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第16話 彼氏と彼女のやさしい夜。


萌ちゃんの姿に勝手に、ほっとした俺は、明日菜と一緒に、自分の家にもどった。


「どこに、いっていたの?」


「車だよ。餌とりにもどった」


「餌?」


明日菜が、すこし嫌そうな顔をするけどさあ。


ー虫じやないぞ?


オキアミだぞ?


アミだぞ?


「虫じゃないぞ?」


「虫?」


「うん。アオムシとかゴカイとか。ムカデやミミズみたいなやつ、じゃないぞ?」


「・・・なんで、ここで、ムカデがでてくるかなあ」


明日菜が、あきれた顔で、俺をみているけれど。


「なんで?」


むしろ、いまの話のどこが⁈


ーなんで?!


なんですけど?


「ーだって、餌って、きいたじゃないか?」


「そうだけど・・・。まさか、ムカデがここででるなんて、思わなかったんだもん」


ーめちゃくちゃ、可愛いんですけど?


俺の奥さんの上目づかいマジで、フェレットなみじゃない?


めちやくちや、可愛いんですけど?!


ーいや、まてよ?イタチに例える俺ってどうよ?


せめて、犬か猫じゃね?


ーイタチ、マジでかわいいぞ?


手術してペットとして進化していても、独特のにおいは、あるけれど。


しってるか?


イタチって喜ぶと、


ークックッック!


って飛び跳ねて、鳴くんだぞ?


お散歩は、夜行性だから、夜してやるとすごくよろこぶけど。


ーたばこのポイ捨てに、注意しなきゃダメだぞ?


なんかにおいつけだったのか、地面に身体をこすりつけたなあ、っておもったら、火のついたタバコがあって、めっちゃあせった。


間一髪、ぶじだったけど。


たばこのポイ捨てって、へらないよなあ。


・・・電子タバコにかわっても、ポイ捨てってあるのかなあ。


コンビニとか一面にたくさんタバコあるよなあ。


大学時代に友人や先輩から買い物頼まれたら、


ー空箱もっていかないと、よくわかんない。


素人がブラクリやエギのメーカーやサイズがわかんないのとおなじだよあ。


・・・なんで電子タバコ、吸ってバレないと思うかは、謎なんだけど。


すわない俺からしたら、


ーどくとくのかおりだから、すぐばれる。


ふつうにタバコ吸いに行くって、言えばいいのになあ。


ー自由時間は、文字通り、自由じゃね?


けど、仕事時間とかに、いくから、変になるんじゃね?


たまに、そう思うのが俺だけど。


俺の家族は、タバコ吸わないから、よくわからないし、会社の人間もすわない。


だから、電子タバコって、不思議だよなあ。


あれも、喫煙所で吸うのかなあ?


電子タバコみたら、ケミホタル思い出す俺だ。


ーちなみに、夜釣りのウキにいれる蛍光のこと。


俺は海なら、船以外は、基本的になんでもやる。


ー船は高いから、貧乏人には、厳しいんだよなあ、


船酔いは、薬でカバーするとしても。


乗り合いでも、厳しいんだよなあ。


俺の釣りの師匠が京都で船舶免許とって、ジギングでよく釣りネタアップしているけど。


ーいいなあ。


俺のベストは、佐賀県の海洋釣り堀で、75センチのハマチなんだよなあ。


コロナで、いまはいけないし。


宗像にもあるけど、行ったことないんだよなあ。


佐賀は、たまに、なぜか鮭も釣れるんだけど・・・。


イベントらしいけど。


博多湾でのシーバスのランカーサイズには、程遠いのが俺だ。


ぼちぼちシーズんなんだけどなあ。


「アミ食う?」


「たべられるの?」


「試したことはないけど。むかし、ドックフードは試して、けっこう、うまかったぞ?ささみジャーキーは無味だけど」


「・・・なんで食べようとおもったの?」


「犬がうまそうに食べるから」


あたりまえだろ?


目のまえで、あんなにうまそうに尻尾ふってたべるならさあ。


ーやるのは、俺だけじゃなくね?


「・・・もし子供がうまれても、食べさせたらだめだよ?」


「子犬でも、ふやかしてやるぞ?」


ベビーフードは、犬もおなじだぞ?


「もちろん、さすがに、こどもには、俺でもやらないぞ?」


小学生になったら、やりたいなら、とめないとは思うんだけど。


というか、俺の子供ならこっそりとやるだろうしなあ。


だって、俺がやったのは、小学校だし、金魚の餌とか、亀の餌とか。


目のまえでおいしそうに、パクつくなら、食ってみたくなるのが、俺だ。


さすがに、乾燥イトミミズとかは、たべないし、オキアミはいろがなあ。


油であげたらいけるのかな?


大人になったら、胃を壊しやすくなったのは、なんでだろう?


みみずは食べなかったんだけどなあ。


ちなみに、金魚や亀のエサは、昔はにたような味だった。


ドックフードは、かたくて、さすがに生のやつは、俺でも食っちゃダメとは理解したけど。


・・・子供だから火を禁止されていただけだし。


いまなら、電子レンジべんりだよなあ。


ーべんり。


だけど、扱い方間違うとかなり危険な電子。


マジで火事になるから、要注意で、同じ品物を購入したとしても、進化し続けるのが家電。


新しいの買っても、説明書は読んだ方がいい。


使えない機能は、マイナーだから、なんか別の機能に、代わっていることがある。


ーだってさあ。


たまたまタントのラジオで、きいていたんだけど。


家電屋さんのクレームって、大変なんだなあっておもったなあ。


ゲームをしない俺は、ゲームと一緒にしたらダメなんだろうけど、


ー家電は、あんまり興味がない。


そもそも、シンプルな方が壊れない。


そんなイメージがある。


そういえば、


「俺の家って、最低限の家電しかないけど。なんかいる?」


「突然だね?」


「いや、ほら。俺の家って基本的に、ほとんど寝てるか、萌ちゃんたち用にゲームとかだし。さすがに萌ちゃんと明日菜じゃちがうだろ?」


「よく考えたら、春馬くんって、私以外の女の子を、毎日家に連れ込んでたんだよね?」


「えっ?そっち?」


「どっち?」


「あっち?」


「・・・こっちだよ?」


明日菜があきれて、俺の首に両腕をまわしてキスしてきた。


ふわっと、明日菜の髪からあまい匂いがする。


ー明日菜のにおいだ。


俺が抱きしめようとしたら。


スルリと腕からにげられた。


ーなんで?


「・・・ありがとう」


明日菜がじっと俺をみあげて、かみしめるようにいった。


「なに?いきなり?」


お礼をいうのは、俺だろ?


「ううん。やっぱり春馬くんは春馬くんだなあって思っただけ」


「だから逆にききたい。俺が俺じゃなきゃ、誰なんだ?」


「私のいちばんの宝物だよ?」


そう言うと明日菜が俺の首に両腕を絡めてもう一度キスしてきた。


俺も抱きしめようと腕をのばしたら、


スルリと腕から逃げられた。


ーレベルアップしたはずなのに、なんで?


国宝じゃないなら、さわって、いいんだろ?


もうながめているだけは、終わったはずだろ?


ーもしかして、明日菜にとっては、俺は国宝なのか?


いや、それじゃあ、意味がないじゃん。


だって、俺は明日菜しかいらないんだぞ?


ー国宝は、みんなの人気者じゃん。


宝物は、自分だけの宝物じゃん。


「大丈夫だよ?私は春馬くんの宝物だよ?」


「エスパーかよ」


なんでわかったんだ?


俺の疑問が顔にでたんだろう。


明日菜がとてもうれしそうに笑った。


「わかるよ。春馬くんだから」


また、かるくキスしてくるくせに、俺にはふれさせてくれない。


そして、またじっと真剣な顔で俺をみてきた。


俺は両手をあげて降参する。


「俺には明日菜の考えていることがさっぱりわかんねーけど」


ーなんで宝物に触れちゃダメなんだ?


国宝じゃなくて、俺の宝物だぞ?


明日菜はもう、


ー村上明日菜だぞ?


・・・べつに俺が神城でもよかったんだけど。


いまは婿養子じゃなくて、自由にどっちの姓をなのってもいい時代なんだし。


ー俺の会社はわりと妻側の姓を選ぶ人も多いし。


俺の親父やおふくろもあんまり気にしていないし。


ただ、俺がオールリセットかけたかっただけで、けど、意味なかったみたいだし。


ーわけわかんねえ。


やっぱり、明日菜は、


―異世界代表。


そう思った。


正直にそう言うと、明日菜はまたうれしそうに笑った。


「いいよ。私にも私がよくわかんないから」


「へっ?」


「春馬くんが春馬くんをわかってないのと同じだよ」


「そうなの?」


「そうだよ?」


「ああ、そう」


「うん」


あれ?


なんだろう?


いつもとおなじ会話で、


ー最近は、わすれていた会話だ。


そう思い出していたら、明日菜がまたキスをしてきた。


ほんとうに、なんなんだ?


まるで、いままで明日菜が言えなかった怒りを表現するみたいに、それでも、最後に許そうって、キスをしてくる。


でも、俺からは、触らせてくれない。


絶対的な壁みたいなようなものがある。


もう一度、こんどはまた俺の首に両手をまわしてきた。


またキスかな?


こんどこそ捕まえてやるって目をとじて待ち構えていたら、


「ーっ!?」


耳をかじられて驚いた。


このシーンは二回目だ。


そうだ。


そうだよな。


俺は、明日菜のキスシーンのラブシーンの、すべてを覚えている。


映画館の巨大スクリーンで、柴原に先のとがったヒールで脛をけりとばしてもらいながら、いつだって、悔しくて、下唇を前歯でかみしめて、涙でかすむ視界にでスクリーンを睨みつけながら。


スクリーンに俺がとびこみたかった。


ーけど、絶対にもう手放さない。


明日菜が、俺を待っていてくれるなら。


信じてくれるなら。


ーチャンスが、かけらでも残っていてくれるなら、


絶対にその手をしっかりと握ってはなさない。


誰にも、もうなにも言わせない。


ー明日菜が俺をもう一度、信じてくれたんだ。


俺はしっかりと明日菜の華奢な身体を両手でだきしめた。


俺から、ちゃんと手をのばした。


「おかえり、明日菜」


そうだよな。


俺たちの一歩はここからだ。


「うん。ただいま、春馬くん」


明日菜が俺の腕の中から、じっと俺をみあげてきた。


そういえば、俺と明日菜って身長差だけでみれば、理想に近いんだよな?


1センチ足りないけど。


足りなければ、俺が背伸びをすればいい。


そう思っていたけど。


ーいまならわかるよ?


むりして背伸びする必要なんかないんだ。


だって、


背伸びなんかしなくても、


ー明日菜が笑っている。


俺の腕の中で幸せそうに屈託なく笑っている。


ー俺は俺のままでよかったんだ。


ただ、俺たちの間には、それでよかったんだ。


理想は、理想で、あくまでも、


ー理想だろ?


理想の身長差なんか、関係ないんだ。


1センチ足りないなら、べつに背のびする必要ない。


そのための靴だろ?


文明だろ?


進化だろ?


ならさ、


俺はべつに背伸びなんかしなくても、


ーどっかの誰かが、いつかは開発してくれるさ。


天才は、いつの時代にもあらわれる。


そして、かならず、コロナにも未来がくるんだ。


なら、よくね?


こんだけべんりになった世の中だぞ?


他力本願で何が悪い。


俺は俺の全力で、いま目にみえている俺のリアルを大切にするだけだ。


明日菜が俺のそばで、ずっ笑っていてくれるように。


俺の一番星。


宵の明星。


ー金星。


Venus。


なら。


もう、いいじゃん?


俺はますま腕に力をこめた。


「ー痛いよ、春馬くん」


「いや?」


「いや?」


俺と明日菜の視線がきれいにかみあう。


俺が口をひらく前に明日菜が眉をひそめた。


「ねえ、春馬くんが春馬くんだってことは、私がいちばん、よくわかっているんだけど、無理なお願いをひとつだけしてもいい?」


「ー俺にできることなら」


さすがに、なんでもとは言えない。


さいごに、絶対に、なにか、やらかすのが、俺。


「ーはじめての夜くらいは、ロマンティックにきめてほしいな?」


明日菜が上目遣いに俺をみあげてくる。


めちゃくちゃ絵になるんだけど、


「ごめん。俺にはムリ」


だって、俺だって、はじめてだぞ?


「ーだよね。春馬くんだし。経験あったら、私もこまるし」


明日菜はいつものようにあきれた顔で笑って、ちょっと、恥ずかしそうに目をとじてくれた。


そして、俺はそっと唇をかさねる。


あの時とはもうちがう。


「・・・ベットいこう」


お姫様抱っこはムリな俺だ。


いや、緊急時には、きっと、大丈夫だけどさあ。


・・・いまから未体験なことに使うだろうし。


俺のあたまはやっぱり、こんな時でもへんなとこで冷静だった。


明日菜が嫌な顔になる。


「セクハラって、知ってる?春馬くん?」


「エスパーかよ。明日菜、やっぱりー」


「超能力テストは、うけないよ?」


「・・・なんでわかるんだ?」


「だって、ずーっと、私だって春馬くんだけを信じて見続けたんだよ?ほめて?」


明日菜が得意げに笑ったんだ。


そうだよな。


「きゃっ!」


「なんで女って、そんな声がとっさに、でるんだろうな」


お姫様抱っこしたら、明日菜が小さく悲鳴をあげた。


かまわずに、ベットに歩いていく。


ーハマチよりは、腕力をつかわないなあ。


大人気女優を海上釣り堀のハマチと比べるのが、俺だ。


一応、天然の定置網をそのまま釣り堀に放り込むから、へんてこな魚が釣れるんだけど。


天然だけど、半分は養殖。


ーハイブリット?


「・・・私を魚に例えるのって春馬くんだけだよ?」


「げっ、また口にしていた?」


「口には気をつけようね?春馬くん」


ベットにやさしくおろすと明日菜が呆れたように、でもうれしそうに笑ったんだ。


そして、


「・・・でんき消して?」


あまえた声で恥ずかしそうにいった。


ーでんき。


偉大な発明だけど、今夜はいらないらしい。


ーべんりだなあ。


って思った俺は、そっと部屋のあかりを消した。


窓の星明りじゃなく、人工のあかりだけど。


ー光は光なんだ。


明日菜。


俺のいちばん星。


宵の明星。


金星。


ーVenus。



そして、いつか明日菜の胎に宿るかもしれない命のかけらに。


ー奇跡ってあるんだな。


けど、もしであえなくても、俺と明日菜はいっしょに歩んでいくんだろう。


俺は明日菜のあたたかな体温をだきしめてそう思った。




読んで頂きありがとうございます。


少しでも面白かったら、どんな少数でもありがたいです。


☆☆☆☆☆やブックマークよろしくお願いします。


ふたりのハッピーエンドを見守って下さったら、嬉しいでしす。

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