第12話 彼女と彼氏と彼氏のサラダ?
私は、ふと鼻先にかおる匂いに目が覚めた。
ー?
東京の寮の私室とは、ちがうにおい。
で、
かいだことのない、においで、
ー美味しそう?
くぅ。
と小さくお腹がなった。
そして、
「あっ、起きたか?明日菜」
私の大好きな春馬くんの声がする。
私は目をあけた。ああ、そうだ。ここは、春馬くんのお家だ。
福岡のどこにでもあるファミリー物件だ。
「おはよう。明日菜」
春馬くんが笑って、私の額にキスをしてくれた。
まだ寝ぐせで、ぼさぼさの髪に、
ーぼさぼさ。
急に、意識がはっきりした。
「お、おはよう。春馬くん」
「ん?どうした」
「えっと・・・。髪がぼさぼさだし、あの・・・」
「シャワーなら使えるぞ?」
春馬くんがお風呂を指さす。私は素直にお礼をいった。
「・・・ひとりで平気か?」
って言葉に、胸の鼓動が、ドクンっとはねたけど、春馬くんのすこし茶色がかった瞳は、私のことを、ただ心配してくれている。
そういえば、きのうは、マネージャーが付き添ってくれたんだ。
もう、元、マネージャー。
元、なんだ。ずーっと、私を13歳からみまもってくれていた人。私にとっては、もうそばにいるのが当たり前になっていた、マネージャー。
―加納 千夏 さん。
もう千夏さん。かあ。不思議だな。
「明日菜?」
「あっ、うん、大丈夫。ひとりでできるから」
「マネージャーさんから、ひとしきり、身の回りのものが入ったバック預かってるよ。そこにある」
「千夏さんだよ?」
「ああ、そっか。もう加納さんだな」
やさしくわらって、私の頭をなでてくれる春馬くんの手がひんやりしている。
水をつかったあとみたいで、そういえば、いい匂いがしている。
ふとダイニングテーブルに目をやって、
「なにこれ」
ついそう声がでちゃった。
食卓にあるのは、
「みろ?渾身の、ジャングルだぞ!」
森から、進化しただろう?って、得意げに春馬くんが胸をはる。私はあきれた。
「森って、ブロッコリーだよね?」
「そうともいう」
「それしか言わないからね⁈」
「えー」
「英語でもブロッコリーだよ?」
「ええっ!」
「英語くらいは私もわかるよ?」
「えっ?」
「英単語ならなんとかなる」
「ええー」
「ええ。だよ?」
「・・・明日菜やっぱりいっかいー」
「超能力テストは、うけないよ?」
ーなんで、いつも本気で残念そうな顔になるんだろう。私は、ちょっとあきれて、でも、やっぱり、笑顔になった。
ただ、またへんな言葉遊びが始まる前に、口をひらく。朝からは、あんまり、付き合いたくない。
だって、わりと、
ーあたまつかう。
「それで、これは、サラダ?」
「おお、ちゃんと、動物もいるぞ!すごいだろ?」
って.無邪気に、嬉しそうに、赤いウィナーでつくったチューリップや、ゆで卵でつくった奇妙な動物なんかをゆびさす。
ミニトマトやヤングコーン、レタスやetc。
カラフルな色彩は、絶妙に、
ーカラフル、だね?
カラフルとしか言えないサラダ。
「・・・ほんと、色彩は、独特だね?」
あの謎のお菓子も、いつも不思議な色をしていたし、まあ、今日のはサラダだから、むしろ、
「ーどっかのおしゃれなカフェみたい」
「だろ?スープは、インスタントがあるぞ。パンは食べる時に焼くからな?」
そういえば、真央が高校のキャンプなんかは、春馬くんは使える、って話していたなあ。
人の彼氏を、使える、ってなに?って正直思ったけれど、これをみちゃうと。
ー使えるなあ。
そうおもった。
というか、
「ありがとう。春馬くん」
「どういたしまして」
春馬くんがにっこりと笑ってくれた。
やさしい朝がはじまった。
ちなみに、千夏さんは仕事で一緒には食べれなかった。
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