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③ 春馬の父の春馬


俺には、息子がふたりいる。


ひとりは、最近日本中を騒がした。


正確には、息子の嫁が、騒がせたのだが。


まあ、俺には、自慢できる息子が、さらに自慢の伴侶をえた。


ただ、家族が、ふえた。


俺は、そう素直にうけとった。


職場は、少し騒がしくなって、家の周囲もさわがしいが、そこは人づきあいがうまい妻にまかせておく。


ー適材適所。


夫婦間で、最大の武器だろう。


俺は、公務員のくせに人づきあいがむいていない。


なぜ公務員になったか?


俺の就活時代は、まだバブルが崩壊していなかった。


まわりのやつに、公務員になりたいと言ったら、


ーなんで?


そういわれる時代だった。


ひとによっては、バカにしてきた。


サラリーマンの方が安定していて高収入。


終身雇用制。勤務年数での、年齢での賃金アップ。福利厚生etc。


初任給は、たしかにサラリーマンの方がよくて、バブル前だった。


まさに収入格差はサラリーマンと公務員でもあった。


新入社員の方が新人公務員の上をいく時代があって、クレームばかりの公務員は人気がなかった。


そういう時代もあったんだ。


バブル崩壊後、世間の評価か、態度が、一変して、


ーおまえらは、いいよな。


って言われたのは、いまだに、俺の七不思議だ。


あんなにバカにしてきたくせに。


まあ、俺は地元から離れる気がなく、そもそもやりたいこともなく、なんとなく市役所職員になったわけだが。


そして、当時は、まだ珍しくもなかった見合結婚をした。


そういう時代で、なぜか妻は俺をえらんでくれた。


まあ、適齢期になったら、家庭をもって一人前。


そういう時代だった。


俺の年代では、離婚して独身は多くても、結婚歴がないは、たぶん少数派にはいる。


俺の祖父の時代にさかのぼれば、相手と挙式のときにはじめてあった、も珍しない時代もあった。


それを考えると、ずいぶんとマシで、世界では、いまだにそういう風習がある国が多い。


親が結婚相手をえらぶ。


いまの日本でもまあ、一定数はいるのだろうが。


幸い、俺は、いまのところ妻から捨てられていない


・・・俺が定年したらどうなるかは、わからないが。


俺は定年後もバイトか趣味か見つける気でいるが・・・・。


去年まで、実家から地元の国立大学に通っていた長男も、いまは就職して東京にいる。


次男の春馬は福岡にいる。


九州最難関の大学に現役で通って、そのままストレートに卒業して、外資系の一流企業に就職して、


―日本でも大人気の神城明日菜を、伴侶にした男だ。


「経歴だけみれば、エリート中のエリートだよなあ」


俺は、苦笑する。


なぜなら、春馬自身も俺たち家族にもその意識がひくいからだ。


むしろ春馬は、妻や長男からは、見下されているような家庭環境だった。


俺から見ても妻本人も、


ー私は長男がかわいい。


そう妻は口にしていた。


春馬と長男は年子だ。


一年分、長男が可愛いは当たり前だし、成長していくにつれて、個性も強くなっていく。


親子だからって性格があうとは限らない。


げんに俺は春馬が面白くてかわいいし、長男はつかれる。


なにかにつけて俺のことを春馬みたいなやつという。


ようはバカにしてくるわけだが、長男にとって、春馬はライバルなんだろう。


長男がつまずくことを春馬はあっさりこなすが、長男が当たり前にできることが、春馬はわからない。


ほんとうに、わからないのだろう。


春馬の個性は、独特だった。


興味をもつものも独特なら、興味がなければ、いっさい手をつけない。


それが親のことでも、春馬の興味がなければ、


ー目すら、あわない。親にすら、興味を抱かない。


春馬は幼少期から、ほんとうに独特の子供だった。


友人と遊ぶよりも、ひとり遊びが好きで、


読書はなぜか、


ー広辞苑。


図鑑も好きだったが、春馬がいちばん興味をもったのは広辞苑だった。


し、動物が好きな子供だった。


動物は、はるまにとって癒しであり、ただ、自分と違う考えをして当たり前の存在だったんだろう。


ー春馬のみている世界は、春馬の世界は、独特だ。


俺は興味があり、春馬を見ていたが、妻には違った。


妻は必死に春馬をふつうに育てようとした。


俺には、なぞの行動だったが、妻にとっての教育だった。


・・・しつけ、だった。


―しつけって犬の飼育かよ?


俺はあきれてみていたが、ふだんから仕事であまり家にいない俺が、口に出すことじゃないと思ったが、ある夏休みに外にも出さずにひたすらドリルを春馬に解かせる妻をみて、さすがに意見した。


あれは、春馬のための勉強じゃない。


妻のプライドのための勉強だ。


春馬がドリルをしていないのは、


ー反抗心だ。


妻から解放されると、あっさりとドリルを春馬は終えた。


ドリルを終えて、虫取り網をもってででいくと、


ー蛇をつかまえてかえってきた。


ヘビがいれば、カエルが寄ってこない。


意味はわかるが、とうぜん、蛇は山に返した。


そのあとで、春馬がずっと欲しがっていた犬を、たまたま友人のところで生まれたので一匹貰ってきた。


妻はしぶったが、春馬は、よく世話をしていた。


春馬にとっての相棒は、いまも年老いたがいまは俺たち夫婦の大事な家族だ。


犬がいるだけで会話になる。


そして、その老犬は、いまもテレビ画面をにぎわす春馬の映像に、


ーわふっ。


ちいさな声でほえて、尻尾をふっている。


コロナなんてウィルスがやってきてしまったから、春馬は帰省していないが、あいつのデミオはもう俺の名義になって、ナンバーもかえた。


・・・まあ、こうなってみると、変える必要もなかったかも、しれないが。


春馬の家に、こんどデミオを届ける時には、こいつも連れていくか?


ーいや、この犬は車酔いするしな。


「すまんが、またお留守番だ」


いまはペットホテルもある時代だ。


春馬に言わせたら、


ーべんり。


なのだろう。


俺は、テレビにうつる春馬とその伴侶の姿にわらった。



読んで頂きありがとうございます。


少しでも面白かったら、どんな少数でもありがたいです。


☆☆☆☆☆やブックマークよろしくお願いします。


ふたりのハッピーエンドを書く原動力になります。よろしくお願いします。



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