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第一話 彼氏と彼女と会社


「春馬兄ちゃん、ちょっとさびしいんじゃないの?」


後部座席から、萌ちゃんが、からかうようにいった。


ちなみに、いまは空ちゃんのDVDは、ついていない。


さすがに遊び疲れて空ちゃんと凜ちゃん、そして子守りをずっとしていた軍曹は、夢のなかだ。


車内には、俺と萌ちゃんのひそひそ声しかしていない。


明日菜は、加納さんたちの車に移っていた。


加納さんが用意していた明日菜の事務所の福岡支社の車だ。


鈴木さんと加納さんと明日菜で、ゆっくりすごしている。


あの人が鈴木さんか。


俺も紫原も心の底では、恨んでしまっていた人だ。


彼女の真実を知らず、無責任に明日菜を追いつめたヤツだと思っていた。


ーあいつさえいなければ、明日菜は他の奴とキスなんかせずに、俺のそばにいたのに。


ずーっと、そう思っていた。


俺は、唇を引き結ぶ。


もう、前歯で下唇を傷つけたりはしないさ。


そんな行為に、逃げたりしないさ。


俺よりもずっとつらい明日菜が乗り越えたんだ。俺だって、身勝手な自傷行為からは、もうたちなおるよ?


俺だって、ちゃんと現実をみる。


そう思いながらもやっぱり、


ーお前も同類だぞ?柴原?


相変わらず、しょうこりもなく、柴原だけは、まきこむ、俺。


俺は、柴原だけは、ゆずれない。


だけど、明日菜は、もっと譲れない。


柴原がイケメン先輩をつかまえた時は、心底舞い踊った俺だ。


イケメン先輩は、本当にイケメンだろう?


俺の永遠の憧れ、シルバーバック。


あれこそ、まさしくジャングルの王者。


いや、俺の会社の王様は、ハゲおやじ。


外国人のハゲおやじ。


福岡支社の支社長は、イケカマ係長のパートナーのハゲ上司。


・・・俺の会社のハゲ率高くない?


まあ、かっこうよくきちんと両脇カットしていたり、ほんとうのツルツルだったり、まあ、中にはかつらだったりもいて、


ーわりとオープンだ。


俺の会社は、本当に様々な人種や個性にあふれている。


福岡支社は、あくが強い。


・・・4月からの新人だいじょうぶか?


ちらっときいた話では、鈴木兄妹も俺たちのプロジェクトの一員になるらしい。


俺か希望していた現地のリアルをしっていて、鈴木さんはネットにもう傷ついた人だ。


きっと、そういうことに傷ついた人の心によりそってくれる。


俺たちのプロジェクトは、当初の予想よりきっと、大きなものになっていく。


でも、あたりまえに、最初は、手探りではじまるから、小さな一歩からになる。


いろいろな専門家の意見を聞きながら、けれど、そこはあのハゲ外国人。


しっかりと会社としての利益も、いずれ得る仕組みをつくっていくんだろう。


ただのボランティアではない。


そこに収益がこないときっと、持続は無理なんだ。


最初にどんなに賛同していても、ひとはすぐに忘れてしまう。


立ち直るためのプロジェクトなら、立ち直った先で、会社が出資した分の収益をえないといけなくて、


ー少子高齢化社会だ。


いずれどんな分野でも、人手不足になっていくなら、


ー優秀な若手と、知識豊富な高齢者を人材確保していける。


俺には4月から新しい派遣先が決まっていて、新プロジェクトに参加するけれど、俺の部署は営業ではなくなる。


人事部(仮)になる。


ー(仮)。


その言葉がすべてを、あらわしているんだろうな。


できれば、芸能人としての明日菜も参加してほしいけど。公私混同になっちまうだろうしなあ。


もと芸能人なら、鈴木さんがいる。


新規プロジェクトの部署に配置されているのは、イケカマ係長、イケメン先輩、俺、鈴木兄妹。


実は、あんまりいない。


統括者は、


ー日本支社長のハゲ外人。


…いい加減に名前覚えろ?俺。


そう思っていても、俺は、にがてなんだよなあ、人と名前を覚えるのって。


あんまり他人に興味がないけれど、社会人としての最低限のマナーと知識だ。


いや、常識なんだけど。


ーカタカナ苦手な俺。


「春馬兄ちゃん、きいてる?」


萌ちゃんに言われて我に返った。


「おお。きいてる。でも萌ちゃんいるし、楽しいぞ?」


「・・・明日菜お姉ちゃんも苦労するね」


大きくため息をつかれた。


ーなぜに!?


「いまの会話のどこでそうななる?」


「春馬兄ちゃんって、学生時代にすごくモテていたんだよね?」


「ああ。高校入ってからは、なんかモテてたらしいな」


ちなみに俺には、あんまり自覚がない。


バレンタインにチョコをもらった数で言えば、そうなるんだとは思っているが、悪友たちが食べまくったし、ホワイトデーには柴原に財布をかつ上げされた俺だ。


柴原がお返し、していたから、あんまり誰には、どうモテていたかは、よくわかっていない。


大学のお誘いって俺には、意味ないことだったしな。


「けど、俺は、明日菜以外の女に、興味ないぞ?」


「柴原さんは?」


「あれは別格。俺の国宝だ」


「それ明日菜お姉ちゃんに、言っちゃダメだよ?」


「もう言ったぞ?」


「ーげっ」


「なんだよ?」


「明日菜お姉ちゃんかわいそう」


「そうか?納得していたけど?」


だって、明日菜は俺の宝物だぞ?


国宝じゃ触れないじゃん。


ケースに入って警備万端じゃん?


宝物なら愛でたい放題じゃん?


俺がそう力説したら、


「・・・明日菜お姉ちゃんっていいなあ」


萌ちゃんが呆れたように、けど、せつなそうに笑った、


俺は、8歳下の中学生のその姿に、ドキッとした。


・・・明日菜には絶対、内緒だな。




読んで頂きありがとうございます。


少しでも面白かったら、どんな少数でもありがたいです。


☆☆☆☆☆やブックマークよろしくお願いします。


ふたりのハッピーエンドを見守って下さったら、嬉しいでしす。

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― 新着の感想 ―
[一言] 虫の大量発生。そうだったのですか?米国でもアラスカや北部のミネソタ州とかで起こるそうです。 キャベツのタレは、米国でもAmazonで注文できるようですが、米国のキャベツは当たり外れが大きく…
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