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女性になぶり殺しにされる

「あの、ダーク系お姉さん。柚希さんと牡丹さんって本当の姉妹なんですか?」


「は? ダーク系お姉さんってなに? 私のあだ名? 無駄に長いあだ名をつけるんだな。私の名前は真理だ。あと、質問の答えだけど、正真正銘の姉妹で間違いない。あの二人、顔がほぼ一緒でしょ。性格と体型が正反対の姉妹で、九歳差くらいだったかな。ああやって弄り合えるくらい仲がいいんだよ」


「そうですか……」


 真理さんによると牡丹さんとは仕事仲間で柚希さんは眼福対象なんだとか。


 僕が真理さんと話していると、部屋の中に他人がいないことを良いことに牡丹さんが下着を脱ぎ始めた。僕の存在を忘れているのか、それとも僕の反応を見て楽しんでいるのかわからないが、まだ子供の僕には刺激が強すぎる。僕は牡丹さんに背を潔く向けて眼を瞑る。


「これ、貰ってもいいんですか? 結構高いんじゃ……」


「いいのいいの~。逆に一回履いちゃったやつでごめんね。でも汚くないから、大丈夫。私は性病も持ってないし、毛の処理も完璧だし、液体の漏れそうな部分には専用のシールを貼ってあるから、ほぼ新品同様の高級下着だよ。野村ちゃんが付けたら可愛いだろうな~。ささ、早速試着しちゃお~」


「え、ちょ、ちょ……。牡丹さん!」


 野村さんと牡丹さんの声が遠のいていき、聞こえなくなった。


「あの……、眼を開けてもいいですか?」


「どうぞ……」


 柚希さんからの了承を貰い、僕は眼を開ける。後ろを振り返ると顔を赤くした柚希さんの姿があった。


「えっと……、デリカシーの無い姉ですみません……」


 柚希さんは僕にペコリと謝ってきた。別に柚希さんが誤る必要はこれっぽっちもないと思うのだが、なぜ謝るのだろうか。


「柚希さんが誤る必要ないじゃないですか。何で謝るんですか?」


「その……。これからも迷惑を掛けそうだなって思いまして……。先に謝っておきます」


「はは……、なるほど」


「やぁ~ん、可愛いい~。真っ白ツルツル、すべすべ~。良い筋肉にふっくらとしたお尻。もぅ~完璧じゃない~! こんな姿を見せたらどんな男でも悩殺出来ちゃうよ~」


「ぼ、牡丹さん。声が大きです。恥ずかしいのでそんなこと言わないでください!」


 別の部屋から、牡丹さんと野村さんの声が聞こえ、僕は無駄に反応してしまう。加えて、牡丹さんの言葉から、場面を想像してしまった……。


 簡単に言うと、牡丹さんの服装を野村さんに置き換えると言った脳内シミュレーションを行い、無事ムラ付いてしまった……。


「疋田君の変態。ムッツリスケベ!」


 顔を赤くした柚希さんが叫ぶ。


「な……。ぼ、僕は野村さんの下着姿を想像していたわけでは決してなく、声に反応してただけであって、そんなことを言われる筋合いはありませんよ!」


 僕は柚希さんに言われた言葉を否定しようとした。だが……。


「へぇ~、野村さんの下着姿を想像してたんですか。やっぱりムッツリスケベですね」


「な、なんで僕が野村さんの下着姿を想像していたと思うんですか……」


「だって私は疋田君に変態とか、ムッツリスケベとか言っただけですよ。それなのに自分で要因をペラペラと喋っちゃって、疋田君はほんと罠に引っかかりやすい純粋君ですね」


 僕は柚希さんにまで嵌められてしまった。女性経験がないと、心がここまで簡単に読まれるのかと思い、恐怖すら覚える。だが柚希さんがクスクスと笑う表情に少々ドキッとしてしまった。何を考えているんだと頭を振る。


 一五分ほどして野村さんが紙袋を持ち、別室から出てきた。頬が赤くなっているのを見ると、牡丹さんに恥ずかしい場面を見られてしまったんだろうなと想像できる。


「はぁ~。眼福、眼福~。可愛い女の子を見るのはやっぱりいいね~。食べちゃいたいくらいだよ~。ニシシ~」


 牡丹さんはどちらもいける口なのか……。少々厭らしい眼で野村さんを見ていた。野村さんは牡丹さんに恐怖心を抱いてしまったらしく、僕の後ろに隠れてしまった。


「おりょ……。やっぱり疋田君の方がいいか~。残念……」


 牡丹さんはよれよれの服を着ており、胸元が広いので谷間が丸見えだ。加えてブラジャーをしていないのか、二つのぽっちが薄着を押し上げて……。


(い、いかんいかん。僕は何を考えているんだ。また柚希さんと野村さんに心を読まれて変なあだ名をつけられるぞ。何も見なかった。僕は何も見なかった)


「ちょっと牡丹さん。またブラジャーを着け忘れてるんですか。乳首が立ってますよ……」


「おりょ~。まぁ、別によくね~。見るのは疋田君くらいだし~。ね、ムッツリ君」


「うぐっ! ぼ、僕は何も……」


「さっき、谷間も凝視してましたよね。おっぱい好きの疋田君」


「今、頭を振っていたのはエッチなことを考えていたからですよね。スケベな疋田君」


「視線を逸らすのは情けないぞ。へたれな疋田君」


「も、もう、止めてくださぃ……」


 僕は周りの女性陣になぶり殺しにされ、床にヘロヘロと座り込む。女性不振になりそうなくらい心を読まれ、僕の精神はボロボロだ。


 僕がボロボロになったのが面白いのか、その場にいた四人はクスクスと笑い、女性は悪魔だと勝手に思ってしまった。あぁ、未来、お兄ちゃんを助けてくれ……。


「疋田君。妹さんに助けを求めても意味ないですよ。自分で克服しないと何の意味もありません」


(柚希さんは僕の心が読めるのか……。なぜ、柚希さんが未来のことを知っているんだ)


「な、なぜ、柚希さんが僕に妹がいると知っているんですか……」


「疋田君のスマホ画面の待ち受けにしているツーショット写真の子がお客さんの中にいました。女の子に免疫のない疋田君がギュッと抱き着いて笑顔の写真なんて、妹さんくらいですよね」


「め、名探偵……なんですか、柚希さん」


「いや、普通に身長が高かったし、疋田君と顔が似ていたからだと思うぞ」


 真理さんは柚希さんの名推理にメスを入れ、スパスパと切り裂いた。


 柚希さんはウッといった表情をしたあとに口笛を吹く。翌々考えれば僕のスマホ画面を柚希さんに見せた覚えが無い。でも、確かに僕のスマホ画面は未来とのツーショット写真だ。


「えっと、柚希さん。僕のスマホを勝手に見てました?」


「え、い、いや~、見てないですよ。全然見てないです。ズボンを畳んでいる時にぽろっと落ちちゃったので拾い上げる時に見えちゃっただけですよ」


 柚希さんは焦りながら説明してくれた。まぁ、嘘かほんとかは置いておいて普通に待ち受け画面を見られたのは恥ずかしい。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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