第40話 優奈と福岡空港。
私は空港でひさしぶりに明日菜のマネージャーさんにあった。
コロナでの隔離期間をへて、私とお兄ちゃんは福岡空港についた。
正直、こわい。
怖かった、けれど、
「優菜!」
到着出口で、加納さんはただ、私の名前をよんで抱きしめてくれた。
あの頃とかわらない加納さんの香水の匂い。
明日菜とよく一緒にいたから私もよく覚えている、におい。
忘れたはずの、においで、
ーあたたかい。
ただ、
「よかった、優菜」
ーごめんね?
あの自立したたくましい明日菜のマネージャーさんが、加納さんが私をだきしめてくれる。
あのときには、信じられなかったぬくもりで、
「・・・よかった、生きてて、くれた」
加納さんが泣き崩れように私、に体重を預けて泣いてた。
ー生きてて、くれた?
なんで?
「私は生きてますよ?」
「ええ。ええ、そうね?」
私の顔をしっかり見ようって、してくれてるけれど、加納さんの目から、涙があふれて、とまらない。
私の顔を、必死で、見ようとしてくれているのに・・・。
ー私の目からも、涙があふれて、見えなくなってくる。
ああ、そうだ。
あの時もきっと彼女たちは、やさしい寮母さんも、私のマネージャーさんも、たくさんの大人が、
ー私を必死に、守ってくれようとしていた。
なのに、
あまりにも、ネットが、噂が、あの記事が、私の幼い正義感が、純粋な心が、すべてが。
ーただ、私や明日菜の敵にしか、見えなかったんだ。
こんなにも、
ー生きてて、くれて、よかった。
ただ、加納さんがなくんだ。
だけど、お互いに涙、でもう顔もみなくて、だけど、
「ありがとうございます」
あの時ともう私は違う。
お兄ちゃんが私を守ってくれた。
お兄ちゃんが私を救い出してくれて、
お兄ちゃんがもっと私に生きる、そのことだけがどんなにつらいかをみせてくれた。
あの頃の私とはもう違うけれど、
「おかえりなさい、優菜」
加納さんが泣きながら、わらってくれた。
やさしく、だきしめてくれた。
ー声が、やっと、私には、とどいた。
とどいたよ?
明日菜?
「ただいま、加納さん」
私は、加納さんの胸で泣いた。
そして、
「・・・明日菜に会いたいです」
そう言葉にだして、ちゃんといえた。
ーあいたいよ。
ただ、
ーあいたい。
ねえ?
明日菜。
ただ、あなたに、
ーあいたい。
私の言葉に、想いに、
「だいじょうぶ。いまから、私がちゃんと連れて行くからね?」
ちからづよく、加納さんが言ってくれた。
あのときには、私の耳に届かなかった、たくさんの声が、
ーちゃんと届いたよ?
ねえ?
明日菜。
ほんとうに、
ただ゛、
―私は、
あいたい。
ただ、
ーあいたい。
そして、
そして・・・。
「いきましょう?」
加納さんが私の手をひいて歩き出した。
ぎゅっと握って、導いていってくれる。
加納さんにつられて、私の足が、一歩前にでた。
福岡空港のターミナルの外は、まぶしいくらい、優しい春のひかりに満ちていたんだ。
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