「息ピッタリで何言ってんだか」


私があきれると、村上はいつものセリフを言ってきた。


「俺の彼女は、神城明日菜です!」


人気雑誌モデルの子の名前をだしてくる。


私もみてる人気ファッション誌のモデルの子で、南九州の片田舎の出身だった。


そのちいさな田舎は、真央と村上が住んでいる場所で、高校からは電車とバスで90分くらいかかる。


うちの高校は、県でいちばんだから、遠距離通学はわりと多いけど、寮暮らしもたくさんいる。


地域でいちばんでなく、県でいちばん。だから、当然むずかしい。


その地域の今年の一年生は、この2人だけだった。


朝の登校も同じなら、帰りも同じ。帰りは夜遅いから、真央の家まで村上が送っている。


ちなみに朝は痴漢避けらしいけど、いつみてもこのふたりは、よく一緒にいる。


真央は派手な見た目のはっきりした美少女で、村上はやさしい少し茶色がかった瞳が印象的な、まあわりと整った顔立ちをしている。


私からみてもお似合いのふたりで、


ー恋人じゃない。


は、ふたりをみていたらわかる。


それは生徒会役員全員の意見だけど、はためには、カップルにしかみえないのが、このふたりだ。


村上が神城明日菜を恋人宣言しているのは、ただの熱烈なファン心理だろうし。


「だって。ほら?入っておいで?」


まあ、とりあえず真央との関係を本人が否定したからいいかな?


生徒会室前にいた女生徒を手招きする。


内気そうだけど、ふつうに可愛い小柄な子をみて、真央はちょっとあきれた顔になって、村上はふつうに首を傾げていた。


「村上、お客さまよ?」


「へっ?俺?」


ますますキョトンとした村上に、小柄な女の子は折りたたみ傘とラッピングされた袋を差し出した。


「あの傘ありがとうございました」


「ああ!あの時かあ。大丈夫だった?雷?」


「はい。怖がってすいません」


「まあ、雷って俺でもマジで怖いからなあ。あんな高い木の下で雨宿りは、絶対危ないしな」


「高い木の下で雷の中雨宿りしてたの?よかったね?村上が気づいて。あっ?村上がバス停まで走ってきた時かあ。朝、折りたたみ傘もってるって言ってたから、私、気にせずバス停にいたら、雨の中走ってきたから驚いたわ」


「あの日、結局は、柴原に傘にいれてもらったよなあ。ありがとな?」


「まあ、神城明日菜のポスターで手をうつわよ?」


「なんでだよ⁈あれは、俺の宝物だぞ?誰にもやらねーぞ⁈」


「私でも?」


「当たり前だろ?柴原は国宝で、明日菜は俺の宝物だぞ?」


「へー。私は村上の国宝で、神城明日菜は宝物なんだ」


真央はニヤニヤしながら、小柄な女の子を見た。


ー相変わらずだけど、牽制球が豪速球だなあ。村上はキャッチできないよ?


かわりにため息がでた。


「村上、真央と痴話喧嘩してないで、お客さまの相手しなさい」


「「だから痴話喧嘩じゃないです」」


なぜか真央までこのセリフは毎回かぶる。


私は村上のエラーをフォローしたはずなのに。


まるでふたりにとって、たいせつな誰かを守るように、かならず否定してくる。


で、


「俺の彼女は、神城明日菜です」


相変わらずの村上のセリフが続いた。


結局は、小柄な女の子は、真央の牽制球にさされたわけだけど。


クッキーも生徒会役員で食べたけど。


村上から真央がクッキーを取り上げていた。


ーつきあってない。


けど、


柴原は俺の国宝。


真央は必ず豪速球の牽制球。


ーなんで?


だったけど、


いまテレビに笑って手をふる、いまでは人気No.1若手女優の神城明日菜のとなりで、あの頃よりは、大人びたやさしいすこ茶色がかった瞳か愛おしげに彼女をみていた。


「そっか。ずーっと、村上は、真実を言っていたんだね?」


信じなかったのは、私やまわりだ。


けど。


「なんで真央が国宝で、神城明日菜が宝物なの?」


真央には、すぐ意味がわかったみたいだけど、


ー相変わらず、私にはわからない絆のふたりで、


ふたりが守りたかったのは、


ー笑顔で村上のとなりにいる、神城明日菜だったんだね?


「よかったね?村上?」


そして、


ー真央も。


私は、最近送られてきたメッセージと写真に笑った。


ゴリラみたいな人のとなりで、村上には見せない笑顔の真央がいた。


私のたいせつなふたりは、


ー笑ってる。


だから、私も笑った。


ちなみにあの小柄な女の子は、クッキーの美味しさで副会長に惚れられ、もうすぐ結婚するらしい。


ある意味、真央と村上がキューピットだ。


村上はマヨネーズのベイビーがかぶるらしいが、


ーまあ、それは、なんとなくわかる。


それが村上と真央だ。


だけど、


真央が国宝、神城明日菜が宝物。


は、


ー意味不明だよ?


がふつうなのかなあ?


私は画面の中の村上に笑った。







読んで頂きありがとうございます。


少しでも面白かったら、どんな少数でもありがたいです。


☆☆☆☆☆やブックマークよろしくお願いします。


ふたりのハッピーエンドを見守って下さったら、嬉しいでしす。

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― 新着の感想 ―
[一言] >バリーナハティ?地名ですか? 私も知りません。私が書き込んだメッセージあったとしたら、入力ミスか誤変換です。 現在の英国は、藩が多数存在した日本ほどではないが、その昔は国が分かれていま…
[一言] おはようございます(こちらでは)。昨日のメッセージで、世界遺産か宇宙遺産とか言う話しは、思わず頭に浮かんでしまった事で、余り気にしないで下さいね。国宝を越えるのは何かと思っただけです。 妻…
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