第10話 彼氏と彼女とあのガイコツ。
明日菜がまたすやすやと眠りについて、俺はなごりおしさを感じながら、そっと身体をはなして、ベットからおりした。
そして、両手をあげて背伸びをしたら、
ーポキポキ」
妙に軽快な音がして、身体がなった。
ってか、骨がなって、俺のあたまは、つい国民的キャラクターのあんこが入ったパンにでてくる、理科室の標本さんをおもいだす。
あれ?骸骨標本にあの服を着せて、理科室にいたら、いちやく子供たちのヒーローじゃね?
ー服って、すげーなあ。
ついでに、かつらもかぶせていく?
おおっ、いろんな外国人ができる。
ーって、そんなわけねーだろ。
日本人の骨格サンプルだろうし。
ーだよな?
まさか外国人の骨格サンプル模型が理科室にいるとかないよな?
幽霊よりもこわくね?!
・・・あいかわらず、俺のあたまは、絶好調にへんな方向にまわってる。
で、とりあえず、ベットで体を、標本は、カタカタカだけど、俺は、ポキポキして、最後に首をまわしたら、
ーゴリッ!
ってひときわ、大きな音がした。
「ー痛っ」
朝のストレッチで首を痛めそうな俺、村上春馬、
―23歳。
「若いはず?」
じっと自分の腹をみて、さっきの明日菜の甘え方を思い出して。
ー少しは身体を、鍛えよう。
そうこっそり思った。
まあ、もともとサルみたいな俺だ。
俺や明日菜たちの南九州の故郷は、福岡よりもずっと田舎で、田舎だから庭付きの一軒家がメインだった。
で、俺はサルだ。
小1くらいで屋根からやわらかな地面に「靴」をはいてジャンプして落下する感覚あそびをしていた。
「靴」はいて、「やわらかな地面」さがして。
こういうことを小学校からやるのが俺だった。だって、裸足だといたいし、コンクリはあぶない。
いちいち家にはいってやると叱られるから、靴は屋根に頬り投げて、裸足で色々な場所をつたって屋根まで上る。
で、また、落ちる感覚をたのしむ。
「・・・ろくでもない遊びをエンドレスだったなあ」
男の子ってそんなもんか?いや、兄貴はしなかったなあ。
ん?
靴とやわらかな地面だけって、俺に厳しくいってきたのは、親父だったような?
親父はあんまり怒らなくて、仕事で休日もいないことが多くて、どちらかといえば、兄貴や母さんは、見下していた気もするけど、
たぶんうちの場合、母親、兄貴、犬、親父、俺?
ー犬より俺と親父は、低いのか?!
マジか。
「衝撃の事実」
って思わずつぶやいた。親父にしてみれば、一緒にするな、だろうけど。
でも、まあ、いいや。
俺は親父が好きだし、尊敬している。
子供の頃から、親父を助手席にのせてくれて、シートベルトの大切さとか、車間距離の大切さ、川をみかけたら、川のお約束。
そんないいろいろなことを、ささいなことを、繰り返し、俺に教え続けた。
まあ、俺のまちがいなくルーツだ。
そういや、勉強については、あんまりいわれなかったなあ。
漢字がわからず苦戦しても、
「意味が分かれば、読めれば、とりあえず生きていける。心配するな」
って、言われて、
「どうせ意味が読めるなら「形」はなんとなく覚える。あとは、パソコンやスマホがどうにかしてくれる。どうせ、そういう時代になる」
ーさすがに、それはない。
あきれた、おれだ。
まあ、気分は楽になったし、柴原にも、にたようなことを言われれて、クイズ形式で結局はおぼえた。
だって、漢字検定の6級とかは書き順だけ4択問題とからしいし。
なら漢字もテストで、選択問題の時代がくるよなあ、
たいへんな時代なんだから、ちょっとくらいずるがしこくてもよくないか?
って、萌ちゃんに教えながら言ったら、
「・・・パパに教えてもらう」
ってあきれた顔をされた。
ちなみにに俺は作文でも同じ感想で、作文が苦手っていった空ちゃんに、
「なんで?作文は自由だぞ?!自分で自分のすきな漢字と言葉を選び放題だぞ?」
だって、評論や論文じゃないじゃん!
ーやっぱり一尉にいかれた、俺。
あれ?萌ちゃんから、春馬兄ちゃん教師にむいてるねっていわれたのは、嘘じゃないはずなのになあ。
いったい、なんの教え方がうまかったんだ。
まさかクロムブックを俺に解かせるためのお世辞か?!
「・・・マジか」
女の子ってすげーな。
もし俺に娘ができたら、俺には、もう一生勝てない気がする。
生まれたら、だけど。
そのうち、渇望することもあるのかなあ。
そもそも俺の場合、明日菜にオールリセットかけたくて、わりと強引にした結婚だしなあ。
まあ、いずれは、って考えていたし、タイミング的には、あっていたんだけど。
ーかけにはかったけど。
「まさかの戦争かあ」
ちがう意味で、大きくため息がでた。
だって、なあ。
俺の曽祖父は、戦争体験者だ。
ー二度とあんなことは、やっちゃいかん。
その時代を生きた人たちの言葉だ。
歴史はいろいろあって、正直、俺は、どれがただしいのかは、わからない。
でも、
ー二度と戦争をおこしゃいかん。誰も幸せにはならん。
その当時を生きぬいた人が言うなら、そうなんだろう。
けど。
「いまは見てるしかないし、ほとんどの人間がそうだよなあ」
訴え続けることは当然だけど、じゃあ、現地にいってボランティアします。は、少ないよなあ。
せいぜい俺にできるのは、コンビニ前の募金箱に釣銭いれるくらいだし。
ネットでいろいろ書いても、それが本当にあってる情報なのか俺には、わかんないしなあ。
ーコロナワクチンみたいだな。
5歳からの子供にも提供がはじまった、ワクチン。
ー親の責任で、って、なってるけれど。
イケメン先輩の妹さんが看護師さんで、うつ、も、うたない、もどっちも正解。
そういったたらしい。
重症化リスクの子たちは、コロナにかかった時のことを親は比べちゃうだろうし、元気な子たちは将来を考える。
ーどちらも、当たり前、の親心だ。
ただ、ほんとに重症化リスクが高い子の親の中には、認可を待っていた親もいることをしってほしい。
とは、言っていたなあ。
で、だから、
ー親の責任、なんだけど。
子だくさんな柴原のお姉さんに言わせると、母子手帳をみてみたら、とんでもない予防接種の記録が山になってるらしい。
そのひとつひとつに使用したワクチンと医師の印。そして、承諾書をかいたきおくがあって、副作用の説明もあって、
重篤な副作用もかいてある。
100%大丈夫な予防接種は、すべてにおいてないけれど、
かぎりなく100%を目指して作っていってくれてるんだ。
たぶん、きっと、もうすぐ安全なワクチンは、できるんだろう。
ただ、その前にコロナにかかると、そこまで未来がつながらない子たちもいる。
いまは、うちの地域は優先的にコロナワクチンが回っているらしいし、それすら、おやの、判断で。
どんな判断だって、
ー親心。
「なんだよなあ」
まあ、俺も明日菜もワクチンを打ってるから、あの倦怠感やだるさ、熱、腕の痛みを子供たちに味わせたくない気持ちはわかる。
一尉も軍曹も萌ちゃんは、うったけど、空ちゃんは様子見だしなあ。
まあ、いっか。
どっかのえらい奴がどうにかしてくれる。
ただ、柴原のおかさあさんの感想は、
ーうちのチワワの予防接種より少ない量でほんとに効くの?!
だったってのは、大爆笑した。
さすが、柴原のお姉さんだ。
って、なんでコロナワクチンになったんだ?
相変わらずの俺の思考。
あ、外国でワクチン反対派が車でどっかに突っ込んだっとニュースみたからかあ。
5年後にはみんな死ぬ。
すごい理屈で、まあ、あり得るかもだけど、
明日菜と一緒に死ぬならいっかあって思った俺だった、
ーだって、俺も明日菜も自分の意思で打ってるし。
すでに、過去、なんだよなあ。
はやく薬できないかなあ。
まあ、いっかあ。春だしなあ。
スマホが振動して、
「げっ!」
さっき、別れた親父からのメールで、
インターホンが鳴った。
あけると、青ざめた顔の明日菜のマネージャーで、
「大変よ。村上くん!」
またデミオがチラホラ動画にみえてきた。
そう言った。
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