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第10話 彼氏となぞのプレゼントと彼女


明日菜にも手伝ってもらいながら、せまいデミオの後部座席から、布団セットとマットをとりだす。


本当に、今日が晴れてて、よかった。


俺のマンションにも、雨除けのついた駐車場が一応あるのだが、単身者の俺は、屋根なし、おまけに舗装なしの砂利の駐車場を選んでいた。


だって3千円も違うんだぜ?


一年も違えばスイ◯チ買える。


ん?あいつはもっと高いのか?


ゲームしないから、よくわからん。


たまに轟木姉妹が、持ち込んで、我が家のリビングで、ギャーギャーやってる。


なにしろ、子供達も緊急事態宣言中。


公務員の父をもち、まだ1歳の凛ちゃんをもつ子供たちは、ひまを持て余しては、うちに遊びにきていた。


手土産と称した日本が世界に誇る電子機器を持って。


なにしろ、一時は公園あそびすら、禁止された緊急事態宣言。


遊び場を、遊び友達を、急に失った子供たち。


そこに、春から現れた俺という名の大人のオモチャ。


あっという間に、部屋に居着いたよ。


轟木さんちの三姉妹。


まあ、男兄弟しかいない俺には、新鮮だったし、一緒にゲームをしたり、みてる分には、楽しいからいいんだけど。


あの有名なクレイジードライバーは、どうにかならないのか?


赤い帽子のひげ親父が、ヒャッホーイ!とご機嫌に投げるバナナやら、光る亀やら、わけわからん。


おれはドラ◯エとか、シンプルなやつがいい。


コマンド選ぶだけで、疲れないし。


なんなら、轟木一家は、なぞのリング状のコントローラーまで持ち込むからな。


あれ、マジで筋肉痛なったぞ?カラオケはJ◯yサウンドだし。


最近のゲームは、なんでもできるな?


なのに、太鼓の◯神は太鼓エアーだし、謎の進化だ。


寮をでて、もう半年以上たつが、いまひとつゲームは慣れない。


慣れる必要もないけど、悔しくはあるよなあ?


「あれ?春馬くん、お布団以外もなんか買ってきたの?」


おもくてかさばる布団一式を、せまいデミオの後部座席から、苦労してだしていると、明日菜が、助手席に置いていた一尉がくれた紙袋を、指差して首を傾げる。


「ああ、それ?なんかホームセンターで、一尉と一緒になったんだ」


「一尉って?」


「ああ、となりのトトロじゃなかった、隣の轟木さんの旦那さんだよ。陸上自衛隊の一尉なんだ」


寝袋を迷っていた時のいきさつを、ひととおり明日菜にはなすと、納得していた。


一尉はともかく、轟木純子元軍曹をみたら、納得だよなあ。


「ーで、明日菜が来てること伝えたら、なんか、いきなり、ドラックコーナーに、ひとりで行ってさあ、ソレくれたんだよ。男のエチケットだか、責任だか言って」


俺にもわかんないんだよなあって、続けたら、紙袋をとろうと、デミオの助手席に手をのばしかけた、明日菜の動きが、ピシッと音がつきそうなくらい見事に止まった。


ーん?


「なんだ?掃除はしたけど、蜘蛛でもいたか?」


不思議に思って問うと、明日菜は、微妙な笑みを口元に浮かべる。


「あ、ううん。なんでもない」


「そんな顔をしといて、なに言ってんだよ?なんだ?ひょっとして、明日菜は、中身がわかるのか?」


「ええっ?」


「eh?」


「ううん、ただの「A」ーって、こんな時まで、それやめて?」


「えっ?」


「えっ?」


「picture?」


「NO。A Only?」


「ーたしかに、なんとなく意味がわかるな?あってるかは、べつにして」


「あとはジェスチャーで、きっとのりきれるよ?春馬くん、だし」


「そー?」


「Soーって、毎回、毎回、このやりとりって必要?」


「さあ?」


「せめてカタカナにする?」


「さすがにそれは、俺も理解できない」


「だよね、春馬くんだし」


「そー?」


「ソー?」


「す?」


「ス?」


「スルメ」


「メダカって、なんで、いきなりしりとりになるのよ⁈」


「毎回、思うけど、明日菜って、適応力半端ないよな?」


「まあ、春馬くんとつきあって、10年目だし,ね?」


「お互い年とったな」


「そこっ⁈」


「えっ?どこ?」


俺は明日菜の目線を追って、振り返る。

 

そこには、見なれた玄関のドアだけーって。


あれ?


「明日菜って、霊感あるの?」


「あったら、ひとりで、東京になんか行けないよ?」


「いや、そこは、明日菜だし?」


「春馬くんの思ってる私って、どんななの?」


「ー俺のマドンナ?」


「へんに、まとめないでよ」


そんなこと言われたら、怒れないよと、明日菜は可愛らしく頬を膨らませた。


可愛いけど、きれいだけど、やっぱり、こんなシーンも見たことあるよな?


ー会話の中身は、違うけど。


俺は小さく溜息をつくと、前歯で下唇を軽くかむ。


明日菜が問いかけるように、首を傾げた。


「わかるんだったら教えてくれ。一尉からは、彼女の前で見るなって、言われたんだけど、明日菜も知っているもんなら、隠すものでもないだろうし」


「ううん、わ、私はしらないから。一尉さんの言うとおりにして」


「なんだ?やっぱり胃薬か?」


「ーなんで、そうなるのよ」


やばい、明日菜の声が低くなる。


「いゃあ、明日菜ちゃんの手料理楽しみだなあ。一尉のプレゼント開ける時くらいドキドキしちゃうかも」


「えっ?そんなにっ?」


「ーえっ?どんなに(料理)!?」


俺たちは顔を見合わせながら、互いに驚く。


ーけど。


「あはははは。私達、いつもこんな会話だよね?」


「同感」


すぐに笑い出してしまった。


「明日菜も東京から来たんだし、帰ったら風呂沸かすよ。ゆっくり、つかれをいやしてくれ。あれ?俺の家ドライヤーとか、ないけど大丈夫」


「その辺は真央に聞いたから知ってる。春馬くんが、よく髪をセットしないで出勤してくるって、あきれていたよ」


「朝から髪いじるの面倒なんだよ。また坊主にでもしようかな」


「営業でしょ?あとで、私が軽くカットしてあげるね」


スタイリストさん仕込みだよ、とのびてきた俺の襟足を明日菜のほそい指がちょんちょんひっぱる。


くすぐったいし、なにより布団セット重いし。


「なあ、明日香。やっぱり、一尉のソレ…」


「絶対にイヤ」


ーいったい一尉のプレゼントは、なんなんだ?


その後、明日菜がふろに入っている間にソレをあけて、俺は近所中に響く今日一番の叫び声をあげるハメになるのは、まだ少し後の話。


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