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未来とのランニング

「お、大島君、どうしてここにいるの? まだ部活動見学の途中なんじゃ」


「祐介を追おうと思って外で聞き込みをしていても、身長の凄く高い男は見なかったって聞いたから、校内にまだいると思って探していたんだ」


「そ、そうなんだ」


 隣に立って歩いていた大島君が僕の前に立ち、頭を下げた。


「な、なに、どうしたの大島君……」


「さっきはすまなかった。祐介の気持ちも考えないで自分勝手に連れまわしちまった。そのせいで嫌な気持にもさせちまったし、本当にごめん!」


「僕は気にしてないから、頭を上げてよ、大島君。僕の方こそ途中で逃げてごめん……」


「これでお相子だな」


「そうだね」


 僕と大島君は生徒玄関に向かい、靴を履き替えて正門を出た。そのまま少し歩いて交差点に出る。


「じゃ、俺はこっちだから。また明日な」


「また明日」


(は~良かった。大島君とずっとぎすぎすした気持ちでいるのは嫌だったから、仲直りがすぐにできてよかった。終わり良ければ全てよし、色々あったけど良い一日だったな)


 僕は家に帰り、玄関の扉を開ける。するとジャージ姿の可愛い妹が飛び出してきた。


「お帰り兄貴! 高校はどうだった? かわいい人はいた? 兄貴、彼女は作った?」


「か、彼女なんて初日で作れるわけないだろ!」


 僕は妹から質問攻めにあう。その間、未来は僕に抱き着いてきて子供っぽさを全開に甘えてくる。どうやら未だに小学生気分が抜けていないようだ。


「そっちこそどうなんだ。中学生になった気分は?」


「ん~、学校は普通に楽しかったよ。初日だけど、もう沢山の人と友達になった!」


 未来は良い笑顔で答える。僕と性格が正反対なので友達がすぐに出来るのもうなずける。


「未来は中学でもバレーを続けるのか?」


「もちろん! 粟野中学校のバレー部に入るつもりだよ! あ、そうそう! 先輩にね、すごい人がいるんだよ! すごく背が高くて、すごいアタックを打てて、すごくかっこいいの! もう、すごいのオンパレードだよ!」


 未来の語彙力も凄ければよかったのに。でもすごい人が先輩にいるというのは伝わった。


「いったいどんな奴なんだ。とりあえず、僕に教えなさい!」


「え~、兄貴には関係ないでしょ~」


 未来は僕から離れ、モジモジとしながら乙女の顔をする。


(この反応は、もしかすると……、未来に好きな男が出来てしまったのか……)


「た、確かに関係ないが……、妹の憧れの先輩を知っておくのは兄としてだな……」


「大丈夫。兄貴が心配しているような未来には絶対にならないから。その先輩女子だし! 滅茶苦茶カッコイイ女の先輩だよ。だから安心して」


「女子。あ~、そうかそうか、僕もそう思ってたんだ。それじゃ、バレーの練習頑張れよ」


 僕は未来の頭をポンポンと叩き、家の中に入ろうとする。


「何言ってるの兄貴。兄貴は今から私と一緒に練習に付き合うんだよ!」


 未来は人差し指を伸ばし、僕に向けてくる。


「なんでだよ……。あと人に指を向けたらいけません」


「んっも~。かわいいかわいい妹のために、一肌脱ごうと思わないの?」


 未来は僕のもとにやってきて上目遣いで頼み込んでくる。僕はこの攻撃にあまりに弱い。


「わ、わかったよ。あと、言っておくけど、そんな顔を他の人にしたら不気味がられるぞ。未来の性格的に、人格が疑われる」


 未来は本来、もう少しさばさばしている。男っぽい性格なのもあり、男子からよりも女子からモテる。まぁ、兄の僕が言うのも変だが顔はすごく可愛いのできっと男子からも人気だろう。


「そんなこと、わかってるよ~。私は兄貴にしか、上目遣いをした覚えないし。はい! 今日一日頑張った兄貴に、可愛い妹のぶりっ子ポーズをプレゼント!」


 未来は口元にジャージのもえ袖を持って来て、僕に向けて上目遣いをしてくる。


「はぁ昔はもっと可愛げがあったのに。どうしてこんなに計算高い子になったのだろうか」


「え? なに? 兄貴、何か言った……」


 未来は眼を細め、ヤンキーかと思うくらい低い声で問い詰めてくる。


(これ以上、何か言ったら、僕が何を言われるか分からないからな、黙っておこう)


「いいえ何も。それじゃ、一年生からレギュラーを取れるように練習だ!」


「了解です!」


 未来は軍隊のように敬礼する。


「よし、まずはランニングからだ。僕の後について来い、未来隊員!」


「了解しました! 祐介司令」


 僕達は軍隊のような遊びをしながら、町内をランニングする。これは未来とのちょっとしたスキンシップだったりする。なんだかんだ言いながら僕も未来と走りたかったのだ。


 夕方、太陽の明かりが伸び、赤色の光だけが目に飛び込んでくるこの時間。


 僕はこの時間帯が好きだ。理由は簡単、人通りがとても少なくなるからだ。夕方の時間は学生がちょうど帰宅し終わっており、すれ違うのは犬の散歩をしている人や疲れ切っている会社員の姿ばかり。そのため、僕の方を見てくる人が少ないのだ。


「はぁ、はぁ、はぁ……。兄貴、ちょっと休憩しない? さっきから飛ばしすぎだって」


 未来が後方から話しかけてくる。僕は走りにちょっと夢中になっていたかもしれない。


「そうか、ごめん。ちょっと張り切りすぎたかな……」


 僕達は近くの河川敷で足を止めた。


「もう! 兄貴、脚が長すぎ! 一歩がデカいの! 後にいる私をもっと考えてよ!」


 未来はじだんだをふんで、僕についていけなかったのが悔しいのか、ご立腹のようだ。


「ははは、ごめんって。でも未来が僕について来れるようになれば、体力が昔よりついたって正銘になるでしょ」


「一緒に走っているんだから、兄貴にも体力がついちゃってるじゃん! 一生追いつけないよ!」


「は……確かに!」


「バカなの……。それとも天然なの……。ま、そう言う兄貴も可愛いからいいけど」


 僕たちは町内を一周走る。時間にして二時間ほど。最後の方は歩き、心臓を休めながら帰宅した。


「は~、疲れた。今日は体力づくりだって言っても限度があるってもんでしょ!」


 未来は玄関に入ったとたんに長袖のジャージをおもむろに脱ぎ捨て、冷たい廊下に寝転がる。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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