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第39話 彼氏と彼女と、人間は二足歩行だぞ?べんり。


ー明日菜の表情が、どんどん変わっていくなあ。


俺は、俺の作ったチンアナゴを手に、笑う明日菜と萌ちゃんを見ながら、ぼんやりと思う。


弥生時代にタイムスリップしたようなこの場所で、明日菜の時間が、過去に巻き戻り、でも、この時代に、復元された集落のように、戻ってきている。


ーものすごく長い時代を経験して、たくさんの争いだって、経験して、そして、いま、


・・・この時代に、再現され、し続けている。


きっと弥生時代にもあったように、子供たちの無邪気な笑い声と、若いカップルのじゃれあいと、子供たちをみまもる大人たちと、のんびり高齢者たちがグランドゴルフをする、緑と花と復元された弥生時代の建物にかこまれたこの不思議な場所で、


ー明日菜の時間が逆戻りしながら、でも、すすみだす。


不思議だな。


ほんとうに、不思議な場所だ。


俺がいま立っているこの場所に、あのへんてこな家に住んで、あの不便なようでしっかり考えられた石包丁で稲をかって、今日は体験できなかったけど、布をおり、火をおこし、ものをつくり、子供をまもり、ただ、命をつないでいった人たちがいる。


生活していた人たちがいる。


ー不思議だな。


ほんとうに不思議な場所で、


ー明日菜が、過去と未来を、みつめはじめた。


・・・すげーな。


マジで明日菜って、starなんだよな。


ー前を向き歩き出すのに、こんな場所をえらぶんだ。


マジで、明日菜って、すげーな。


吉野ケ里歴史公園って、すげーな。


入場料金、


中学生以下は、無料。


大人は、1日460円。


2日間だと、500円。


その差は、たったの40円。、


65歳以上の高齢者は、1日200円。


2日間だと、240円。


その差は、たったの40円。


ー40円は、譲れないらしい。


なぜに!?


・・・たぶん、俺には、


わからない深い理由があるんだろう。


ー40円。


いまでもわりと駄菓子が何個かかえる値段。


だからか。


たしかに40円は、ゆずれないかもしれない。


ーなぜに!?


相変わらず絶好調な俺の思考。


・・・紫原にきいたら教えてくれるかな?


めんどくさいって拒否でおわるな。


そもそも俺も40円は謎のままの方がおもしろい。


だって、来るたびに興味がわく。


入場料金で遊べる。


わくわくできる。


あれ?


俺って、訪問販売ホイホイか?


・・・詐欺には、気をつけよう。


最近のスマホにくるメールって、本気でよくわかんないのがあって、そういう時はめんどくさいけど携帯屋に行く俺だ。


だって、こんな時代だぞ?


俺や柴原がいくらロックかけたって、俺たちのアドレスを知っている奴は、家族とか会社や友人やらいるぞ?


じゃあ、そいつのアドレス帳からかってに、もれるじゃん?


・・・どうやってまもれんのかな。


スマホ持ってないと緊急時に困るしな。


GPSあって便利だしな。


そういや浮気防止?とかで相手をGPS追跡する機能とかあるんだっけ?


明日菜は俺にしたいのかな?


そうしたら俺はどうするかな?


・・・海にしかいねーじゃん。


落ちたら便利だからGPS逆にたのむかなあ。


ー断られそうだ。


いや、明日菜は断って、きいてくれるなら、やさしいイケメン先輩?


ーイケメン先輩、返してくれ?


「・・・春馬くん。そろそろ真央とイケメン先輩から、ひとりだちしようね?」


「げっ、また口にしていたか?」


「ううん。なんとなく」


「ー明日菜やっぱり」


「超能力テストはうけないよ?」


「・・・明日菜お姉ちゃんって、やっぱり、そっち系?」


「「えっ?」」


めずらしく俺と明日菜の声がかさなる。


萌ちゃんがあきれて俺たちをみていた。


「お母さんと同じだよね」


「・・・だとうれしいかな?」


明日菜がふわっとやさしい微笑みをうかべた。


俺と萌ちゃんは。


ー?


だったけど。


明日菜は、とてもうれしそうに、やさしくわらって萌ちゃんをみていた。


おれのしらない、明日菜の笑顔だ。


確実に、明日菜の中でなにかが、かわりはじめている。


13歳のあの冬の屋上で一回つかれてしまって、けど、偶然、加納さんにスカウトされて、一度は東京でオールリセットした明日菜のこころ。


いちどは、オールリセットが成功したように見えたけど、18歳でまたほころびがはじまって、22歳で本当に疲れ切ってしまった。


ー心底つかれちまって、やっとこころから、明日菜が休んでくれたから、


俺のかけたオールリセットは、あんまり意味がないかもしれない。


明日菜は、俺や周囲が考えていたよりも、ずっと、立ち直りがはやい。


そして、性格がすこしかわってきている。


表情や仕草がもう以前の明日菜とはちがう。


明日菜が大切にしていたものは、きっとかわらない。


ただ、


ーのりきった、


ーのりこえた。


ー一歩をふみだしたら、


・・・自然と二歩目を歩き出したんだ。


人間は二足歩行の動物だ。


4本のあしでうごかなくていいんだぞ?


だけど、


もともとは4本足ではじまっている。


ならさ?


辛いときは4本足でふんばって、


つかれちまったら、4本足をほおりだして、


大の字に寝転がって、


そして、


立ち上がったら、


一歩だけ前にだしたらさ、


2歩目はついてくるかもしれないじゃん?


歩きだしたばかりの赤ん坊なんて、そんなもんじゃん?


ほら?


軍曹とテント前の芝生であそんでる凜ちゃんは、転んでもちゃんと手で支えてる。


ふんばって、またおきあがってる。


満面のえがおで軍曹に歩いて行って、軍曹がわらって抱き上げている。


ほら?


きっと、そんな光景は、弥生時代にだってあったぞ?


ここは、そういう場所だぞ?


すべての年代が笑ってるぞ?


ただ、


「春馬兄ちゃん、私、桜見たいなあ」


・・・だよな。


ー弥生時代に桜はなかったから、


吉野ケ里歴史公園内には、


ー桜がなかった。


明日菜に、


あの人に、


ー桜見せたかった、俺。


リサーチ不足な俺。


-弥生時代に桜ってなかったんだって。


マジで盲点だった。


「どうしたの?春馬くん?」


「いや、コンビニでおにぎりやパンかってるから、食べたらそろそろでようか?」


「えっ?もう?」


「うん。じゃないとむこうも駐車場がしまるから」


「むこう?」


「花見の場所だよ?」


「えーっ、空もっとあそびたい」


「そこも遊べるから大丈夫だよ」


俺はわらって、空ちゃんの頭をなでた。


ーどうせ、帰り道なんだよな。


って思ってた。


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