第18話 彼氏と彼女と彼氏と勝手に巻き込んで、反省しよ?
明日菜が泣きつかれて、また、うとうとしだした。
明日菜には、投薬治療はされていない。
抗不安薬、向精神薬、睡眠導入剤、etc。
たくさんの薬があって、昔は大量に処方されていた薬も、いまはきちんと管理されている。
そういう薬は、薬局や病院のネットて共有されていることも多くなっていて、精神系の病院は、基本的には複数受診できない取り組みになってきてるし、俺の知ってる病院はそうなってる。
ただ、セカンドオピニオンを気軽にできないデメリットは、あるのかなあ。
例えば、数が少ない小児心療内科でもセカンドオピニオンを受けようと思ったら、転院前提で紹介状がいることがほとんどだ。全国的にはわからないけど。
それくらい薬は管理されてる。たぶん。絶対とは言えないのはわかってる。
病院によっては、ザル。
ザルって、ボス猿じゃないぞ?
あのコメ洗うザルだぞ?
いや、俺はめんどうだから、釜で洗ってる。説明書には、NGで、でもやっちゃう俺。
いや、コメ洗うのは、ボールか?いや野球ボールじゃないぞ?
ーますます、ダメじゃん⁈
とりあえずザル。
猿じゃない。
濁点がいる。
丸はなんていうんだっけ?
ーニホンゴ、ムズカシイ。
ーにほんご、むずかしい。
ー日本語、難しい。
漢字、わかりやすいな。
どっから、漢字になったんだ?相変わらず絶好調にぐるぐるまわる俺の思考。
ー退屈しない、俺の思考。
某お笑い界の大御所が、ずーっと話してるって有名だけど、俺の思考もずーっとぐるぐるまわってる。
ただ、慣れてくると、まあ、脳内で爆笑してる。
ーさすがに声にはださないぞ⁈
たぶん?
俺は、口が、かるい。
ヘリウムガスより、かるい。
チョコレート、なみに、
ーかるくて、なめらか。
あれ?アイスだったか?
ーどうでもよくね?
相変わらずだな?俺。ただ、慣れてくると、当たり前だけど、子供の頃から絶好調だから、もはや脳内で大爆笑できる。
平和な俺。たぶん、柴原もへいわ。明日菜は、
ーちいさな言葉でも、傷つくくらい、繊細。
ある意味、俺と柴原は、恵まれてるんだよな。だって、ふつうの人とは悩みが違う。
というか、
ー悩むのか?俺?
明日菜の悩みをきいた時は、一緒に色々思っていても、俺、自身のことで、悩むのかなあ。
まあ、みんなそうかあ。自分自身で悩むって、あんまりないよなあ。
だって、ふつうだもんな。ふつうの人たちだって、他人が絡むことしか悩まない。
他人からの評価や価値観の違いでしか、悩まない。だって容姿や成績だって、誰かとの比較だよな?
なら、俺や柴原は、あんまり他人の目を気にしない。
だから、ラッキー?
その分を自分がたいせつに思う相手に、一緒に悩んであげられる。
めちゃくちゃラッキーで、基本的に能天気な頭ん中。
ーべんり。
そして、明日菜からきくまえに、実は、加納さんから、だいたいの事情はきかされていた。
だって、赴任先予定の場所にいたから。前もって、明日菜のことで相談されていた。
し、
ーあの子の分も私たちは、明日菜を守りたい。
切なく、ただ、悔しいと、
いつも勝ち気な瞳の、自信満々な、加納さんが、言った。
俺は、
ー明日菜のなにを、みてたんだ?
俺も柴原も、明日菜やその人の、真実、には、目を向けなかった。もっと、よく明日菜をみてれば。
「やっぱり、ちかくにいなきゃ、守れないじゃないか、じゃ、ねーよな」
涙で濡れた明日菜の頬に触れる。つめたい涙の跡。
「距離?ちげーよ。俺が俺にいいわけしただけだよ。都合よく明日菜やまわりの嘘を信じた、かった、だけだ」
不甲斐なさすぎて、むしろ、笑える。笑えすぎて、
ー泣きそうだ。
「なあ?ネットカットしたってコレだぞ?俺みたいなヤツで、ほんとにーは、言い訳だな」
さすがにそれはない。俺が勝手に明日菜を手放させなくて、強引すぎる、
ーデタラメに、ただ、俺の気持ちを優先させただけだ。
「もう決めたんだ。決めただろ?」
自信がないなんて、逃げるな。俺は自分にいいきかせる。
いまはあの紙切れ一枚の自信しかないけど。
紙切れ一枚の重さが、もっともっと、重くなるかもかもしれないけど。
ー世帯主。
いつかは自信満々に、
ー世帯を背負って生きていきたい。
明日菜と一緒にまもりたい。
まあ、
明日菜が一緒の墓入りたくないって言われたら、まあ、悲しいけど、受け入れよう。
死んだあとまで俺に縛られて欲しくないし。寂しいけどさ。こんなに強引に結婚してもらったんだ。
一緒のお墓に入ってほしいって、昔はプロポーズにあったらしい。
いまもあるかあ。地域差あるよな?まあ、それが理想だよなあ。
いいなあ。自信がなきゃ言えないプロポーズ。
プロポーズのセリフって、マジで考えたんだぞ?あれ?俺、プロポーズしたの、
婚姻届けだした後じゃん⁈
そりゃ、
ーもう結婚してるよ?春馬くん。
明日菜が優しく苦笑いしてたな。あれぞ苦笑いで、
しあわせな苦笑い。を、俺は知った。
し、
「そもそも明日菜は、まあ俺だけど、夫婦だからって、夫が世帯主なわけないしな」
ー相変わらずアホだね?村上。
柴原の幻聴すら聴こえる。
ーあとはもう私は、池 真央、だよ?
まかしとけ?池?
「いや、先輩も池だぞ⁈」
職場は、旧姓なのか?
だから、夫婦別姓をもとめんのか?
「…当事者じゃないから、パスだな」
身近な問題になったら考えよう。身近になんのかな?
まあ、そん時考えよう。そもそも、明日菜がシャワー浴びてた時に、チラッとみたニュースで、
ーあっ、4日前に開花宣言じゃん。
明日菜さわぎで見てなかった。
というか、いまチラッとみれば、当たり前にニュースはコロナか、世界情勢で、他のニュースは、チラ見程度ではわからない。
ネットは、どれがほんとかわかんないし、視覚優位な俺には、まだニュースがわかる。
リアル映像が必ず流れてる。コメンテーターは、正直、知らねー。
というか、
「…けっきょく、明日菜ん時にも嘘なら」
ーみんなどの記事を、信じてんだろ?
って思ってる。かなり真剣に思ってて、
「ニュースの現地映像の表情や言葉、声、音、画像でだけしか、判断つかねーし、たぶん、あの有名セリフなんだよなあ。ぜんぜん使い方違うけど」
…なんも言えねー。
ただ、哀しみと憎しみの負の連鎖しかうまれない。火種はずーっと残る。
世界中の紛争地域、がそうだ。
しか、俺にはいまはみえない。
だから、
「身近にいるんだ。明日菜はちゃんと、俺が守るからな」
きっと、もっと、明日菜に現実をみせろって言う意見も多いだろうけど、
…まだ、はやいんだ。
明日菜は、目覚めたばかりだ。
めちゃくちゃ、甘やかしてる。そうわかってる。
けど。
「ーいまは、俺が守るよ?かわりに考えるから。あとから、また、一緒に考えるよ」
ーやっと、言えない想いを、打ち明けてくれたんだ。
「ありがとな?明日菜」
そして、やっぱり。
ーよくがんばった、な?
ー偉かった、な?
しか、ないんだなあ。俺には。
ただ、明日菜の寝顔が愛おしいと思って、
やっぱり、
ー俺が誰よりも、
守りたいんだ。
「愛してる、かあ」
いつかちゃんと言葉にしたい。って思った。
ようやく、前に進んでくれる。
明日菜も、
ーあの人も。
加納さんたちも。
俺と柴原は、
ー反省会だな。
相変わらず、柴原ばなれできない、俺。
でも、
俺のいちばんは、ずーっと明日菜だ。
ほんとだぞ?
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