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第14話 彼女と彼氏の洗濯機


念のため脱衣所のカギをかけて、私はもう一度、ふかく、ため息をついた。


そして、手にしていた春馬くんの黒いパーカーを、じっと見つめる。


私の身長は、162センチ。


低くもないけど、高くもない平均で、春馬くんは176センチ。


理想の身長差には、あと1センチたりないけれど、中学時代の春馬くんは、私と同じくらいか、やや下の身長だったから、高校で一気に伸びたことになる。


高校時代の私は、芸能クラスにいたけれど、あまり自分が芸能界に、なじめるとは思えなくて、学業優先で、定期の仕事は、雑誌のモデルくらいだった。


それでも、自分なりに一生懸命に真面目に演技にとりくんだのは、クラスや寮の子たちの影響だと思う。


そもそも、私はオーディションなどを受けずに、運だけで、この世界に入った。


同じプロダクションでも、何度もチャレンジして、ようやく合格した子もたくさんいる。


そうして、努力だけじゃ、どうにもならない人たちも、たくさんいた。


そんな中で、私はあっさり、有名雑誌のモデルが決まり、国民的朝ドラで、女優デビューした。


本当に運だけで、有名になっていった。


本当なら、中学時代のように嫉妬され、いじめられてもおかしくない環境で、私を周囲になじませてくれたのは、春馬くんの存在だった。


彼の奇抜なプレゼントは、いつも、私をさりげなく、助けてくれた。


中学時代のように。


いや、さりげなくは、ないか。


いままでのプレゼントを思い出して、苦笑してしまう。


それにしても、春馬くんの家は、どこもきれいに、掃除されている。


中学時代に野球部で、掃除や洗濯ばかりしていたからかなあ?


球拾いですらなかったのは、リトルリーグ出身者ばかりの中で、春馬くんだけが、部活として、初心者で始めたからだ。


なんで、小学校から習っていたサッカーにしなかったのかは、いまだにきいてない。


足も陸上部並みに速いのに。


ー長距離が。


体育祭なんかでは、どうしても、リレー選手にえらばれるような、短距離に目が行きがちだけど、春馬くんは、3000メートル走で4位に入っていた。


陸上部もいたのに、すごいと思う。


勉強も20位以内には、学年で毎回はいっていたし、真央の言う通り頭がよくて、運動神経がよくて、顔もわるくない。


ただ、性格がちょっと、アレだけど、基本的には、すごく優しい。


私たちは遠恋だけど、いまの時代は、お手軽にテレビ電話やメッセージのやり取りができる。


生活のズレは、あるけれど、いまだに仲はいいと思う。


ーでも、私はなんで、脱衣所のカギをかけたんだろ?


脳裏に、段ボールのなかにあるものや、春馬くんが、お隣さんにもらったという紙袋が、浮かぶ。


話の流れ的に、紙袋の中身は、私の段ボールのなかにあるアレと同じ物だよね?


むしろ、春馬くんが、まったくわかってないのも、どうかと思うけど?


私は、少し考えてから、脱衣所のカギをもう一度まわした。


だって、春馬くんだし。


裸になって、下着を、持ってきた下着用の洗濯ネットに、いれる。


洗濯慣れしている春馬くんの家にも、洗濯ネットはあるけれど、女性用の洗濯ネットは、なかった。


ーあったら、逆にこまるし。


洗濯機にいれる時は、ちょっと、迷った。


洗濯ネットのおかげで、春馬くんの下着を想像してしまったからだ。


自分でも変態かもと、おもったけれど、彼の分と一緒に、洗濯をすると思うと、ドキドキした。


父親の分とは、一緒に洗いたくないのに。


やっぱり、春馬くんは、私にとって特別な存在だと思う。


そんなことを思いながら、浴室の戸を開けたとき、玄関から春馬くんの変な叫び声が、きこえてきた。


ーあっ。もしかして、紙袋を開けたのかなあ。


どうしよう?


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