プロローグ:高校入学
「今日から祐君も高校生ね。お母さん、祐君の制服姿を見れてうれしい」
黒髪の短髪で身長が一七○センチメートルの母さんは僕の手提げ鞄を持ちながら言う。
「やめてよ、母さん……。改めて言われると恥ずかしいから」
「兄貴の制服姿、すごくかっこいいよ~! 私が同級生だったら惚れちゃうかも~」
黒髪のポニーテールを揺らし、身長が一六八センチメートルある妹の未来が言う。
「未来まで……。まぁ、お世辞でもうれしいけどさ」
「でもよかったな、祐介に合う制服の丈があって」
眼鏡をかけ、スーツを着こなし、身長一八五センチメートルの父さんが言う。
「何言ってるの、お父さん。特注で作ってもらったのよ、靴ももちろんオーダーメイドよ」
母さんは、靴を履くためにしゃがみ薄毛を気にしている父さんの頭を軽く叩く。
「ちょ、母さん。頭は叩かないでくれよ。ただでさえ危ないだからさ」
「もう、別に剥げてもいいわよ。髪がなくても十分カッコいいんだから……」
「母さん……」
「ちょっと、お母さん、お父さん。子供の前でいきなりお熱くなるのは止めてよね……」
未来は母さんと父さんの間に入る。
「ごめん、母さん、父さん……。僕がデカいばっかりに無駄なお金を使わせちゃって」
「もう、無駄なんて言わないの。祐君がおっきくなるのはいいことなんだから」
「でも……俺はもっと小さくてもよかったよ」
「うわ~、兄貴。今の言葉、全国の男子が聞いたら激怒するよ~! 炎上だよ、炎上!」
「別にいいだろ自分の感想なんだから」
「祐介、学校に早く行かないと入学式に遅れるぞ」
父さんは玄関の扉を開けて言う。
「それもそうだね、それじゃ……」
「行ってくるよ」×父さん、僕。
「行ってらっしゃい」×未来、母さん。
「って、未来も中学校に行く仕度を早くしなさい!」
「そ、そうだった!」
☆☆☆☆
僕の名前は疋田祐介。どこにでもいる普通の高校生だ。見た目以外はだけど……。
「ねえ、見てみて。あの子、背がすごく高くない」
「うわ、ほんとだ。めっちゃ足長、いいな~。でも、顔はめっちゃ普通じゃん~」
(また誰かが僕の背丈を言いている。もっと小さな声で話せないのかな……)
僕の身長は一九二センチメートル。男子高校生にしたら結構というか、かなり高い。
家の鴨井には毎日のように頭に当たるし、電車の中でも僕だけ頭が出てすごく目立ってしまう。着たい服があっても大抵は着ることができない。例えば、Lサイズだとお腹周りがぶかぶかで腕が無駄に長いから七分丈になるのだ。
ユナコロがなかったら僕の着れる服は、ほとんど無い。
靴なんてほとんど売っていない。どうして日本には二八センチメートルくらいの靴しかないんだと毎日思っている。だから、海外産の靴を買ったりしないといけない。生きづらいったらありゃしない。
四月一三日の月曜日。
僕は家を出てから走りだして早三○分。高篠高校の校門前に到着していた。高篠高校は県でも一、二を争う進学校だ。勉強は得意な方なので普通に入れた。
「は~、この高篠高校で僕の穏やかな生活が待っていますように……」
僕は仏に祈るように手を擦り合わせ、何度か頭を下げる。
「よ! 祐介おはよう!」
僕は腰を叩かれ、誰がいるのか知るために振り返るが誰もいない。
「下だよ、下! 祐介、いつもわざとやってるだろ!」
僕は大声で怒鳴られ、言われた通り、下を向く。すると僕と同じ制服をしている男子生徒がいた。背が低くて可愛らしいとはならず、結構厳つい顔をしている知り合いだった。
「ごめん、ごめん大島君。大島君も高篠高校に受かっていたんだね」
「当たり前だ。俺のことをなめるなよ」
大島君は僕の中学からの友達で、身長が一五三センチメートル。普通の男子高校生からしたら結構低い。シークレットブーツを履いているから、今は一六○センチメートルくらいか。大島君も身長を結構気にしている。だから意気投合し、仲良くなった。
見かけはスポーツ少年と言った感じだ。
黒髪の短髪で大きな目に反して小顔なので子供っぽさが増している。でも、体は引き締まっており男らしい。中学の頃は身長を伸ばすためにバスケットボール部に入っていた。外で毎日走っていたからか肌は少々茶色っぽい。今でも毎日走っていると思うので未だに肌が焼けている。
「はは、大島君は見かけによらず頭が良いんだよね」
「見かけによらず、は余計だよ!」
僕と大島君は校門を通り、生徒玄関まで歩いていく。はっきり言って、もうすでに多くの人の目を引いている気がするので速足で歩いた。
「新入生の方は私からクラス表を受け取ってください」
僕達は先生らしき人からクラス表を受け取る。
「お、高校でも祐介と同じクラスみたいだな」
「ほんとだ。はぁ……良かった。知っている人が同じクラスにいてくれて安心したよ」
「祐介、身長はデカいのに心は小さいんだよな」
「はは……、そうなんだよね」
僕は大島君に苦笑いを返す。
「クラス表を受け取った生徒は各教室に移動し、入学式兼全校集会が行われるまで待機していてください!」
先生らしき人が生徒玄関にたむろしている生徒たちに大きな声で急かす。
「だってよ、祐介」
「そうだね、僕達も教室に行こうか」
僕は生徒玄関で靴を履き替え、校内靴を履く。そのまま大島君と一緒に教室に向った。移動中、教室までがすごく遠く感じる。加えて、いろんな人からの視線も感じる。
「なぁ祐介、なんで一年生の教室は三階なんだ? 普通は一階に置くだろ」
「まあ、確かに僕もそう思うけどさ……。学校で変わってくるでしょ。多分だけど……」
僕達は長い階段を上り、教室の前まで来た。
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