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疋田家と大原家。

「確かに今日はちょっと張り切りすぎたかもね……」


(いつもはもっと余裕があるんだけど、今日はペース配分を間違えたのかな……)


「兄貴、今日は学校で何か良いことがあったんでしょ」


 未来は上半身を起こし、僕に聞いてくる。


「えっ! ど、どうしてそう思うんだよ……」


「だって……、走ってるとき、なんかすごい楽しそうだったからさ。学校で良いことあったのかなって思ったんだよ。ま、顔がもうすでに学校が楽しかったって物語ってるよ」


(僕って顔で物語ってしまうほど表情に感情が出やすいのだろうか……)


「まぁ、確かに今日は良いことがあったかもしれないな……」


 未来は話を聞きたそうに僕に近づいてくる。


「ないなに! いったいどんな良いことがあったの。私に教えてよ!」


「別にいいけど……、未来が聞いたら何それ! て言うと思うから言わない……」


「言わない、絶対に言わないから!」


 未来は顔を何度も横に振って絶対の程度を表す。


「そこまで言うなら……。えっと、今日、僕の夢が一つ叶ったんだ」


「夢?」


「そう、夢。教室を堂々と歩くっていう夢だよ」


「何それ!」


「やっぱり言った! 何それって!」


「あ……、でも何でそんな簡単なことが夢なの?」


「僕にとってはすごく難しい挑戦だったんだよ。だからとても楽しかったんだ」


 僕は教室を堂々と歩いていた時の情景を思い出す。すると柚希さんと鼻が当たったのも同時に思い出してしまい恥ずかしくなる。


「フーン、まあ、良かったじゃん。兄貴の夢がかなって」


「聞いておいて適当な返事するなよ……。まぁ、そのことはさておき、さっさと夕食を得て、風呂の準備だ」


「了解です。祐介司令!」


 未来は敬礼をして居間に走っていく。


「まだやってるのかよ……」


 僕達は夕食を得る。今日の料理は唐揚げだった。好物なので食べまくり、お腹がはち切れそうだ。夕食を終え、僕は自分の部屋に戻る。未来は風呂に向って行った。


 ☆☆☆☆


 疋田家にて……。


「は~、今日はなんか長い一日だったな。そう感じるのは感情が揺さぶられたからかな」


 僕は椅子に座りながら、勉強机に広げている日記帳に今日の出来事を書く。


 誰にも読ませる気はないので思い出や出来事を赤裸々に書いていく。あとで読み返すと何とも恥ずかしい思いになるが、自分にしか見せないので関係はない。


「大原柚希さんという見た目が小学生かと思った同級生と知り合いになり、これから仲良くしていけるか不安っと……」


 僕が日記を書き終わると、髪にタオルを巻き、薄着のままの未来が僕の部屋に訪れる。


「兄貴、お風呂が空いたよ。ちゃっちゃと入っちゃって~」


「わかった」


(さてと、僕もお風呂に入ってさっさと寝よう。今日はもう疲れた……。あ、でもちょっとは勉強しておこうかな)


 僕は部屋を出てお風呂場に向かう。


「兄貴……、お風呂場に向ったな……」


 未来は祐介が部屋を出ていくのを確認した後、祐介の部屋に入り、鍵を閉める。


「兄貴、私はごまかせないよ……」


 未来は祐介の勉強机に置かれていた日記に手を伸ばす。


「兄貴が悪いんだからね……。日記帳を机の上に置いたままにしている、兄貴が悪いの。私は悪くない……」


 未来は自分に言い聞かせ、祐介の日記帳を開いた。それを見て未来は驚愕する。


「字が汚すぎて読めない……」


 お風呂場にて祐介は笑っていた。


「ふふふ、甘いぞ、妹よ。そんな簡単に情報を得られると思うなよ」


(僕は未来が日記帳を覗こうとしていたのを察し、ダミーにすり替えておいたのだ)


 こんな感じが疋田家の日常である。


 ☆☆☆☆


 大原家にて……。


「ただいま~」


 柚希は少々軽い足取りで家に帰ってきた。扉を開け、リビングに入る。


「お~。我、可愛い妹よ~、お帰り!」


 リビングに置かれているソファーに下着姿で寝そべり、アイスを齧る姉の姿があった。


「お姉ちゃん! 帰ってたの!」


「うん、家の近くでちょうど仕事があってね。ついでに帰ってきたんだよ。それにしても、今日の柚希は滅茶苦茶うれしそうだね~。何かいいことあった?」


 姉はソファーから上半身を起こし、床に足裏を付けて立ち上がり、柚希の顔を見る。


「別に……。あ、でも面白いことはあったかな……」


 柚希は自分の鼻に手を当てて、苦笑いを浮かべる。


「何々~、お姉ちゃんに教えてよ~」


 姉は柚希の背後に回り、頬擦りし始める。この時、姉は猫のようだと柚希は思った。


「それがね、今日、高校でかくかくしかじか、ということがあったの」


 柚希は今日の出来事を姉に話し、共感を得ようとした。


「なるほどね~。疋田君っていう子がいて身長が滅茶苦茶高いんだ。柚希は身長が小っちゃいからね~。そう言う男に引かれちゃうのかな~」


 姉は柚希をからかい、手を頭に乗せて身長の小ささをこれでもかと知らしめる。


「何言ってんのお姉ちゃん。私の話をちゃんと聞いてた!」


「いや~、柚希、よくやった。今、変わりのモデルを探していたところなんだよ。この名刺を疋田君に渡しておいてくれないかな」


 姉は豊満な胸の谷間から一枚の名刺を取り出し、柚希に渡す。柚希は無言で受け取った。


「本当は自分で渡しに行きたかったけど、明日も仕事だし、予定が合わなくってさ。ところで疋田君の顔は?」


「中の上か、中の中……くらい。まぁ、普通かな……」


「よし、及第点。それじゃ、話す機会があったら高校で名刺を渡しておいてね」


 それだけ言うと、姉は自室に戻っていった。


「は~、お姉ちゃんは本当に自分勝手なんだから……」


 柚希の姉、大原牡丹は身長一七○センチメートルでバスト、ウエスト、ヒップが上から九八、六○、八八、といったモデル体型。実際にモデルをやっている。


 短期大学に入ったころにモデルにスカウトされたらしい。現在の年齢は二四歳だ。


「は~、こんな体じゃ、無理だよね……」


 柚希は自身の胸に手を当てて足を見下ろす。


「どうしたの柚希?」


 トイレから戻って来た母がエプロンで手の水気を拭きながら柚希の背後に立っていた。


「あ、お母さん。ただいま」


「お帰りなさい。どうしたのため息なんかついて?」


「いや、お姉ちゃんは良いな~と思って。お父さんとお母さんの遺伝子をちゃんと受け継いでて……。はぁ~」


 柚希は母のパツパツの胸を見て、またもやため息をついた。


「何言ってるの。柚希だってまだこれからじゃない」


 柚希の父の身長は一八五センチメートル、母の身長は一六九センチメートルの加えて胸はHカップもある。どちらも日本人にしては背の高いほうだ。二人の実の子供だというのに柚希は……小学生体型である。


「柚希……牛乳と豆乳でも飲む?」


「もう飲んだ!」


 柚希は母に怒鳴ったあと、自分の部屋に戻った。


「は~、情けない。自分の親に八つ当たりなんて……。気にしないって決めてたのに」


 柚希はベッドに蹲り、大好きな動物のキリンのぬいぐるみを抱きしめる。


☆☆☆☆


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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