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第11話 彼氏と彼女の福岡空港。


俺は、いつもどおりの黒のパーカーに、ジーンズ、黒のキャップ、そして、釣り用の偏光グラスとマスクで、とある場所にたっていた。


ーコロナでなかったら、完全に警察から職質うけていたよな?


ただでさえ、俺の周囲には、けっこう人がざわざわしている。


そして、わあっと到着ロビーがわいた。


福岡空港。


国内線のターミナル。


先日の記者会見をおえて、東京の寮の荷物整理のために、数日を東京で暮らしていた明日菜が、福岡空港の到着ロビーについた。


いくらかくそうとしたって、一般人の俺の情報は駄々もれで、まさに、穴の開いたザル状態。


ーボスサルじゃないぞ?


あのざるだぞ?


・・・どの猿だ?


サルにはいろいろと種類がある。


日本にいるのは、ニホンザル。


けど、イケメン先輩は、シルバーバック。


ジャングルの王者で、


ーちなみに日本にいるすべてのゴリラは一種類。


ニシローランドゴリラで、大人の雄は背中から大腿部にかけて灰白色になり、


ーシルバーバックと呼ばれている。


ようは、にほんの動物園にいるのは、シルバーバック。


・・・日本の動物園って、マジですげーな。


ただ、その飼育数は、年々もう少なくなっている。


福岡市動物園にいたピンドンも、2016年に34歳でなくなっている。


たしか、それで、京都より西側でゴリラをみれる動物園は、なくなったとおもう。


野生でも数が減ってきているゴリラ。


日本の動物園でも、実は、めったにお目にかかれなくなってきている。


日本でゴリラにあえる動物園は、もう6個しかないんだ。


ーうちの会社に、ひとりいるけどな。


イケメン先輩、マジリスペクトな俺で、


ーやっばり柴原ってすげーな。


貴重なシルバーバックをつかまえたぞ?


めちゃくちゃ強引だけど、イケメン先輩なら俺も安心して柴原にたくせよなあ。


中学時代の初カレなんか忘れてしまえって思うけど、赤井はしぶとい。


俺の中学時代の親友だって、ペラペラあることないこと、メディアに言いまくっている。


とある関係者筋からの情報。


に、なるらしい。


そりゃあ、ふつうに修学旅行の班だったから、班ごとの記念写真くらいあるよなあ。


俺は、あきれてて、読む気にもならなかったけど。


そもそも俺って赤井と友達だっけ?


そういえば、大学時代の先輩に頼まれて顔本登録したら、ひどいことなったなあ。


ずーっとスマホに、


ー知り合いかも?


って表示がでて、


ー新手の宗教勧誘か⁈


なくらいしつこい、あの顔本。


毎回、


ー知らねーよ?


だけどなあ。


あれ以来、スマホのアプリは人から頼まれても、必要がないなら使わないを、学習したのが、俺だ。


俺は本当に、失敗からしか学ばないんだよなあ。


まあ、それが、俺なんだけど。


ただ、赤井が言うように、あの修学旅行で明日菜が俺に告白して、俺たちがつきあったのは、事実ではあるんだよなあ。


・・・あのあと、こてんぱんに、明日菜に振られたのは、言わないのはなぜだよ?


あいかわらずの赤井だ。


まあ、元気そうでなにより?


俺の両親もノリノリでコメントだしていたしなあ。


・・・親父、公務員だけど、大丈夫か?


俺のデミオは、いつ帰ってくるんだろう。


そんなことを、ぼんやりおもっていたら、


ーカシャ。


―カシャ。


って音だけでなく、フラッシュが俺の視界を点滅させた。


「春馬くん」


視線をあげると、すこしだけ、こまったように、マスクの下で笑っている明日菜がいた。


俺のまわりには、遠巻きに人だかりがあって、福岡支社の人たちがガードしてくれている。


ー情報ただ漏れ。


で、


「みなさん、ありがとうございました」


明日菜が俺の横にたって頭をさげたんだ。


俺もあわててキャップを脱いで、まよったけど、サングラスもとって頭をさげた。


あとで、加納さんから偏光グラスは、してほしかったといわれたけど。


ーまあ、それが村上くんよね。


って呆れられたのが、俺だ。


俺は、生きているだけで、けっこう人から呆れられている。


なにせ、


ー超ポジティブな俺の思考。


あまりに、頭がぐるぐるフル回転しているから、もはやもう、


ー考えてもむだ。


なんだよなあ。


俺って、べんり。


「いこう春馬くん」


ひととおり周囲に手を振ってから、明日菜が俺の手をとって歩き出した。


犬の散歩みたいに、ひっぱられていく俺。


それが、俺。


村上春馬、23歳。


大人気女優の神城明日菜のもう、夫。


明日菜はわもう俺の彼女じゃなく奥さん。


ースゲくね?


つい半年くらい前は、こうやって、堂々と人前で手をつなぐなんて、考えたことかったのに。


俺は、先日の明日菜の会見を思い出した。


―愛してます。


俺だけにまっすぐに画面ごしに明日菜が言った時、会社だったのに、不覚にも泣いてしまったんだよなあ。


俺って、ほんとうに涙腺よわくね?


ちょっと前まで、幼稚園児の半けつアニメでしかなかないって、思っていたんだけどなあ。


俺のとなりで、イケカマ係長が号泣して大変だったけど。


いや、イケメン先輩も号泣して、鈴木さんももらい泣きして、ただ、鈴木さんのお兄さんがティッシュ配りと化していた。


俺の新規プロジェクトチームって、大丈夫か?


マジで、ちょっとだけ、心配な俺だった。


産休があけたら、柴原も俺たちのプロジェクトチームに配属されるから、大丈夫かなあ。


鈴木さんもしっかりしているし、


「ーげっ、俺がやっぱり一番問題児か?」


思わずつぶやいたら、明日菜があきれた顔で俺をみあげてきた。


「春馬くん、もう社会人二年目だよね?」


「それがさ。福岡支社に、今回は誰も配属されないんだってさ。まあ、鈴木兄妹が入社してくれたらな」


うちの支社は、もともと少人数なんだよな。


去年の配属だって俺と柴原の二人だけで、そのふたりを鈴木兄妹がうめてくれたなら、新入社員は、本社や他の支社の配属になったそうだ。


まあ、規模的にそうなるよなあ。


「あんまり期待されていないしなあ。うちの支社ってある意味放置されているし。明日菜が俺の嫁さんになっても、支社の連中は通常運転くるいなしだしな」


「私もあってみたいなあ」


「イケカマ係長には、あっているだろ?」


「えっ?」


「ほら、あのカーチェイスの時の美人」


「あのひと男の人だったの」


「ちがう、イケカマ係長」


女性だって言った方がいいんだろうけど、もはや、俺のあたまの中では、イケカマ係長は、イケカマ係長なんだ。


ー生まれた時、いや受精の時から決まっていた運命で、それすら、たくさん傷ついて、


ーあたしの生きていける国は、かぎられている。


国によっては、いるだけで銃口がむけられる。


そういう存在が、もう日本ては認知されている。


たくさんの人たちが、声をあげて、勝ち取った未来で、けど、現実に、であうとなると難しい。


銃口は、むけられなくて、認知はされているとけど、


ーべつの世界にいきている、人。


そういう感覚なんだろう。


そして、柴原や俺や、まあ明日菜もそうなるのかな?


けど、


ー銃口は、むけられない。


日本っていい国だよなあ。


カシャって相変わらずシャッター音はしていて、スマホがずっと駐車場までついてくるけれど。


まあ、明日菜がとなりで鼻歌交じりに俺としっかり恋人つなぎをしているから、俺もしあわせだけどさあ。


そういえば、こういうつなぎ方は、たしかに、特別なときや特別な人としかしないかもしれない。


自分の子供でもしするとしたら、手術室にはいって、麻酔の酸素マスクをかぶせる時、いつだって、不安になく子供に、抵抗しようとする子供の手を握りしめる。


ーただ、麻酔から無事にさめて。


もう一度、その目でみつめて?


麻酔の香りはバニラ味で、


ーバニラは食べたくない。


いつかそうあの母親が話していた。


手術で一番怖いのは、全身麻酔で、麻酔から回復時のリカバリー室での酸素回復。


毎回、心臓にわるくて、母親はバニラが嫌いになった。


子どもだけに、麻酔の匂いがあるのかはわからないけど。


そいう特別な時だけ、こういう握り方をするんだろうなあ。


ー明日菜以外なら。


人間って、なにかに願う時や考え事する時だって、自分の両手の指を、指と指とのあいだをしっかりとにぎりしめるんだ。


自分の手すら、そうなら。


俺はしっかりと明日菜の手をにぎりかえす。


「どうしたの?」


「いや、はなしたくないなって、っておもっただけだよ」


「もう、甘えられない時に言うのは禁止だよ?」


「ーべつに、あまえてよくね?」


「そうだけど、恥ずかしいよ」


「なんでだよ。恋愛映画のヒロインばっかりやってんのに」


「あれは、映画だもの」


明日菜が恨みがましく、俺をみて、けど、ため息をついた。


「春馬くんは、やっぱり、春馬くんだね?」


「だから、俺が俺じゃなきや、誰なんだ?」


「私の大事な旦那様だよ?」


そういって、春の明るいひだまりに明日菜がわらった。


そのうしろに菜の花みたいなあわいパステルカラー黄色い小さな軽自動車がある。


ダイハツ、タント。


ちいさくて便利な万能軽。


は、


「あれ?神城明日菜の車ってあれなの?」


「まあ、庶民的で好感度はあがるよね?」


「なんかかわいい車だね?」


って、ほめられていた。


し、


日本の軽自動車ってすごい文化で進化で発明だぞ?


もっとほめて?


って俺はおもった。


きいろいパステルカラーのタント。


菜の花みたいにやさしい春のひだまりのような車の助手席に、若手人気ナンバーワン女優の神城明日菜がのった。


俺のデミオじゃないけど、


まあ、にあうなあ。


春のひだまりが、ぽかぽかな福岡空港で、俺はふつうに俺の奥さんに見とれていた。


ー俺の奥さん、マジでかわいい。


って、あほみたいに思った、





読んで頂きありがとうございます。


少しでも面白かったら、どんな少数でもありがたいです。


☆☆☆☆☆やブックマークよろしくお願いします。


ふたりのハッピーエンドを見守って下さったら、嬉しいでしす。

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