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第9話 彼女と彼氏の彼女と彼氏と例のやつ。


やさしい、ひだまりのような、ぬくもりに、私の口元が、ふにゃりと、ゆるむ。


そしたら、その唇に、そっとふれる、あたたかな、感触。


「ーんっ?」


声がでて、ついでに、瞼もあいた。


おだやかな、春の日差しが、カーテンの隙間からはいってきている。


ー?


あれ?


東京の寮の部屋は、こんなだったかな?


いつも、誰かは、必ず部屋にいてくれたけれど。


ーとても、さびしくて、孤独で、くらくて、つめたいのに、


ー居心地がよかった、あの世界。


ー?


一瞬、身震いがして、両肩を両手でおさえたら、


「だいじょうぶだよ?明日菜。なにか怖い夢でもみたのか?」


って優しくて大きな手が、ふわっと私の身体を、だきしめてくれる。


あ、


ー春馬くん。


あ、


ー春馬くん、だ。


無意識に肩の力がぬけて、私は微笑んだ。


そうた。ここは、福岡だ。


昨日の朝に、私は春馬くんにちゃんと、


ー釣られちゃった。


ほんとに、チョロインだけど。


ね?


春馬くん?


「・・・夢じゃないよね?」


私が恐る恐るきいたら、春馬くんは、にっこりと笑ってくれた。


ーけど、


「夢にしてもいいよ?」


「へっ?」


「へいわな夢にしよ?」


「へっ?」


「ヘンゼルとグレーテルだって、幸せになったよ?」


「へっ?」


「ヘッドフォンでなんかきく?」


「へっ?」


「ヘーゼルナッツも、うまいよな?」


「へっ?」


「平均的な鳴き声は、モー」


「へっ?」


「平均から外れたヤツの鳴き声が、ニャー」


「へっ?」


「平均身長はー言いたくないな」


って、楽しそうに言ってたのに、いきなり春馬くんが、顔をしかめる。


だから、わかった。


ね?


春馬くん。


私には、


ーわかちゃった。


ね?


春馬くん。


それと、これは、


「・・・私もアレはいや」


べつ。私は顔をしかめちゃうよ?春馬くんの前じゃ可愛くいたいのに。


でも、春馬くんは私の返事に嬉しそうな顔をして、


「明日菜、一回ー」


だって。


だから、


「超能力テストはうけないよ?」


何回目かなあ、このセリフ。


「エスパーかよ」


「春馬くん限定でね」


正直、きっと、真央には負けちゃうけれど、どうせイケメン先輩だって春馬くんには、まけるんだ。


そんな、真央のいちばんが、イケメン先輩なら、私だって、


ー春馬くんの、いちばんだね?


ね?


「ーん?」


けげんそうに、春馬くんは、首をかしげるけれど、


「おはよう、春馬くん」


目をとじたら、


「おはよう、明日菜」


やさしくキスをしてくれた。


そして、笑った。


私もわらってー。


ーウシガエルでなくてよかったと思った。


・・・やっぱり、春馬くんは、


ー春馬くんだね。


朝から、ウシガエルを会話にだす新婚の旦那様。


ーたぶん、あまり、いない、よ?


しかも、私、相手に。


まあ、いっかあ。


私はもう村上明日菜で、


「おはよう、奥さん」


茶色がかった瞳を優しくほそめる、春馬くんの、


ーお嫁さん。


だ。


朝日にキラキラ輝く薬指のリングをみながら、


ーしあわせだなあ。


って、ただ、思って、やっぱり、


「もうちょっと、眠い」


「ああ。朝飯作ったら、起こすからな?」


って、春馬くんが優しく頭を撫でてくれた。


ーん。ありがとう、お昼ごはんはがんばるよ。


そう答えられたかは、わかんなかった。


もう少し、だけ、まだ、眠いから。


ーだいじょうぶだよ?明日菜。


春馬くんやみんなの優しい声が、私を安心した穏やかなまどろみに導いてくれる。


ふわふわなのに、しっかり、みえて、きこえる、世界。


ーふわふわだから、まだ、どっちにも、いけちゃうけど、


ーだいじょうぶだよ。


ね?


春馬くん。


言葉には、魔力があるんだって。


ね?


春馬くん。


言葉にしたら、現実になる。


よく言われる、言葉だけど、


ね?


春馬くん。


どうせなら、


ー幸せな言葉を言おう?


ね?


春馬くん。


大好きだよ?


ああ、


ーほんとに、


ああ、


ーほんと、に。


ああ、


ーであえて、よかった。


私のいちばん星。


明けの明星、


ー春馬くん。


は、


朝から、ウシガエルの話をしそうな、へんな旦那様。


世界で唯一の、


ー私の旦那様。


だ。


春のひだまりに、私は意識をてばなした。





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