下着コーナー
「疋田君は女の子の使った割りばしを使っちゃうエッチな男子高校生だったんですね……」
「そ、それは……。どう言ってもいい訳にしかなりませんから……、否定はできません」
「ごめんなさい、疋田君……。こんなやり方で口封じしてしまって。疋田君を信じてない訳じゃないですけど、私がこんな破廉恥な姿をしてるって他の人に知られたら、学校に行けなくなると思うんです……」
どうやら野村さんは自分の身を守るために僕を嵌めたらしい。
「疋田君は女の子の使った割りばしを躊躇なく使ってタコ焼きを食べるエッチな男子高校生だって言いふらされたくなかったら、今日の特訓は絶対に秘密にしてください」
野村さんは僕の方に顔をずいずいと近づけてきていた。美人な顔が寄ってくるため、僕は身を引く。その度、彼女はどんどん近寄ってきてしまう。テーブル席の後方に新聞紙を広げた方がいて彼女の下半身を見ようとしていたので僕は彼女にさりげなく伝える。
「の、野村さん……。今、凄く短いスカートを履いていますよね……。の、覗かれますよ」
僕が小声で伝えると野村さんは気づいたのか、背筋を使って頭をグッと持ち上げ、お尻に手を当て、スカートをなるべく下げようとする。
「お、お礼は言いませんからね……。関節キッス泥棒君……」
「そ、そんなあだ名付けないでくださいよ……。僕の人生が詰みます」
僕と野村さんはフードコーナーを後にして柚希さんのお姉さんがいると言う二階の衣類品コーナーまで歩いていく。
☆☆☆☆
「はわはわ……。やりおった、やりおったでぇ……。疋田君、野村さんの割りばしを使ってタコ焼きくっとったがな……。弱みをちゃっかり握られてまっとるがな。にしても……、野村さんのお尻エロかったな。白いパンティーエロかったなぁ。私が履いてきたのはクマさんおパンツか……。ふぐっ!」
疋田と野村の行動が気になり過ぎてフードコーナーに入り、二人が使っていたターブル席のすぐ近くの席で座っていた柚希は新聞紙に穴をあけ、関西の刑事っぽい発言をしながら一人でたこ焼きを頬張っていた。味は醤油で鰹節マシマシだ。加えて野村のお尻による不意打ちと白いパンティーのダブルパンチで追加攻撃を食らう。
☆☆☆☆
僕と野村さんは周りの視線を克服するために通路の中央を歩いて……はいなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……。端っこを歩くのも結構疲れますね……」
「はぁ、はぁ、はぁ……。そ、そうですね。でも、周りの人は皆、他の商品に夢中ですから、僕達の方はあまり見られて……」
「ママ~、見て見て~、すごくおっきい人いる~」
「あら、ほんとね……。スポーツ選手かしら……」
「…………でけぇ胸、こっちはちっせぇ」
「ちょっと! なに見比べてんのよ! 最低!」
「あ、いや……。その、えっと……」
僕は親子に見られ、野村さんはカップルに見られていた。僕の方はいいとしても、野村さんのせいでカップルの中が不仲になるのは心が痛そうだ。
僕達はそそくさと歩き、エレベーター横の階段を使って二階に向うことにした。周りが壁になっており、ほとんどの人が階段を使わないから、視線が無かったのだ。僕達にとってはちょっとした安息地帯となり、息をようやく整えることが出来た。
「はぁ……。二階に上がろうとするだけでも一苦労ですよ」
「はぁ……。エレベーターとか、エスカレーターは使えそうにないですね」
僕達は階段で呼吸と心を整え、二階に一歩ずつ向かっていく。二階に到着すると衣服が大量にあり、メンズやレディースで場所が区切られていた。
僕達がいるのは分かれ道で右の通路から女子組、左の通路から男子組が迫ってくる。真っ直ぐ行くと下着コーナーがあり、確実に気まずくなる空間だった。
僕は右に向かおうとするが野村さんは左に向かおうとした。両者共に自分が身代わりになろうと行動したらしい。すでに気まずくなったので真っ直ぐ歩くことにした。
僕の視界に映ってきたのは女性下着が綺麗に展示されているコーナーで、男は死ぬほど居心地が悪い。だが、野村さんはスタスタと入って行き、下着を選び始めた。
「え、えっと……。野村さん、何をしているんですか?」
「何してるって、買い物に決まっているじゃないですか。つけていたブラジャーが合わなくなったので新しいのを買いに来たんです。最近は日本の品じゃ合わなくなりそうなんですけどね……。はぁ、Hカップのブラジャーとかで可愛い柄の品ってないですかね……」
「そ、そんなに成長するものなんですね……」
「ほんとですよね。もうそろそろ止まってほしいんですけど、止まる兆しはないですね」
野村さんは大きなブラジャーを見ていたが、どうもしっくりこないらしく、何分もの間、選んでいた。
僕は午後三時から予定があるので野村さんに伝える。
「あの、野村さん。買い物中にすみません。僕、午後三時にとある人に会わないといけないんです。野村さんも来ていいと言っていたらしいんですけど、どうしますか?」
「疋田君は誰に会うのか知っているんですか?」
「会う人は知っていますけど、何をされるかはわかりません」
「疋田君に放れられると私が動けなくなるので、一緒に行きます」
「そうですか。なら、一緒に行きましょう」
僕と野村さんは柚希さんのお姉さんがいると言う、ブランドの服が展示されている場所にやってきた。
多くの若者がすでに集っており、僕達の入る余地がない。後ろからもイケイケな男と女が集まってくる。このままだと挟まれて抜け出せなくなると思った僕達は別の通路に抜け出す。僕は少し見渡して柚希さんと顔の似ている人がいないか探した。
「むむむ~。これは、これは~。いいもん持ってるね~!」
「ひゃっ!」
僕の隣にいた野村さんの脇から、二本の腕が伸びて大きなおっぱいを鷲掴みにして揉みしだきだした。僕は野村さんの後ろに立っている人を見る。
「およよ~。君が疋田君か。いいね、いいね~。身長が一九二.八センチメートル、体重七○キログラム、体脂肪率一二パーセント。うんうん、丁度良いくらい。んでんで、こっちの子が身長一六五.七センチメートル、体重五〇キログラム、体脂肪率一二パーセント。バストが脅威の! ふぐぐぐ!」
「お姉ちゃん! 言い過ぎだよ!」
野村さんに抱き着いてた女性の背中にベレー帽をかぶった女の子が飛び乗り、口を塞ぐ。ベレー帽をかぶっていても長い茶髪と可愛らしい顔、綺麗な声で特定の人物を想像できた。
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