第34話 彼氏と彼女と目的地、ご到着。
国道385線は、当たり前だけど、有料の東脊振トンネルをこえてもつづいてく。
ー国道だ。
考えた、俺が、ばか、
相変わらず、絶好調にぐるぐるまわる俺の思考。
猿回しの猿みたいな俺の思考。
知ってるか?
太宰府天満宮行くと、猿回し無料でみれるぞ?
投げ銭は、ほんとに、投げ銭だそ?
気に入ったら、前に置いてるバケツにお金を入れるんだけど、後ろでみてる人は、ほとんどたちさるそ?
たち猿だ。
サルだし。
ー相変わらずの俺の思考。
だれか、マジでとめて?
ぐるぐるむだにまわる思考。
は、運転中は一応、運転に関連にぐるぐるだけど。
まだマシな俺。
東脊振トンネルを通過したら、ずっと登っていた山道が今度はくだりで、道はきれいに整備されている。
左手に道の駅見えたけど、まだ、開いてない。
スルーして車は山みちをくだる。
ヴォクシーは安定してる、
カーブでも、安定している。
ーさすが、世界のトヨタだな。
毎回、感心するくらい、
ー無個性。
この形で,カーブで、ひたすら安定していて、クセがない。
これ、めちゃくちゃ大事。
ただ、俺は、マニュアルだから、デミオがすき。
で、空ちゃんのDVDは、クライマックス突入中。
まだ意味がわからないはずの凛ちゃんも、ユラユラ身体を揺らしてご満悦。
チラッとバックミラーで確認したら、明日菜は、空ちゃんの顔を真剣な目でみていた。
俺の胸に、ふいに。さびしさが満ちてきたけど、ぎゅっと口に力をいれる。
もう前歯で下唇を噛んだりしない。
ーしないさ。
あれは、一種の自傷行為だ。
しないさ、もう。
明日菜が逃げないなら、俺だって、にげない。
「あっ、そこ右だぞ?」
おっと。
軍曹が教えてくれないと行きすぎたな。
ーわかりにくい看板だ。
東口がメインゲートだけど、今日は凛ちゃん、空ちゃんがいる。
俺たちの目的地は、西口。
おっ?まだ時間がはやいから、駐車場にあきがたくさんある。
降りやすい場所に駐車した。
ちょうどDVDも終わって、空ちゃん、凛ちゃんも大満足、
「あー、よかった。ハラハラした」
「何回もみてるくせに」
「うるさいなあ。お姉ちゃん。私は何回みても楽しいの!大好きなの!」
「あー、うるさい。ほら、ついたぞ?村上くん、ご苦労様だったな」
「なー?」
…轟木一家は、にぎやかだ。
俺が車から降りると、明日菜はぐるりと周囲を見渡して、首を傾げた。
「ここ、どこ?」
俺は、笑った。
「ようこそ、吉野ヶ里に。弥生時代へタイムマシーンてきたぞ?」