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ちゃんとしているかもしれない後日談 44

 ――あの後、宰相様は、私が妃として大勢の人たちに受け入れてもらえるように、頑張るのだと言っていた。

 そのために、手間は惜しまないと。


 その言葉に私はお礼をして、皇帝陛下は期待の言葉をかける。


 そして、私たちは、鷹を頭の上に乗せた宰相様とその後、別れたのだった。


 私たちは、馬に乗る。

 今から、宮殿に向かう予定としていた。


 皇帝陛下の今日の仕事は全て終わった。

 そして、私はひとまず保護という形で宮殿の方でお世話になることになったためだ。


「娘、しっかり捕まっていろ」

「はい」


 私は、皇帝陛下の前に座る。

 そして、彼はしっかりと手綱を握ると、馬を進めた。


 私は、馬の上から周囲を見回す。

 彼の周りには、護衛として何人もの兵士がいた。


 先程、私たちをちゃんと守ると、兵士たちは意気込んでいたのだった。


 ちなみに女装した剣士の男性とは、すでに私たちは別れていた。


 彼は、事情聴取のために、ほかの兵士たちに連れられていったのだった。


 もちろん、彼の身柄は皇帝陛下が保障している。

 そのため、兵士たちも彼の扱いについて理解していた。

 だから、多分問題はないと思っている。


 私は、馬の上で揺られる。


 馬には初めて乗った。

 かなり揺れるものだと思ったけれど、想像よりも揺れることはなかった。


 もしかしたら、皇帝陛下が気遣ってくれているのかもしれない。


 流れる景色を眺めていると、皇帝陛下が口を開いた。


「これで、目的は全て果たした。それに、今日、貴様が死ぬようなことはないだろう」


 その言葉に、私は「本当にありがとうございました」と、かえす。


 本当に感謝しかない。

 彼は、何度も私を助けてくれた。

 私は、死ぬことなく明日を迎えることが出来るのだ。


「あの……一つ、お聞きしてよろしいですか?」

「何だ?」

「借りとは何でしょうか……?」


 実は以前に彼が呟いていたのを耳にしてしまったのだ。


 その借りとは、誰に対してのものなのだろう。

 そう、少し疑問に思ってしまったのだった。


 すると、彼は「ああ」と、何事もないようにして言った。


「貴様へのだ。昔、貴様の巻き戻りによって私の命が助かったことがあってな」

「そう、だったのですか……?」


 私は、驚いてしまう。

 まさか、そんなことがあったなんて。


「そうだ。たとえどれだけ貴様に地獄を見せられても、借りは借りだ。娘、確かに返したぞ」


 そう、彼は言葉を口にする。


 ……彼には、迷惑をかけてばかりだった。

 けれど、そんな私でも彼の役に立つことが出来ていたのだ。


 それが、無性に嬉しかった。


「まあ、つまり借りを返した以上、貴様には、貸ししかないということだ。私は気が長い。死ぬまでに、きちんと全て返せよ?」

「はい……!」


 私は、強く頷いた。


 そして、少しした後、私は、彼にあることを尋ねる。

 先程から、ずっと気になっていたことを。


「――どうして、先程宰相様に、私の『祝福』と『呪い』についてお教えしなかったのですか?」


 宰相様は、私たちに対してとても親身になって話を聞いてくれた。


 それに皇帝陛下自身も彼をとても信頼しているように見える。


 なら、宰相様に私のことについて話しても別に良かったのではないだろうか。


 彼なら、きっと皇帝陛下のように力になってくれるに違いない。


 そう思っていると、彼は「……貴様、奴の『祝福』が効いているな?」と、問いかけてくるのだった。


「まあ、別に害が無いから構わんが、少し気に食わんな……」

「? どういうことでしょうか」

「何でもない。とにかく、貴様の二つの力については、今後誰にも話す予定はない」


 彼は、そう断言した。

 なので、首を傾げることになる。


「何故でしょうか?」

「貴様の力が強力すぎるからだ。それは、無用な争いの種になり得る」


 そして彼は、私に説明する。


「貴様の力は、上手く利用することが出来れば、多くの人間を生かし、多くの人間を殺すことが出来る。分かるか? 貴様の力が、何かの弾みで他国に知れ渡れば、間違いなく戦争が起きるぞ」


 その言葉に、私は驚く。


「まさか、そんなこと……」

「いいや、十分にあり得る話だ。考えてもみろ。『――他の国に時間遡行の力を持った人間がいる』。なら、大多数の人間は、其奴を手に入れるか始末するかのどちらかを考えるだろう。何せ、何度も過去をやり直すことが出来る力は、一度は誰もが欲しがる力だからな。たとえそれがどれだけ使い勝手の悪いものでも関係ない。貴様は、まるで実感が湧かんだろうが」

「……はい。そこまで思ったことが有りませんでした……」


 全く、考えが足りてなかった。


 そうか、私の『祝福』は時間遡行の効果がある。

 だから、皆欲しがるのか……。


 時間が巻き戻っても別に面倒なだけなのに……。


「私は、貴様に対してブチ切れた。しかし、他の者は決してそうではないと理解しておくべきだ。それに、我が国にのみ存在するこの二つの力は、そう言った争いの種とならないように予め「特殊な力であるが、総じて危険はない」と世界に公表しているからな。ゆえに絶対に、貴様のことは言えん。たとえ、信頼出来る身近な相手にだろうとな」


 彼は、「知っている者は少なければ少ないほど良い」と言う。


 でも。


 それだと――


「……皇帝陛下にばかり負担がかかってしまいます」


 彼は今日、私のために尽力してくれた。

 でも、今後このようなことが間違いなく何度も起きることとなってしまうだろう。


 途中からは、女装した剣士の男性が助っ人になってくれたし、鷹が飛んできてくれたけど……。


 でも、やはり私は皇帝陛下のことが心配だった。

 彼に無理はさせたくない。


 そう考えていると、


 私の頭に彼の手が優しく置かれている。


 そして、その後、力強く言ったのだった。


「――問題ない。全て任せろ」


 私はその言葉にただ「……はい」と、俯きがちに返事をかえしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] もうすでに皇帝陛下、ムチャクチャ無茶してますもんね…!! 知らないとはいえ、今更! いまさらだから!! この話読者が毎回壮大に突っ込んでいると思うとどれだけシリアスでも気が抜けない…!!
[一言] 「……皇帝陛下にばかり負担がかかってしまいます」 皇帝にとっては彼の意思に関わらずに自由に死に戻りされるほうがそれ以上に負担がかかるので気にしなくていいと思う
[良い点] オチがない、だと、
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