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第16話 彼氏と例の紙袋の中身


俺の額を、だらだらと冷たい汗が、つたう。


額どころか、全身が、びっしょりだ。


漏らしては、ないぞ?


でも、口から、なんかでそう。


なんか、わかんけど。


ホームセンターでの一尉の行動に、すべて納得いきましたよ?


ーはい。


急に俺の息子をつかんできた理由も、排せつ事情をきいてきたことも。


明日菜が紙袋を、拒否ったことも。


ぜーんぶ、理解しました。


ずるずると、便座にもたれかかり、狭いトイレにうずくまる俺、村上春馬22歳。


そう22歳で、遠恋の彼女はいるが、いまだに童貞。


ファーストキスは、その彼女と10年前。


いつも彼女からのキスで、俺からしたことはない。


だって、俺、自信ないんだよ。


華やかな世界で、すごいスピードで、きれいになっていく明日菜に比べて、俺には、とくに誇れるものもない。


なんなら、いつも、明日菜をこまらせるプレゼントばかりしている。


隣の一尉のように、国をまもっているわけじゃない。


同期の新入社員の中でも、特別に仕事ができているわけでもない。


紫原のほうが、正規採用になってから、給料が少し良かったし。


そんな、どこにでもいる普通のサラリーマンが、あの大人気の若手女優、


ー神城明日菜の恋人だと、誰が信じる?


リモート面接で、自ら口にしても、誰も信じないし?


あれだけ修学旅行後に騒がれた関係もいまでは、明日菜の黒歴史といわれている俺だぞ?


発言者は、例の赤木だけど。


柴原が、しばらく、キレていてなだめるのに、苦労したが。


ー大切にしたい。


ー俺が幸せにしたい。


その言葉は、嘘じゃない。


「だけど、さあ」


あれ?変だな?視界がにじんでくぞ?


くそっ、鼻水まで、でてくる。


ズルズル鼻水をすすりながら、脳裏に、さっき一尉の紙袋を、かたくなに拒否していた明日菜の姿がよみがえる。


紙袋の中身に勘づいて、あの態度ならさあ。


明日菜に、その気はないよな?


それとも、明日菜は、経験しているのだろうか?


高校、大学ってすすむにつれて、彼女がいても浮気する奴は、たくさんいたし、逆に、彼氏がいるのに、俺なんかをさそってくる女たちも複数いた。


彼女たちの言い分は、楽しまなきゃ損だよね、こんなのファッションの一部だよ。


やっぱり、女は異世界人かと思ったが、男たちも、にたようなものだった。


柴原だって、お試しでつきあうこともあると言っていたし。


あんな華やかな世界で、大人気の明日菜はー。


やばい、最低な思考に、どんどん、はまっていってしまう。


気がついたら、口から、嗚咽まででていた。


「情けねー」


つぶやいた時、


ーこんこん。


控えめなノックと、


「えっと、ね。だいじょうぶ?」


心配そうな明日菜の声が、きこえてきた。


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