第27話 彼氏と彼女と彼氏の仕事内容。
けっきょく明日菜は、あの日、夕方まで寝てしまった。
ほんとうに、よく寝るなあと、俺は感心した。
ーよく、寝る。
マジで、ねる。
俺は、ぼーっとただ明日菜の寝顔をみていて、まあなんというか、当たり前だけど。
「やっぱ、かわいいよなあ」
って思う。
俺の奥さん、マジでかわいいって思いながら、明日菜のデビュー作を、イヤホンで、スマホで、ぼんやり流している。
えっ?見ないのかって?
だって、明日菜以外のやつも多く出てるじゃん⁈
俺が見たいのは明日菜だぞ⁈
いや、そりゃあ、恋愛映画じゃないけどー。
ーあれ?
なんで俺、恋愛映画は全部見たんだ?
あれこそ、明日菜だけ、みてればよかったんじゃないの?
いや、それでも、キスシーンとかは、みたんだろうけど。
ー俺って、すげーな。
・・・いまごろ、気づくんだ。
避けられたんじゃね?
むだに、傷ついたんじゃね?
―誰が?
俺と明日菜と俺たちを知る柴原。
ってか、俺と柴原なのかなあ。
相変わらず、柴原、まきこむ俺は、悪くない。
柴原のせいには、していない。ただ、
ー勝手に、まきこんでは、いる。
だって、仕方ないじゃん。
あいつも明日菜の嘘を、見抜けなかったじゃん。
ーあんたの、彼女でしょ?
ーお前の、親友だろ?
同性じゃん?
女じゃん?
嘘つくの男よりうまくて、嘘もみやぶるじゃん?
あれ?詐欺って、どっちが多いんだ?
あいてに依存するのは、女の方が、多いのか?
うーん?
柴原が、イケメン先輩に、依存すんの?
明日菜は、俺に依存しているけど、俺と明日菜は、特殊?
それとも、柴原が、特殊?
いや、それなら、軍曹や加納さんやイケメン先輩や一尉は?
・・・イケカマ係長は、どっち?
もはや、
ー人による。
やっぱり、俺って、バカ代表。
そんな俺のまわりは、柴原を筆頭に賢いから、
ー楽。
すげえよな。
楽しくて、楽。
まあ、すてきって、イケカマ係長なら言ってくれて、明日菜は、
ー春馬くんだね?
って、やっぱり、笑うんだろうなあ。
笑って、くれるだよなあ。
俺がいるだけで、全肯定してくれるのって、明日菜くらい。
明日菜が、いないと生きて、いけるのかなあ。
ー生きてはいくけど、きっと、心は死ぬんだろうな。
いや、時間とともに、前は、むくんだろうけど。
―生きる、しか、ないけど。
「明日菜、すげーな」
ほんとうに、つよいな。
女って、つよいな。
けど、やっぱり、か細いよな。
明日菜の華奢な身体を見て、俺は、思う。
本気でジャングル開拓するか?
どうやって、肉や魚をいれよううか?
カラフルが俺の自慢だぞ?
ーあの魚の切り身いれていけるかな?
いけるよな?
てんぷら?
からあげ?
原材料をわかんなくしたら・・・。
「そんなことしたら、食べないからね?もう春馬くんの料理」
って、明日菜が睨んできた。
「あっ、また声にでていた?」
「でてたよ?」
あきれて明日菜が、ベットから抜け出した。
俺のパーカーと明日菜の短パン。
めっちゃ長い脚のラインがきれいにみえて、
「細いななあ。ちゃんと食ってるか?」
って、俺は、やっぱり、きいてしまう。
明日菜は、肩をすくめた。
「だって、寝てばかりで、あまり動いてないから、食欲わかないんだ」
「・・・なるほど。そんな明日菜に、朗報です」
「なに?」
「ほら?」
「純子さんからのメール?」
「そっ。空ちゃんが、春休みに入ったからさ、一緒に遊びに、行かないかって」
「どこに?」
「それは、あしたのお楽しみ」
「明日、行くの?」
「そっ。平日だし、人がいないほうがいいしな」
「春馬くん、仕事は?」
「いまま、年休消化中」
「年度末なのに?」
「俺は、特別」
もともと外国赴任予定だった俺は、ほとんどの仕事を、もう振り分けられていた。
日本に残ることになったけど、俺は営業もだけど、
「配属先は、このまま福岡なんだけどさ。新プロジェクトの一員になったんだ」
「私が、きいてもいいはなし?」
明日菜がマグカップにコーヒーを二杯いれて、ソファーに腰掛けていた俺のとなりにすわる。
コーヒーのいい香りが部屋中に漂ってる。
「うん。べついいよ。単純に、無料の勉強サポートを企画しているんだ」
「塾みたいなの?」
「まだどういう形態にしたらいいかわかんないけどなな。一部ではもう実際に行われているシステムだよ?俺たちの会社は、スポンサーで、一応、俺やイケメン先輩、イケカマ係長も参加するプロジェクトになっていく」
この場合、ちょっと事業が大きくなるから、いろいろな役所との連携がくるだろうけど・
「なんていうか、子供たちの居場所を、ただ作りたいなって思ってる。いや、子供たちだけじゃなくて、いろんな年齢の人たちが、気軽に、あつまる場所?」
赤ん坊から、年寄りまで、利用できて、優しい空間をつくりあげる。
子供が悪さをしたら、年寄りが冷静に注意できる世界。
ーお互いにキレッキレッの世界じゃ意味ないから、いまは、慎重に考えているプランだ。
「俺は、教師になることを、あきらめてないぞ?」
「えっ?」
「エンゼルパイは、いまないなあ?」
「えっ?」
「エビセンも、ないなあ」
「えっ?」
「エッグタルトは、あまいなあ」
「えっ?」
エビフライは、エビ買えばいける」
「・・・フライはいいや。春馬くん」
って、少し呆れて、明日菜が、わらう。そのまんま。隣にすわる俺によりかってきた。
「教師はやめないっていうより、子供たちとかかわりたいんだね?」
「うーん、うちの会は、すべての年代、とだな」
「ーすこいね」
「まあ、福岡支社の人間なら、どんな悩みでも対応可能だろうしな。俺は、不登校で塾や家に居場所化がなくなってしまった子たちの担当になるよ」
「そっか。よかった」
明日菜が、笑った。
「だから、心配いらないぞ?明日菜のために、俺が俺の夢を、あきらめることはないからさ」
俺は、明日菜の注いでくれたコーヒーを、一気にのみほした。
苦みと熱さで胃が大変。
「大丈夫はるまくん?」
って、明日菜が、いって、
ーバカだな。俺の心配なんかどうでもいいのに。
そう思いながら、俺は明日菜にいった。
「だから、明日菜の夢も全力でもう支えるぞ?」
って、俺は、いった。
そう言えるくらいには、
ーカッコつけさせて?
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