表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/652

第8話彼女と彼氏と彼女の心の傷。前話の前です。

ー?


ひとの声がぼんやりする。


まだ、私の頭の中は、ちょっと、ううん、ぼんやりしている。


ーガチャリ。


とまた鍵がかかる音がして、


「ーん?明日菜?起きたのか?」


優しい手が私の頭を撫でてくれた。


あ、


「春馬くん」


私がつぶやくと、


「うん。俺だよ?明日菜」


って優しい声がする。


泣きたくなるくらい、うれしくなって、


ーやだ。なんで、ベッドに一緒に寝てくれないの?


って、春馬くんの腕を引っ張ってベッドに引きずりこんだ。


「えっ⁈明日菜!」


慌てる春馬くんの胸に顔を寄せて、背中をぎゅーっと抱きしめる。


私と同じ石けんのにおいだ。


あのひとたちとは、ちがう。


「春馬くん、だ」


喉があつくなる。


まだまだ、頭はぼんやりしてるくせに。


また、ふわふわの世界に、思い出したらもどりたくなるくせに、


ーあの世界は、楽なのに。


ね?


春馬くん。


「…大丈夫だよ?明日菜。いま、抱きしめてるのは、俺だよ?」


優しく抱きしめてくれる。


だから、私はまた泣いちゃうんだ。


18歳の春馬くんの誕生日。


あれから、ずーっと、


春馬くん以外の人にも、映画館の大スクリーンで触らせていた私。


それを真央と見ていた、春馬くん。


私の喉があつい。


ほんとに、胸がいたい。


ね?


春馬くん。


私は、


「…ごめんなさい。汚れちゃった」


つぶやいて、だけど、もう涙がとまらない。


ああ、そうだ。


いつだって、私はそう言いたかったんだよ?


春馬くんにしか、触らないで!


春馬くんだけが触って!


なんで、春馬くんじゃない人に触られてる姿を、


ーみんな、見ないで!


…だけど、私がえらんだ。


あの子の哀しい瞳が忘れられない、


ただの偽善でしかないのに。


ね?


春馬くん。


私はー。


「うん。よく、がんばったな?明日菜?そして、俺も頑張ったよな?」


って、春馬くんが言った、


ーえっ?


びっくりして、顔を上げたら。春馬くんの少し茶色がかった瞳に私がうつる。


涙でぼろぼろの、ただの、明日菜が映ってた、


「明日菜は、よく、がんばった。そして、俺も、がんばった、だろ?褒めてくれ」


まじめな顔で言うから笑ってしまった。


そうだね。


ね?


春馬くん。


私は、


うん、頑張った。


そして、


「がんばってくれて、ありがとう、春馬くん」


「ご褒美は?」


え?


戸惑ってたら、


「ーん」


深く口づけされた。


どくん!


って、心臓がはねた。


確実に、


ー生きてる。


あの日は、びっくりして一瞬で、自分からしかけたくせに、逃げちゃった唇を、


春馬くんが逃がさないって力強くふれてくれる。


逃げようとしても頭の後ろでしっかり、大きな手が私をはなさない。


こんなキスは知らない。


誰とも。


ー知らない⁉︎


ドンドンって胸を叩いたら、やっと、春馬くんが解放してくれた。


私の顔が真っ赤になるけど、


ね?


「…笑うなよ?」


つい笑ってしまったくらい、春馬くんの顔は耳や首まであかい。


そういう反応も春馬くんがはじめてだ。


「もういっかいは?」


いつかみたいに言ったら、


「襲うぞ?」


って、切なげに言われて、


「ごめんなさい」


さすがに反省した。まだ、ちょっと、私にはきつい。


だって、私はもともと、


「明日菜が男性恐怖症なのは知ってるから、大丈夫だよ?俺が怖くないなら、それでいまはいいんだ」


って、


もう、おやすみ、って、胸に抱き寄せて、背中を赤ちゃんみたいにトントンとしてくれた。


ね?


春馬くん。


もう少しだけ、


待っててね。


「…ちゃんと、起きるよ?」


「もう、起きてる。あとは、ゆっくり立ち上がろ?。みんないるし、俺がいる」


お互い、よく、がんばった。


もう一度、春馬くんがそう笑った。



読んで頂きありがとうございます。


ブックマーク いいね ☆評価ありがとうございます。


少しでも続きが読みたいと思って頂けたら、ブックマーカーや評価をしていただけたら、低評価でもとても嬉しいです。ぜひ、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ