第16話 あの子と飛行機。
それは、本当に急だった。
いきなりの退避命令。
日本からの緊急連絡。
私とお兄ちゃんは、現地スタッフの人たちに促されて、国際空港から飛行機にのった。
ー乗らないと、迷惑がかかる。
お兄ちゃんは、そう言った。
そういう危険がおきた時の対応マニュアル。
ありとあらゆる危険をみていないと、
ー活動できない。
もしも、の話だよ?
お兄ちゃんや他のスタッフの人たちは、私にそう言った。
・・・あの日、日本から逃げた私が、生きることを学んだ場所。
生きることが、難しいってことを痛感した場所。
いままでの苦労なんか吹き飛んじゃうくらいの、現実、を知った場所。
から、
ー私は、また逃げるんだ。
そう泣き出しそうになった私に。
「僕らにできることがないんだ。逆に資格もない僕らの存在が、彼らを危険にさらすかもしれない。やさしい人たちをまもるためでもあるんだ」
お兄ちゃんは自分にも言い聞かせていた。私たちのボランティアはそういう種類の活動だった。
そして、たしかに、やさしいあの人たちがいざ逃げようって思った時に、私たちの存在がためらうものになるかもしれない。
・・・けど、
私はきゅっと唇を、ひきむすんだ。
「だいじょうぶ。また許可がでたら、必ずこよう?」
また絶対に、あおう。
お兄ちゃんがいった。
そして、エコノミークラスにのっている。長時間のフライト。
乗り換えもある。
乗り換えの国でも時差がある。
休める時に休んでなくちゃ。
だって、
だって、
ー明日菜。
もうすぐ、逢える。
・・・あってくれるかな?
・・・忘れてないかな?
・・・あいたくない、かな?
・・・あいたい、けど。
私は、実家経由で連絡をくれたそのひとに、
ーかげからみたい。
そう返信した。
ただ、遠くから、幸せな明日菜がみれたらそれでいい。
いろんなことがいざ日本ってなると私の記憶をフラッシュバックさせる。
だって、一部のひとたちはほんとうに、しつこい。
ー一般人にも厳しい。
国民総員パパラッチ。
私はネットの怖さを身に染みている。ただ、
ーもう、対策はでてきてるよ?今度はもう僕らは訴える権利があるんだ。匿名?そんなうまい話があるわけないだろ?なんであの有名な無料アプリがいまごろ訴えられたとおもってるんだ?初期には当たり前の事実で、ちゃんと注意もあったんだ。ただ、ちがうアジアの国だった記憶はあるけど。だから、いくら言われても、やらない人が存在するんだよ。なのに、みんなが多数になると、都合のいい現実しかみないんだよ?
行政が使いだした時には、
ーマジか?!
って本気で驚いたとお兄ちゃんは言った。
で、
この国の情報って駄々洩れだ。
って本気であきれて、なら逆の発想もできるんだよって私にわらった。
ー匿名?
ありえない。
調べれば必ず簡単にぼろがでて、いまたくさんの被害者がたちあがりはじめている。
ーだから、こんどは守るよ?
そうお兄ちゃんが笑ってくれた。し、私にメールをくれた人からも必ず守るって書いてあった。
ー明日菜はまもる。あなたの分もまもる。
涙がでた。
・・・あのときには気づけなかった。
やさしい大人の存在に。
ちゃんと、あいたい。
でも・・・。
ーまあ、こわい、よな。
ってお兄ちゃんが頭を撫でてくれて、
ーすこしねよ?
って優しくわらった。
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