第15章 彼女と彼氏と彼女のぎもん。
ドライヤーで髪を乾かして、ふつうに街でも郊外でもみかけるカジュアルな服に着替えて、私はダイニングに顔をだす。
私がえらんだ、というか、千夏さんが私に選んでくれていた服は、
・・・私のイメージにはない服。
「・・・髪も切った方がいいのかなあ」
でもいまは、みんなマスクの時代だし・・・。
もうあの世界をはなれた私は、目立つのかなあって思ったけど。
ーめだたないはずない。
もう幼少期からの経験からまなんでる。
「おっ?かわいいな?明日菜」
って、春馬くんが笑った。
「・・・本音は?」
「よくわかんねーけど、なんかちがうのは、わかる」
「相変わらずこういう時は素直だね?」
「いまはいつでも素直だぞ?」
「・・・うん。ありがとう」
「だろ?」
「私には、ないんだ」
「ん?言った方がいいのか?」
春馬くんが本当に、きょとんとして、私はちょっと考えて、
「まだ心臓にわるいから、いらない、かな?」
そう思った。
だって、春馬くんはあの日から激アマだ。ほんとうに、砂糖吐くってあるんだなあっておもうくらい、
ーすごく素直で、手加減してくれない。
うれしいけど、私の方の経験値がたりない。
ーで、負けてる。
手加減というか、みて、くれてる。
うれしいけど・・・。
「ごはんたべよ?」
「あっ、手作りドレッシングあるぞ?」
って、七色のなぞに輝くドレッシング。
カラフルじゃなくて、
ー春馬くんの色。
だから、あたりまえだよ?
「ごめん。それはいらないかも?市販のある?」
「・・・だよな」
レシピ通りにつくるとなんでこうなるんだ?
って本気で首を傾げてる姿も可愛いんだけど。23歳の男の人がかわいいなんて感想はきっと彼女や奥さんしかもたない感想だとおもうけど。
ね?
春馬くん。
私はあきれた。
「・・・味見って言葉知ってる?」
「・・・盲点だった」
って少し茶色がかった瞳を見ひらいた。なんでほんとうに、気づいてないんだろ?
ね?
春馬くん。
春馬くんは、
「やっぱり春馬くんだね?」
「だから、俺が俺でなきゃ誰なんだ?」
「-私の大切な人」
「やっぱり、このやりとりも定番化するのか?」
「いや?」
「明日菜が安心するならいいよ」
って大きな手が私の頭をやさしくなでてくれた。
私は猫みたいにわらった。
ね?
ーだいすき。
ーずっと、すき。
そう口にしたら、きっと、また泣いちゃうから、春馬くんの前では笑っていたいから。私は、ただ、笑った。
春馬くんはちょっと意外そうな顔をしたけど、
「俺も好きだよ」
っていってくれたけど。
ね?
「・・・ドレッシングのこと?」
「明日菜、やっぱりいっかいー」
「超能力テストはうけないからね?」
「・・・はい」
そもそも私のこれは春馬くん専用なんだよ?
って毎回思うのになあ。
「はい、ドレッシング」
手渡したら素直にうけとって、
「自分のつくったドレッシングは?」
「-胃がよわいから無理」
「・・・春馬くん?」
「・・・またトイレに立てこもるぞ?」
それは、こまる。
私はだまってサラダを口にした。
もちろん、
市販のドレッシングは美味しかった。
サラダはだって、素材そのものだもの。
って、思いながら、
「おいしいよ?」
「だろ?福岡がほこるピ〇トロだぞ?」
って、胸をはった。
春馬くんはほんとうに福岡がすきなんだなあって、思って、
私は東京に置いてきたマグカップはどうしたのかなあって考えてた。
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