第19話 彼氏と彼女と、たまにはネットも優しいんだぞ?
しばらくして、明日菜が目覚めた。
眠る時間が、短くなってきている。
少しずつだけど、ちゃんと、起きている方が多くなってきた。
ーまあ、眠っててもきれいだし、可愛いけど。
って思う俺は、相変わらず明日菜ひとすじ。
柴原じゃないぞ?
!ほんとだぞ?!
柴原は、もはや、俺の国宝だぞ?
・・・レベルアップかもしんないけど。
国宝だと触れないじゃん。
みんなの人気者じゃん。
明日菜は、もう俺だけの宝物だぞ?
いや、そりゃあ、加納さんたちや明日菜の家族にとっても宝物だろうけどさ、どれにせよ、
ー宝物なら、自分で愛で放題だ。
壊れないように、傷つけないように、大切に磨いていくよな?
なら正真正銘、俺の宝物は、明日菜だ。
で、柴原は、別次元の国宝。
・・・大仏?
「・・・おはよう、春馬くん。また、真央に怒られるよ?」
「げっ、明日菜ってやっぱ、エスパー?」
「ぜんぶ口にでてたよ?」
「マジか」
「うん。真央が国宝で、私が宝物って、どういうこと⁈って一瞬、焦ったけど」
と、言葉をくぎると、明日菜がすこしあきれたように、でもやさしくわらった。
「そのあとの言葉で、納得したから、いいよ?」
「・・・ダダ漏れじゃん」
「考え事する時は、口をとじるように、練習しようね?春馬くん」
「マジの助言だよな、それ」
「うん」
「・・・善処します」
俺だって、ひとりで、いつもブツブツ言ってる人間にはなりたくない。
いや、個人的には、ありなんだけど、
ーいまの世の中は、俺みたいのには、厳しい。
ひとりごとって、どこまでが、許されんのかな?
満員電車やバスだと常にハンズアップの俺。
一部の人間のせいで、なぜかこうなった、俺たちの満員電車通勤。
車両ごとでも無理なら、電車自体をそうすれば?って思うやつは、いるんだろうなあ。
特に冤罪被害者とか。
都会じゃもうあるんだっけ?
冤罪認められても、社会復帰後もいろいろ言われそうな気がするし、たぶん真犯人はいまも、のうのうと生きてるし。
まあ、そのうちどっかのえらい奴が、防犯ブザーの監視カメラ付きで、サーモグラフィ画像までセットとか、あるんだろうな。
いや?もうあるかな?似たヤツあるなら、あるかあ。
絶対、痴漢なんてあほなことするやつらは、体温に変化があるはずだしな。
はやくこねーかな。そんな時代。
・・・監視カメラはこわい、俺。
一応セキュリティーには、こだわったファミリーマンションだけど。
うーん?
俺はスマホをとりだして、めずらしくネットをひらいた。
となりで明日菜が、珍しそうに、ながめていて、
「どうしたの?」
「うん。さっき、明日菜が寝ている時に、軍曹からメッセージがきてさ」
俺は、とあるお茶会、を、ひらいた。
ーネットで、いつも自由に誰もが、なんでも、つぶきされてる、主婦のランチタイムみたいな、俺にとっては、
ーお茶会。
が、今日もトレンドなるものをひらいていて、
ー神城明日菜引退か?
ー体調不良により、事務所契約更新せず?
まだ?マーク付きだけど、
ー神城明日菜、極秘入籍か?
ー相手はうわさの車の持ち主か?
・・・婚姻届けって、守秘義務をきちんと守られてんのか?
そういえば出した時に、同じように、カップルがだしにきていたしなあ。
ふつうに記念にスマホで写真や動画とるしなあ。あれは確かに記念に、なるしなあ。
だけど、他人を映らないように配慮するけどなあ。いまや発表会なんかも、他の子、撮っていいのか悩むぞ?
だって、なあ。事前にそういう注意くるしなあ。空ちゃんのピアノ発表会で、思った俺だ。
でも、守るヤツと守らないヤツが、はっきり分かれるんだろうなあ、
そもそも注意がきちんと耳にはいれば、俺のデミオは、映らないはず?
で、いまは、すでに、俺のファミリー物件のマンションが、周辺モザイクでのってて、
・・・地元だと確実に、バレるだろ?
「えっ?大変じゃ・・・」
明日菜が慌てるけど、そこは、軍曹だ。
ーさあ?みたことないですね。それに彼は好青年だし、単純にそれならうれしいですね。
ー私もないですね。もしそうなら、たのしいわ。彼は優しいから。
ーうちの子たちが騒いでいても、にこにこしてくれるんですよ?
って、俺のマンションの住人の人たちが、お茶会に参加している。
みんな知ってる。
だって、上下左右のファミリー物件。
毎日ドタバタで、たまに俺とあうと謝ってくれるが、逆に俺は、朝早い時間に釣りでデミオのディーゼル音を響かせることを、謝っていた。
その人たちが、いっせいに、お茶会に反論していて、
ーでもこれって、私たちの子供たちにも、危険なんだけど。
って一人が発言して、ものすごい量の批判メッセージがおくられている。
「まあ、削除するしかなくなるだろな」
恐るべしママ友ネットワーク。
こういう使い方もあるらしい。
「こんど一緒に挨拶しに行こうな?」
俺は明日菜の頭を、なでてやる。
明日菜は呆然として画面をみていた。
そして、また、泣いた。
たまにはこういう優しいネットだってあるんだぞ?
なあ?
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