第10話 彼女と彼氏と彼女の記者会見。
たくさんのフラッシュが、私の視界をチカチカさせる。
いつも思うけど、この光って、目にいいのかなあ。
これだけ技術が進化したなら、フラッシュって、いるのかなあ。
そういえば、春馬くんが一時期、はまっていたなあ。
1970年式のPENTAXのフルマニュアルカメラ。
当時大流行したカメラで、春馬くんのお年玉でも比較的いいものが手に入ったって、中学生の頃に夢中になっていたよね?
真央と例のルービックキューブの後、ふたりで、また、もりあがっていたよね?
私は、ちいさなファインダーでのぞくよりも、液晶のおおきな画面のほうが、みやすくて、オートフォーカスだから、好きだけど、春馬くんと真央には、ちがうらしい。
ふたりで、いろいろな機能についてもりあがっていた。
で、私をモデルにうつしていたけど、あのフィルムは、まだ現像してないらしい。
ーだって、カメラ屋さんで現像したら、明日菜の存在が、ばれるじゃん。
ふたりで、言ってたけど。
さすがに、春馬くんも真央も自分で現像まではしないらしい。
あくまで、ファインダーをのぞいて、フルマニュアルで計算して、ピントをあわせていく、
そのファインダーの世界が、おもしろいそうだ。
フィルム自体の値段も高くないし、いまはカメラ屋のアプリをおとせば、フィルムだってデジカメのように、写真をえらべる。
フィルム代とカメラ屋での現像代をとれば、たしかに、スマホやデジカメが便利だし、なにしろ、枚数に制限がないからお財布にはやさしいよね?
気に入らなけば、すぐにデリートできるから、実際に、後輩たちは、見え方が悪いときはすぐに消している。
けど、すぐにどこでもとれて、ネットにつながるから、優菜や春馬くんのデミオ騒動が起きるわけだけど。
単純に、便利だから発明されたんだろうなあ。
カメラ機能に特化したスマホの画像や機能は、本当にすごいし、春馬くんが大好きな天体望遠鏡だって、じつは、いまはもうスマホを望遠鏡にとりつけて、簡単に天体写真がとれるらしい。
ひとむかしまえなら、かなりの金額を使って、技術があって。できる天体写真だったのに。
ーいまはスマホで手軽に撮影できる。
大学生になった春馬くんが、そのころは、まだ、コロナもなくて、気軽にいけた博多のヨドバ○カメラで天体望遠鏡コーナーをみつけて大、興奮していたって、真央があきれていて、私も本人から、たくさん電話できいたんだ。
ちなみに、一人暮らしの真央が荷物持ちとして、春馬くんをつれだしたらしいけど。
・・・ほんとうに、いつも一緒にいるなあ。
たくさんのフラッシュにまぎれて、私はちょっとだけ、まぶしいふりをして、顔をしかめてごかした。
春馬くんは、この記者会見を生でみてるのかなあ。
会社にいる時間だけど、春馬くんの上司に相談してみるって言っていたけど、そんな公私混同がとおるのかな?
・・・特殊な状況では、あるけど。
そういえば、私は、まだ春馬くんのスーツ姿をちゃんと見たことがない。
成人式の時は、まだスーツ慣れしていなかったし、就活のときは、あまり会話した記憶がない。
私の恋愛ドラマが、たて続けてはいっていたから。
ね?
春馬くん。
やっぱり、春馬くんは、
ー最低な、彼氏、だよ?
そして、
ーそんなに嫌なのに、私をずっと見続けてくれた、
ー最高の、彼氏、だよ?
私は、つい笑ってしまうんだ。
ひととおりカメラに満足したのか、フラッシュがやんで、私のまわりには、透明のプラスチックの板でかこまていたから、マスクをとる。
記者の人たちは、みんなマスクをしていたけれど、私には、数人と面識がある。
よくインタビューをうけていたから。
そして、その人たちと目が合うと、ちょっとだけ、なかには苦笑しているひとたちがいる。
きっと以前に私の初恋について質問してきて、かってに納得して、私の初恋がおわったと誤解していた人たちだろうなあ?
私は、一度も春馬くんとの初恋を、終わったと、言ったことがないんだよ?
ただ、勝手に憶測して、結論付けたんだよ?
私は、いちども否定していないよ?
あいてが否定しないなら、つごうよく、自分の意見が正しいとなっていくから、ほんとうに世の中って不思議だなあっておもうし、私にとっては、都合がよかった。
だって、勝手に、誤解してくれる。
私は、嘘は、ついてない。
ーつかなくても、相手が勝手に、自分の都合よく話をとるんだよ?
とくに、大人は、そうなんだよ?
-否定しないのが悪いっていうけど、否定する前に結論付けるから、
・・・めんどくさくなる。
し、否定するほどでもない。
ただ、同意してないし、否定するほどでもないだけなんだ。
都合がいいのは、こっちも同じだから。
ー否定するのもつかれるし、否定され続けるのもつかれるし、もうどっちでもいいよ?
うそは、ついてないから。
そうおもっていたけど、そうしたらさ。
優菜の嘘が、真実に、なったんだよ?
ー嘘が、真実になる、時代に、なった。
否定しないなら、もう身を守れない。
否定したって、
ー信じてくれない。
言ったって、無駄だ。
大人は、わかってくれない。
いったって、自分につごうよく、事実をかえてしまう。
ーいったって、無駄だ。
ね?
春馬くん。
たくさんのインタビューで、私は実は、そう思っていたんだよ?
13歳の小娘の、たかが、初恋で、私はもう大人気女優で。
ーそんな子供の遠距離恋愛が、つづくわけない。
そうたくさんの大人が結論付けて、結局は、私と春馬くんは、いままでそういうスキャンダルから、あの日まで、無傷だったんだ。
・・・へんな時代。
私は、そう思うけど。
・・・へんな時代。
ほんとうに、そう思うけど、
・・・べんり。
きっと、私と春馬くんの恋は、こんな時代だからこそ、実ったんだ。
気軽に、スマホで、相手の顔をみて、遠くの人と、はなせる時代。
だからこそ、私と春馬くんの遠距離恋愛は、かなって、そして、たくさんのことに、傷ついて、
ね?
でもこうやって、私は、しあわせにわらう姿を、私を応援してくれるたくさんのひとに、見てもらえるんだ。
ね?
春馬くんも真央も物知りだけど、私だって、東京で、たくさんのことを知って、成長したんだよ?
私のデビュー作で、たくさんの人から体験談をきいたんだ。
ほんとうに、たくさんの人たちから、話を聞いたんだよ?
電化製品の三種の神器。
ーテレビ、冷蔵庫、洗濯機。
テレビは、当時の皇太子殿下の結婚式と第一回目の東京オリンピックで、いっきに普及したのは、有名だけど。
じつは、当時、新婚の奥さんたちにねだれた家電は、洗濯機だったって、おじいさんたちが苦笑していたんだ。
おばあさんたちは、洗濯機の発明にとても喜んでいたんだよ?
私は洗濯板で、ゴシゴシするとおもっていて、洗濯板が洗濯機のかわりかと思っていたら、重要なのは洗濯石鹸だと苦笑された。
おおきなごっつい洗濯石鹸で、汚れをゴシゴシするらしい。
おおきな桶に、冬でも冷たい水をはってひたすら洗う。
手であらう。
とても大変だったから、洗濯機が一番うれしい発明だったそうだ。
冷蔵庫は、氷をりようした簡易的なものは、存在したらしいけれど、洗濯機はなかった。
労働時間が一気に短縮されて、そして、テレビ等の娯楽をたのしめるようになったんだね?
ー洗濯機、かあ。
私の子供の頃には、もうふつうに、全自動洗濯機で、田舎のぱあちゃんの家にあったのも、二層式洗濯機だったなあ。
初期の洗濯機は、写真でみても、
ー?
の機能がある。
そして、いまは、乾燥までしてくれる時代。
そっかあ。
スマホじゃ洗濯も保冷もしてくれないんだよね・・・。
スマホにもできないことが、たくさんあって、
ー生きることには、あんまり、直結していないけど。
ー情報は、いのちにかかわる。
も、ある。
だから、常に、いろいろなものが進化し続ける。
そもそも携帯電話の発祥が、福祉用具なんて、もうあんまり知られていないよね?
いまのスマホは、声で答えてくれるのもたぶんそうだけど。
むかしの携帯電話には、目の不自由な人がわかりやすいように、番号キーの中央の文字の部分に小さな突起があったんだ。
いまも、きっとあると思うけど。
メールやバイブは、耳の不自由なひとのことを考えて。
たくさんのやさしさにあふれたツールだったんだ。
その進化がスマホなら、
ね?
春馬くん。
やっぱり、人の文明の進化は、優しいのかもしれない。
ーやさしい人たちの未来は、やっぱり優しいのかもしれない。
まばゆい、フラッシュの中、私は頭をさげて一礼した。
「私的なご報告にたくさんの方にご足労いただいてありがとうございます。私、神城明日菜は先日、一般人の方とご入籍させていただきました」
そう笑ったんだ。
ね?
これで、やっと、私は春馬くんの家族だよ?
そして、
春馬くんも私の家族だよ?
ね?
春馬くん。
たくさんの質問をされたけど、
―最後に彼にひとこと。
って言われて、
ひとことかあ。
ね?
春馬くん。
私が伝えたいのは、いつもと同じだけど、ちょっとだけ、もう違うんだ。
質問してきたひとにじゃなく、私はテレビのカメラを、真正面からむかえたんだ。
きっと、その画像を春馬くんがみているって思いながら。
私は、ゆっくりと口をひらいたんだ。
ね?
春馬くん。
「愛してます。これからも、ずっと、一緒にいようね?」
私は、そう笑ったんだよ。
たくさんの、恋愛ドラマでも、恋愛映画でもいったことがあるセリフだけど。
ね?
春馬くん。
私は、いま、春馬くんだけ、に、つたえるよ?
ね?
春馬くん。
やっと、多くのメディアの前で、私は私の自慢の春馬くんに、
ーそう言えたんだ。
私は、とてもしあわせで、それは次の日の芸能史の一面をかざったんだ。
ね?
春馬くん。
私は、いまも、むかしも、ずーっと、
ね?
春馬くんのことを考えるだけで、
ー幸せなんだ。
ー笑ってるんだよ?
私の大切な春馬くんに、
・・・私は、洗濯機の買い替えを提案しようとおもう。
だって、私の服だもん。
外に干したら、盗難にあうかもしれない。
ーリアルに、それは嫌だって思っちゃったんだ。
むかしの主婦が、ほしかった、洗濯機。
新米、妻の私が欲しいのも、洗濯機。
時代は、いろいろと変わっていくけど。
ーべんり。
そう思ったんだ。
読んで頂きありがとうございます。
少しでも面白かったら、どんな少数でもありがたいです。
☆☆☆☆☆やブックマークよろしくお願いします。
ふたりのハッピーエンドを見守って下さったら、嬉しいでしす。