駐車と徴兵
~注意事項~
※このお話の舞台はテロリスタンという惑星のお話です。
彼らがしているからと言って、それが地球でも許されない行為があります。
真似しないようにしましょう。
~駐車~
第5次テロリスタン戦争中のある日の昼過ぎ。
北部政権の某都市のアジトにて、アイ坊とドーストは先生に呼び出されていた。
「会合場所の下見のためにそこの店の駐車場に無断駐車したら、店主に怒られてしまった。
平謝りしたんだが、許してくれなかった。車は今も店の駐車場にある」
先生はそう言ってアイ坊に店の住所が記されたメモを渡した。
「ナンバーも控えられた上、警察にも通報された。
先生の車には我々の機密資料が入っている。
今のところ気づかれてはいないが、それも時間の問題だ。明日の朝にも警察の手が及ぶ。
夜にはあの店の一帯の人通りは少なくなる。
何としても今夜中に先生の車を破壊して、機密資料を隠滅するんだ!」
こうして兄貴はアイ坊とドーストの二人に秘密任務を与えた。
それからアイ坊とドーストの二人がアジトを出る前に兄貴に呼び止められた。
「実はな……あの店主、先生を『敗戦国民』と呼んで侮辱しやがった!
あの店主に今日まで生きたことを後悔させてやれ!」
この兄貴からの命令にドーストは「了解!」と嬉々として答えた。
それから時が経って、翌朝。既にアイ坊とドーストは秘密任務を完了していた。
深夜にガリベン側が手配したトラックで店の駐車場前まで忍び込んで任務を開始。
トラックの荷台に潜んでいたドーストが爆弾を放って、先生の車を破壊。
先生の車内にあった機密資料も木端微塵になっていた。
ついでに店も、ドーストの放った爆弾によって全焼していた。
「俺の店があああああっ!」
店主は全焼した店の前で号泣していた。
その際に死人がいなかったのが不幸中の幸いと思われていたが……。
~徴兵~
先の店が全焼する前日の夕方のこと。
「ドースト、トラック用意できたよ。どこ行ってたの?」
アイ坊は用事から戻ってきたドーストに話しかけた。
ここはガリベンの秘密の車両整備工場内。そこには秘密任務用のトラックがある。
「徴兵事務所にいるスパイと連絡を取ってきたんだ。明日が楽しみだ!」
ドーストはニヤリとしてアイ坊に答えた。
そしてドーストの放った爆弾によって店が全焼した当日の朝。
「ぐおおおおっ……。もう駄目だ……」と店主は全焼した店の前で絶望していた。
そんな店主を励まそうと数人の常連客が店主に励ます。
「あんたがこんなところで終わる人間かよ!?」
「人生、こんなこともあるさ!」
「さ、手を伸ばして……。立ち上がらなきゃ」
そうして常連客の一人が店主に手を伸ばし、店主も手を伸ばすが……。
「そうだ、立ち上がるんだ!我々、軍は君達を必要としているのだ!」
店主の手は徴兵事務所から派遣されてきた将校に握られてしまった!
これこそがドーストが待ち望んだ楽しみ。店主を徴兵することであった。
先の将校はドーストからの依頼を受けたガリベン側のスパイでもある。
「やだあああああっ!」と店主は叫ぶも、そこにいた常連客全員ごと徴兵されてしまった。
その後、兵士になった店主らは全員が戦死することになる。
彼らが生きた証も抹消されるかのように、店主らの土地はガリベンのものになった。